財務・会計 Flashcards

1
Q

計算書類等の作成義務や作成の際のガイドライン

A

株式会社は、会社法により計算書類(財務諸表)を作成することが義務付けられています。
計算書類には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表(計算書類を読む際の注意事項を記したもの)があります。
なお、会社法では上記の計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)に、付属明細書、事業報告書を加えたものを計算書類等と呼びます。

取締役会設置会社では、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に対し、計算書類及び事業報告(監査報告又は会計監査報告を含む)を提供しなければなりません。この通知の際に株主に提供する書類には、計算書類、連結計算書類、事業報告、会計監査報告、監査報告があります。

中小企業が計算書類を作成する際のガイドラインとして「中小企業の会計に関する指針」があります。
これは、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4団体が、中小企業の拠るべき会計指針をまとめたものです。
「中小企業の会計に関する指針」は、中小企業が計算書類を作成する際のガイドラインであり、義務ではありません。
中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものです。
会計参与設置会社が計算書類を作成する際には、本指針に拠ることが適当です。

取締役会設置会社では、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に対し、計算書類及び事業報告(監査報告又は会計監査報告を含む)を提供しなければなりません。

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2
Q

企業会計原則

A

企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものです。
企業会計原則は、一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則の3つから構成されており、さらに企業会計原則の規定を補うために企業会計原則注解が設けられています。

一般原則は、企業会計に関する一般的な指針を与える規範であり、損益計算書原則および貸借対照表原則に共通する基本原則です。
●真実性の原則:企業会計の究極目標を示したものであり、企業会計の実質的、形式的なすべての原則および手続を統括する地位にある基本原則で、企業会計は、企業の財政状態および経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならないというもの。
●正規の簿記の原則:企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならないというもの。
●資本取引・損益取引区分の原則:資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならないもの。
●明瞭性の原則:企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならないというもの。
●継続性の原則:企業会計は、その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
●保守主義の原則:企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならないというもの。また、企業会計原則注解では、「企業会計は、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行わなければならないが、過度に保守的な会計処理を行うことにより、企業の財政状態及び経営成績の真実な報告をゆがめてはならない」と規定されています。予測される将来の危険に備えて、合理的な見積額を上回る費用を計上することは、過度に保守的な会計処理であり、保守的な会計処理として認められません。
●単一性の原則:種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策考慮のために事実を歪めてはならないというもの。

*重要性の原則は、企業会計原則に規定されていません。重要性の原則は、企業会計原則注解に規定されています。

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3
Q

貸借対照表

A

貸借対照表は、損益計算書とともに中心となる財務諸表です。
貸借対照表の役割は、「一定時点の財政状態」を示すことです。
つまり、ある時点で企業がどのように資金を調達し、その資金をどのように運用しているかを表したものです。
貸借対照表は、現金や借入金、資本金などの企業の財政状態が期末の時点でどのような状態になっているかを表します。
貸借対照表には、「資産の部」、「負債の部」、「純資産の部」の3つの部分があります。
資金の調達源泉は、「負債の部」、「純資産の部」で表され、資金の運用状態は「資産の部」で表されます。
資金の調達側と運用側は必ずバランスします。なお、英語ではバランスシートといわれますが、英語でバランスは残高を意味します。
なお、貸借対照表は全ての株式会社に公告の義務がある財務諸表です。

貸借対照表の左側(借方)が資金の運用形態を表します。資金の運用状態は「資産の部」で表されます。
資産の部には、「流動資産」(「現金」、「棚卸資産」等)、「固定資産」(「土地」、「建物」等)、「繰延資産」(「開業費」等)が記載されます。
資産をマイナスする項目として「貸倒引当金」や「減価償却累計額」等があります。

貸借対照表の右側(貸方)が資金の調達源泉を表します。資金の調達源泉は「負債の部」「純資産の部」で表されます。
負債の部には「流動負債」に「短期借入金」や「買掛金」等が、「固定負債」には「長期借入金」等が入ります。
負債性引当金である「退職給与引当金」も「固定負債」に入ります。

純資産の定義は、資産総額から負債総額を差し引いたものです。
純資産の部には、株主資本である「資本金」や利益準備金と、新株予約権等も記載されます。

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4
Q

資産

A

貸借対照表の借方(左側)が「資産の部」です。
企業は利益を生み出すために、調達してきた資金を元に、様々な形で資金を運用します。
例えば、製品を作るための材料を調達したり、工場の設備を購入したりします。

 「資産の部」には、このような資金の運用状態が表現されます。
「資産の部」は、さらに資産の種類により「流動資産」と「固定資産」、「繰延資産」に分類されます。
●流動資産
 企業の通常の営業サイクルに含まれるか(正常営業循環基準)、1年以内と比較的短期に現金化できる(1年基準)資産です。
「流動性」とは「現金に近い、または現金化しやすい状態」のことをいいます。

