古文1 Flashcards
一歌にことの飽かねば、いま一つ、
一首では心が十分満足しないので、もう一首、
魚は水にあかず。 魚にあらざれば、その心を知らず。
魚は水に飽きない。魚でないと、その気持ちはわからない。
うしろめたう思ひつつ寝ければ、ふとおどろきぬ。
気がかりに思い思いして寝たので、すぐに目を覚ました。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
秋がやって来たと目にははっきりと見えないけれども、風の音で(秋が来たのだと)自然とはっと気付かれることだ。
世の常、おどろくほどの地震、二三十度震らぬ日はなし。
(大地震の後ではなく)普段ならびっくりするくらいの地震が、二、三十回 ない日はない。
空のうち曇りて、風冷ややかなるに、いといたくながめ給ひて、
空が少し曇って、風がひんやりと吹くと、(源氏は)たいそうひどく物思いに沈 みなさって、
「こぼれて匂ふ花桜かな」とながめければ、
「花開いて美しい色を見せる桜の花よ」と(声を長く引いて)吟じたところ、
ものはかなき心にも、常に、「天照御神をねんじ申せ。」といふ人 あり。
とりとめもない心(私)にも、いつも、「天照御神をお祈り申し上げなさい。」という人がいる。
なほ苦しげなれど、念じて、二三日のほどに見えたり。
やはりまだ苦しそうだったが、我慢して、二、三日たって(夫は)やってきた。
つれづれわぶる人は、いかなる心ならん。
所在無さを思い嘆く(心細く思う)人は、どういう気持ちであろう。
あるは、昨日は栄えおごりて、時を失ひ、世にわび、
あるいは、昨日は栄え得意になっていても、権勢を失って、たいそう落ちぶれて、
世にあわぶる女の、 にげなき老法師、あやしの吾妻人なりとも、 にぎははしきにつきて、
世の中に暮らしかねる女が、不似合いな老法師や、変な東国人であっても、裕 福なのにひかれて、
物思ふ人の魂はげにあくがるるものになむありける。
物思いをする人の魂はなるほど(身体から)離れさまようものであるなあ。
慎ましかるべきものかなと思ふに、 すずろに心地もあくがれにけ り。
遠慮されるはずの者であるなあと思うと、自然に気持ちが落ち着かなくなってしまった。
大将殿も、常にとぶらひ聞こえ給へど、
大将殿も、いつもお見舞い申し上げなさるけれども、
なき人の御菩提をもとぶらひ、わらはが後生をも助けたまへ。
亡き人のご菩提をもとむらい、私の後世での安楽をもお助けください。
船人も、みな子たかりてののしる。
同船の人もみな、子どもたちが寄り集まって、大声で騒ぐ(大騒ぎする)。
勢ひ猛にののしりたるにつけて、いみじとは見えず。
威勢が盛んで、評判が高いのにつけても、えらいとは見えない。
「あれ狐よ。」ととよまれて、惑ひ逃げにけり。
「あれ、狐だ。」と大声をあげられて、(狐は)あわてて逃げてしまった。
親をばの女、姉などの、供し、つくろひて、率てありくもをかし。
親、おばの女性、姉などがお供をし、着飾って、(少女を)連れて歩きまわるの もおもしろい。