古文3 Flashcards
四季はなほ定まれるついであり。 死期はついでを待たず。 死は前よりしも来たらず。
四季にはやはり決められた順序がある。(しかし) 死期は順序を待たない。死は 必ずしも前方から来るのではない。
物のついでに言ひ出でたれば、聞きてかく言ふ。
(侍女が)何かの機会に言い出したところ、(それを)聞いてこのように言う。
かの木の丸殿もかくやと、なかなかやうかはりて、優なるかたも侍り。
あの木の丸殿(丸木でつくった粗末な御殿)もこんなふうだろうかと、かえって様子が変わって、優雅な点もございます。
「参るまじくは、そのやうを申せ。」
「参上できないのなら、その理由を申せ。」
翁、かぐや姫に言ふやう、
翁が、かぐや姫に言うことには、
心も浮き立つものは、春のけしきにこそあれ。
心も浮き立つものは、春の有様であるようだ。
もの古りたる森のけしきもただならぬに、
何となく古めかしい森のも並々でない気配がする上に、
楫取、けしきあしからず。
船頭は、機嫌が悪くない。
にはかに御けしきありて、悩み給へば、
急に(葵の上に産気の)ご兆候が表れて、苦しみなさるので、
ふとも言はず、権中納言ぞのたまひつれば、そこに参り、けしきばみ申す
(使いは)すぐには答えないで、 権中納言がおっしゃったことなので、そ こ権中納言の所)に参上して、もったいぶって申し上げる。
年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ。
数年来思っていたことを、果たしました。
そこにて日頃過ぐるほどにぞ、やうやうおこたる。
その仮屋で数日(時が過ぎるうちに、次第に病気がなおってくる。
遣はしし人は、夜昼待ち給ふに、年越ゆるまで、音もせず。
派遣した家来たちは、(大納言が)夜も昼もお待ちになるのに、年を越すまで、 便りもしてこない。 (音信もない。)
音に聞きし猫また、 あやまたず足もとへふと寄り来て、
うわさに聞いていた猫またが、正確に足もとにさっと寄って来て、
隙もなき涙に曇る心にもあかしと見ゆる月の影かな
隙もないほど出る涙で曇る心にも、明るいと見える月の光であるよ。