◆当座資産
 流動資産の中でも特に現金に近く、換金性が高い資産を表します。「現金」・「預金」が代表例です。

◆棚卸資産
 販売されることで現金化される資産を表します。商業では、「商品」、
工業では「原材料」「仕掛品」「半製品」「製品」などのいわゆる在庫のことをいいます。当座資産より換金性には劣りますが、流動資産に入ります。

●固定資産
 企業が長期間保有する資産のことです。具体的には、1年以内に現金化しない資産を表します。
固定資産は土地、建物、機械装置などの「有形固定資産」と特許権などの「無形固定資産」、投資有価証券などの「投資その他の資産」の3つに分類されます。

●繰延資産
 実質的には費用ですが、その支払の効果が複数年にわたって期待されるため、一度に費用化せずに一時的に資産としての計上が認められているものです。
償却年数の限度は「創立費」「開業費」「開発費」は5年、「株式交付費」は3年、「社債発行費」は社債の償還期間内とされています。

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5
Q

流動資産の比較的短期間とする期間の基準

A

「流動資産」には、比較的短期間に現金化される資産が含まれます。
その基準としては、正常営業循環基準または1年基準に当てはまる資産を表します。

正常営業循環基準は、通常の営業サイクルで発生する資産を表し、現金、売掛金、受取手形、貸倒引当金、商品、製品、原材料、仕掛品などを含みます。
1年基準は、決算日の翌日から1年以内に決済期日が到来する資産を表し、短期貸付金などを含みます。

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6
Q

無形固定資産3種類

A

「無形固定資産」は、記述の通り形のない資産を表し、「特許権」を始めとする知的財産権(実用新案権、意匠権、商標権等)や、

企業の買収・合併で発生する「のれん」、「ソフトウェア」などを含みます。

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7
Q

無形固定資産 のれん

A

企業の買収・合併などで発生する無形固定資産です。企業を買収するときには、買収される企業の株式を時価で取得します。
このとき、買収にかかった投資額つまり時価総額と、買収された企業の純資産の金額に差額が発生します。
このような場合は、差額を「のれん」という科目に計上します。

現行の会計制度では、他の企業の事業が持つ高い収益性を獲得しているブランド等を有償で取得した場合は、
その収益性を「のれん」として「無形固定資産」に計上することができます。
ただし、自社が獲得している収益性のあるブランド等を無形固定資産に計上することは認められていません。

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8
Q

無形固定資産 研究開発費

A

「研究開発費」には、人件費、原材料費、間接費の配賦額など研究開発により発生した全ての費用が含まれますが、
一般的に原価性がないものと考えられるため、通常は「一般管理費」として発生した期の費用に計上します。
したがって、自社の研究開発活動により特許権を取得した場合でも、それまでの年度に支出された研究開発費を戻し入れることはありません。

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9
Q

無形固定資産 ソフトウェア

A

ソフトウェアの会計処理は、将来の収益との対応関係から制作目的により異なります。

自社利用のソフトウェアは、そのソフトウェアを用いて外部にサービス提供するものや、社内の生産活動や管理活動等に利用するものが該当します。
例えば、会計ソフトを購入した場合の取得費用を計上します。その利用により、将来の収益獲得や費用削減が確実であるか認められるものは、
無形固定資産として計上します。それ以外は、発生時に全額費用処理となります。

市場販売目的のソフトウェアは研究開発活動により製品マスターが作られるまでは
知識を具現化するためにかかった費用として研究開発費を計上します。
その後製品マスターは市場販売するまでの活動により、会計処理が異なります。
市場販売における生産活動に移行した後は、ソフトウェアの制作費は棚卸資産として資産計上されます。
無形固定資産として資産計上する会計処理を行うのは、製品マスターが機能の改良・強化された場合のみです。

「受注制作のソフトウェア」とは、販売先のユーザーから受託して、ユーザーから要望された特定の仕様で制作するソフトウェアのことをいいます。
「受注制作のソフトウェア」の制作費用は、請負工事の会計処理に準じて処理します。また、「受注制作のソフトウェア」については、
ソフトウェアが完成していない段階でも、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には「工事進行基準」により
収益の認識を行うことが認められています。認められない場合は工事完成基準が適用されます。
したがって、受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理され、
無形固定資産に計上されません。

無形固定資産として計上されたソフトウェアは一般的にはその利用期間(原則5年以内)にわたって月割りで残存価額0円まで償却されます。

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10
Q

繰延資産、研究開発費と開発費

A

その支出が将来にわたって価値を生む可能性がある(その支払いの効果が複数年に渡って期待される)費用を振り替えて、
一度に費用化せずに一時的に資産として計上しておくものです。例:株式交付費・社債発行費・創立費・開業費・開発費など

