6. 創傷学 Flashcards
刺創
尖鋭な部分を有する成傷器が、刺すように作用することにより生じた創
切創
鋭利な刃部が切るように作用することにより生じた創
割創
重量のある刃器(日本刀、斧など)が打ち付けるように作用することにより生じた創
凶器の正式名称
成傷器
哆開創(解放創)に含まれるもの
刺創、切創
自為行為を示唆する創
逡巡創(しゅんじゅんそう)
逡巡創(しゅんじゅんそう)とは
ためらい傷
他為行為を示唆する創
防御創(ぼうぎょそう)
生活反応とは
生存時にそのキズができたことを示す所見
痂皮(かひ)とは
かさぶた
やや特殊な切創
弁状創と面状創(スライサー)
割創の特徴
表皮剥脱を伴うのが特徴
標準化された外傷初期診療アプローチ
JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care):外傷初期診療ガイドライン
ABCDEアプローチ
ABCDEアプローチ
気道の異常(A) 呼吸の異常(B) 循環の異常(C) 中枢神経系の異常(D) 体温の異常(E)
気道の異常(A)の支持療法(PS)
気道の開放
呼吸の異常(B)の支持療法(PS)
人工呼吸や胸腔ドレナージ
循環の異常(C)の支持療法(PS)
止血や輸液・輸血
複雑で時間を要する
中枢神経系の異常(D)の支持療法(PS)
初期診療の段階での確実な対処は困難
呼吸循環の維持で頭蓋外因子による二次損傷を回避する
体温の異常(E)の支持療法(PS)
着衣のままではABCDの評価は困難
脱衣,ショック,大量輸液・輸血に対する保温
初期診療手順の構成
Primary surveyと蘇生
Secondary survey
Tertiary survey
Primary surveyと蘇生
生理機能に基づいたABCDEsアプローチ(生理学的評価)
蘇生処置を必要とする病態を検索
Secondary survey
生命の安全を保証したうえで行う
Tertiary survey
根本治療や経過観察の過程での見落としを回避する
Secondary surveyで重要な3つの情報
受傷機転
症候や身体所見,画像診断や血液検査
診療上の危険因子の聴取(既往歴,服用薬,アレルギー歴,年齢等)
第一印象
・話しかけながら、息遣い(A)と意識(D)をみて、胸郭の動き(B),皮膚と脈を触れ、外出血の有無(C)を観察する
・15秒程度で行う
・異常と感じたら、“重症”と宣言し、蘇生を開始する
Primary surveyと蘇生:気道閉塞(異常を認める項目)
A・B
Primary surveyと蘇生:気道閉塞(蘇生)
確実な気道確保
Primary surveyと蘇生:フレイルチェスト(異常を認める項目)
B
Primary surveyと蘇生:フレイルチェスト(蘇生)
確実な気道確保・陽圧補助換気
Primary surveyと蘇生:緊張性気胸(異常を認める項目)
B・C
Primary surveyと蘇生:緊張性気胸(蘇生)
胸腔穿刺・胸腔ドレナージ
Primary surveyと蘇生:開放性気胸(異常を認める項目)
B・C
Primary surveyと蘇生:開放性気胸(蘇生)
創閉鎖・胸腔ドレナージ
Primary surveyと蘇生:大量血胸(異常を認める項目)
B・C
Primary surveyと蘇生:大量血胸(蘇生)
胸腔ドレナージ・止血
Primary surveyと蘇生:心タンポナーデ(異常を認める項目)
C
Primary surveyと蘇生:心タンポナーデ(蘇生)
心嚢穿刺・心膜開窓術・止血
Primary surveyと蘇生:腹腔内出血(異常を認める項目)
C
Primary surveyと蘇生:腹腔内出血(蘇生)
止血
Primary surveyと蘇生:後腹腔出血(異常を認める項目)
C
Primary surveyと蘇生:後腹腔出血(蘇生)
止血・創外固定
Primary surveyと蘇生:切迫するD(異常を認める項目)
D
Primary surveyと蘇生:切迫するD(蘇生)
A・B・Cの安定化による二次性脳損傷の回避
Primary surveyと蘇生:低体温(異常を認める項目)
E
Primary surveyと蘇生:低体温(蘇生)
加温
読影の第1段階(頭部)
緊急減圧開頭術の必要性
読影の第1段階(頭部以外)5つ、考えること
・大動脈損傷の有無を判断→循環への影響 ・広範な肺挫傷→呼吸への影響 ・気胸,心囊血腫を確認→閉塞性ショック ・血胸,腹腔内出血,後腹膜血腫→循環への影響 ・腸間膜内血腫→出血性ショックの可能性
外傷による意識障害の原因
・低酸素血症,高/低二酸化炭素血症(A・Bの異常) ・循環障害(Cの異常) ・頭蓋内病変(Dの異常) ・低体温,高体温(Eの異常) ・その他(急性アルコール中毒,薬物中毒,一酸化炭素中毒,基礎疾患など)
GCSの3つの要素
開眼:Eye opening
言語音声反応:Verbal response
最良の運動反応:best Motor response
瞳孔所見
瞳孔が2mm以下を縮瞳,4mm以上を散大
切迫するD判断基準
- GCS合計点が8点以下
- GCS合計点が経過中に2点以上低下
- GCS合計点が14点以下で、瞳孔不同,片麻痺,Cushing現象を呈する
頭部外傷CTの系統的読影high density
出血、骨、石灰化(松果体、脈絡叢、硬膜、基底核)、造影剤
頭部外傷CTの系統的読影low density
浮腫、梗塞、髄液、空気、脂肪、異物(特に木材)
頭部外傷CTの系統的読影mixed density
脳挫傷(salt & pepper like)、活動性出血、髄液と血液の混合
頭部外傷における重要所見
・占拠性病変の性状(部位、形、大きさ、density、診断)
・脳ヘルニア所見(正中偏位 (5mm以上)、脳底槽の圧排・消失)
切迫する“D”への対応
・確実な気道確保を行う
・Secondary surveyの最初に、頭部CTを施行する
・脳神経外科医にコンサルト
外傷死の3つのピークと原因
即死〜数分:事故
受傷2〜3時間後:大量出血、胸部外傷、頭部外傷
受傷2〜3週間後:感染症、多臓器不全
より確実な気道管理
- 用手的気道確保
- エアウェイ挿入
- マスク換気
- 経口気管挿管
- 輪状甲状靭帯穿刺・切開
- 気管切開
用手的気道確保の禁忌
頭部後屈(代わりに修正下顎挙上)
エアウェイ挿入の禁忌
頭蓋底骨折を疑う所見
(鼻出血、耳出血、パンダの眼、バトル徴候、髄液鼻漏)
TAFな3X
Tamponade cardiac(心タンポナーデ) Airway obstruction(気道閉塞) Flail chest(フレイルチェスト) Tension pneumothoraX(緊張性気胸) Open pneumothoraX(開放性気胸) Massive hemothoraX(大量血胸)
Breathingの診察
見て(視診)
聞いて(聴診)
触って(触診)
叩いて(打診)
頸部のBreathingの診察(視診、触診)
視診:頸静脈怒張
補助呼吸筋使用
触診:皮下気腫
気管偏位
胸部のBreathingの診察(視診、聴診、触診、打診)
視診:呼吸数 胸壁の変形、動揺 胸郭運動の左右差 呼吸様式(腹式?) 外傷の部位 聴診:呼吸音の減弱、消失 触診:礫音の確認(骨折の所見) 圧痛 皮下気腫 打診:鼓音、濁音
頸静脈怒張を起こす
緊張性気胸、心タンポナーデ
Flail chestとは、見た目
上下連続した肋骨が2カ所以上で骨折する場合
→吸気時に陥没、呼気時に膨隆
Flail chestの初期治療と根本治療
初期治療→外固定
(バストバンドによる胸部固定)
根本治療→内固定
(陽圧呼吸、プレートによる創外固定)
緊張性気胸とは
肺、胸壁に生じた一方弁により空気が胸腔内に押し込められ、閉塞性ショックを呈する気胸
・胸腔内圧が上昇し、静脈還流が障害され、循環不全に陥る
緊張性気胸の初期治療と根本治療
初期治療→緊急脱気
(第2肋間鎖骨中線上に18G以上の太さの針を穿刺)
根本治療→ドレナージ
(第4or5肋間中腋窩線上に28Fr以上のchest tubeを挿入)
開放性気胸とは
開放創が大きい場合、抵抗の低い胸壁欠損部より外気の胸腔内への流入が起こる(吸気時の陰圧の影響)
・肺胞虚脱により換気障害、酸素化の悪化
開放性気胸の初期治療と根本治療
初期治療→3辺テーピング
(外気の流入を防ぐ)
根本治療→ドレナージ
(第4or5肋間中腋窩線上に28Fr以上のchest tubeを挿入)
大量血胸とは
循環動態を悪化させる程の出血
大量血胸の初期治療と根本治療
初期治療→ドレナージ
(第4or5肋間中腋窩線上に28Fr以上のchest tubeを挿入)
根本治療→開胸止血
(tube挿入後すぐに1L流出、1500ml/hrの出血、200ml/hrが4時間)
TAFな開緊、血を診るぞ
T 心タンポナーデ A 気道閉塞 F フレイルチェスト 開 開放性気胸 緊 緊張性気胸 血 血胸、腹空内出血 骨盤骨折 両側大腿骨骨折
ショックとは
主要臓器への有効な血流が低下して組織代謝に異常をきたし,細胞機能が維持できないことによる症候群
古典的ショックの一般症状
5P's Pallor 蒼白 Prostration 虚脱 Perspiration 冷汗 Pulselessness 脈拍触知せず Pulmonary insufficiency 呼吸促迫
ショックの原因
- 血液の量が足りない
- 心臓を外から押さえつけるものがある
- 心臓のポンプ機能が弱い
- 血管壁の圧力が弱い
CRT(毛細血管再充満時間)
爪床または小指球を5秒ほど白くなるまで圧迫し,圧迫を解除した後,再び赤みを帯びるまでの時間で末梢の循環状態を評価する
→2秒以上は異常
出血性ショックの分類
ClassI <15%出血 ClassII 15~30%出血 ClassIII 30~40%出血 ClassIV >40%出血 ClassIIまでの段階でショックと認識
3大内出血部位
MAP
Massive hemothorax 大量血胸
Abdominal hemorrhage 腹腔内出血
Pelvic fracture 骨盤骨折(による後腹膜出血)
FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)
循環(C)の異常を認める傷病者に対して,心嚢腔,腹腔および胸腔の液体貯留(出血)の有無の検索を目的としておこなう
輸液ルート
・太い末梢静脈に①正中肘静脈②外頸静脈
・18G以上の太い針で
・2本以上確保
・採血も併せて行う(骨髄路も考慮)
3:1の法則
静脈内に投与した細胞外液補充液のうち,血管内に残るのは30%のみ
初期輸液の第一選択
39度に加温した糖を含まない細胞外液補充液
生命を脅かす危険因子(外傷死の三徴)
・低体温
・代謝性アシドーシス
・凝固障害
Permissive hypotension
Restrictive fluid resuscitation
出血性ショックに対して,正常血圧を目標とした大量輸液は再出血を助長させ,生命予後を悪化させるとされている
→確実な止血までは低血圧を許容し、輸液量を制限する
→収縮期血圧80~90mmHg目標
輸血療法
赤血球:血漿:血小板>2:1:1
ショックが出現してから心停止までの時間
5〜10分
皮下出血の経時変化の色調と理由
黄色
赤血球中のヘモグロビンが分解されて褐色調のヘモジデリンという物質が形成されるため
二重条痕とは
特殊な形態を示す皮下出血
バットや鉄パイプなど、それほど鋭利でない棒状物で体幹や四肢を強く打撃されたときに生じやすい
二重条痕のメカニズム
皮膚を棒状物などで打撃されたとき、その棒状物の幅で皮下の毛細血管がつぶれてしまい、両わきに帯状に血液が漏出する
棒状物が取り除かれても、つぶされた毛細血管はそのままなので、帯状の蒼白部が残る
挫創とは
外力が作用した部位に直接の作用によって生じる
裂創とは
離れた部位に張力によって生じる
挫創と裂創の共通点
創口=創縁と創端が不整で、創洞内に架橋状の組織を認める点
架橋状:押しつぶされたり(挫創の場合)、引き剥がされたり(裂創の場合)する形で組織が分断されるため、切断されなかったスジのようなものが創洞内に残る
挫創と裂創の異なる点
挫創の場合、直接、成傷器が作用するため創口(創縁・創端)に表皮剥脱を伴う
挫創が生じやすい場合と皮下出血が生じやすい場合
挫創:頭部のように皮下浅層に強固な骨組織がある場合は、外力と骨との間で皮膚が圧挫される(皮下出血が生じないわけではない)
皮下出血:四肢や胸部、背部などある程度の弾力性のある部位
杙創
先端が比較的太く、鈍な、鉄筋や杭などの器が貫入した開放性損傷
咬創
動物にかまれた損傷
褥瘡
床ずれ
縛創
しばられて生じた損傷
ブラックアイ(パンダの目)とは
頭蓋底骨折がある場合、特に前頭蓋窩に骨折が及んでいる場合、骨折部からの出血が一番結合織が疎な眼周囲に集まり、生じる
硬膜外血腫の特徴
意識清明期がある
小児虐待で生じやすい
shaking(揺さぶられっ子症候群)に特徴的な所見
硬膜下血腫+眼底出血
歩行者交通事故の損傷の4段階
- 下肢損傷(バンパ創)
- 頭部損傷
- 転倒創
- 轢過創
轢過創
タイヤマーク創
デコルマン
伸展創
デコルマンとは
轢過時にタイヤが回転する摩擦力で皮膚が筋膜から剥離されその間に血種が生じること
表皮剥脱(ひょうひはくだつ)とは、特徴
表皮が剥離した状態
成傷器の作用方向を示す
単なる表皮剥脱のみは死後にも起こる
乾燥(死後の)で顕著になる
生活反応に含まれるもの
出血、凝血(鈍的外傷:皮内・皮下出血、鋭的外傷:多量の出血、創内の凝血)
痂皮の形成
創口の哆開
GCS開眼機能(Eye opening)「E」の判断基準
4点 自発的に、または普通の呼びかけで開眼
3点 強く呼びかけると開眼
2点 痛み刺激で開眼
1点 痛み刺激でも開眼しない
GCS最良言語反応(Best Verbal response)「V」の判断基準
5点 見当識が保たれている 4点 会話は成立するが見当識が混乱 3点 発語はみられるが会話は成立しない 2点 意味のない発声 1点 発語みられず
GCS最良運動反応(Best Motor response)「M」の判断基準
6点 命令に従って四肢を動かす 5点 痛み刺激に対して手で払いのける 4点 指への痛み刺激に対して四肢を引っ込める 3点 痛み刺激に対して緩徐な屈曲運動(除皮質姿勢) 2点 痛み刺激に対して緩徐な伸展運動(除脳姿勢) 1点 なし
JCS-I.覚醒している(1桁の点数で表現)の判断基準
0 意識清明
I-1 見当識は保たれているが意識清明ではない(1)
I-2 見当識障害がある(2)
I-3 自分の名前・生年月日が言えない(3)
JCS-II.刺激に応じて一時的に覚醒する(2桁の点数で表現)の判断基準
II-1 普通の呼びかけで開眼する(10)
II-2 大声で呼びかけたり、強く揺するなどで開眼する(20)
II-3 痛み刺激を加えつつ、呼びかけを続けるとかろうじて開眼する(30)
JCS-III.刺激しても覚醒しない(3桁の点数で表現) の判断基準
III-1 痛みに対して払いのけるなどの動作をする(100)
III-2 痛み刺激で手足を動かしたり、顔をしかめたりする(200)
III-3 痛み刺激に対して全く反応しない(300)
ショックの原因による分類
循環血液量減少性ショック
閉塞性ショック(心タンポナーデ、緊張性気胸)
心原性ショック(心筋梗塞)
血液分布異常性ショック(アナフィラキシー、敗血症)