「研究開発費」と「開発費」については、共に商品の研究開発などにかかった費用を表しますが、
通常、毎年行う研究開発活動の費用は原則「研究開発費」として費用計上します。
一方、画期的な新技術・新商品・新市場を開発するなど特別に支出した費用の場合、
「開発費」という繰延資産として計上することが認められています。
→要は、一度に巨額の費用として計上するのではなく、平準化することが望ましければ開発費。
毎年ランニングコストとして発生する費用は研究開発費として計上する。

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11
Q

負債

A

「負債」とは、将来返済する義務がある債務です。そのため他人資本と呼ばれることもあります。
純資産を「自己資本」と称するのに対して、負債は「他人資本」と呼ばれることもあります。
「負債の部」は、大きく「流動負債」と「固定負債」に分類されます。
●流動負債
 「支払手形」「買掛金」「短期借入金」、「その他の流動負債」として「前受収益」や「未払費用」といった経過勘定が表示されます。
 企業の通常の営業サイクルに含まれており、比較的短期間に返済する項目が含まれます。

●固定負債
 返済義務が1年を超える債務の項目が表示されています。「社債」「長期借入金」「退職給付引当金」などが含まれます。
 「退職給付引当金」は負債性引当金なので、負債の部に記載されますが、「貸倒引当金」は評価性引当金として、資産の部のマイナス項目として表示されます。
 一般的に「資産の部」「負債の部」は、現金化しやすいものから順に上から記載されます。
 現金化のしやすさのことを流動性と呼びますので、この配列法は「流動性配列法」と呼ばれています。

「支払手形」と「買掛金」をあわせて、仕入債務と呼びます。一方「受取手形」と「売掛金」を売上債権といいます。
また、経過勘定のうち、「前受収益」は翌期にその分の役務を提供する債務を負い、
「未払費用」はその費用分を翌期に支払う義務を負うので、両者とも流動負債に表示されます。

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12
Q

純資産

A

「純資産の部」は、「資産の部」から「負債の部」を差し引いた差額です。「純資産の部」は、投資家が出資した資金(返済義務なし)と、企業が蓄積してきた利益(内部留保)を合計したものです。負債の場合の他人資本のように、純資産も自己資本または単に資本と呼ばれることもあります。

「株主資本」には「資本金」や「資本剰余金」、「利益剰余金」、「自己株式」が含まれます。また「新株予約権」も純資産の部に含まれます。
「資本剰余金」「利益剰余金」のうち「資本準備金」「利益準備金」は法定準備金と呼ばれ、将来多額の損失が発生した場合などに備えて、
一定以上の金額を積み立てておくものです。

●株主資本
◆資本金
 「資本金」は、企業が株式を発行し、株主から払い込みを受けた金額のうち、資本金として繰り入れられた金額です。
会社法では原則として株主から出資された全額を「資本金」とすることとしていますが、払込金額の2分の1以下までを資本に組み入れず、
その金額を「資本準備金」とすることも容認しています。

◆資本剰余金
 「資本剰余金」には、「資本準備金」と「その他資本剰余金」が含まれます。「資本準備金」には、株主から払込みを受けた金額のうち、
資本金としなかった額が積み立てられます。さらに、「その他剰余金」から配当を行った場合に積み立てられた額も含まれます。

◆利益剰余金
 「利益剰余金」には、「利益準備金」と「その他利益剰余金」が含まれます。「利益準備金」は、「その他利益剰余金」から配当を行った場合に積み立てられた金額です。「その他利益剰余金」には、「任意積立金」と「繰越利益剰余金」が含まれます。「任意積立金」は株主総会の決議によって任意に積み立てられた剰余金です。
「繰越利益剰余金」は、前期からの繰越利益に当期の利益を加え積立金を控除したもので、利益処分の原資となる金額です。

◆自己株式
 自社が発行した株式を、自らが取得して保有しているものです。「
自己株式」は、本来であれば資金調達手段である株式を自社が買い取るため、株主資本からマイナスで控除されます。

●新株予約権
 株式を特定の価格で購入できる権利で、コール・オプションのことを意味します。
企業側は資金調達、ストックオプション、ライツプラン(買収防衛策の一種)などに利用できます。

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13
Q

損益計算書

A

損益計算書は、Profit and Loss Statement、略してP/Lと呼ばれます。損益計算書の役割は、「一定期間の経営成績」を示すことです。
簡単に言えば、どれぐらい儲かっているのかを示したものです。
儲けは利益として表されます。また、利益は売上などの収益から、各種の費用を引いたものです。
よって損益計算書は、「収益」と「費用」、「利益」から構成されます。

損益計算書では、どのような活動で儲けが出ているのかを分かりやすく表現するために、利益を5段階で表します。
●売上総利益
 売上から売上原価を差し引いた利益。商品力を表す。

●営業利益
 本業である営業活動により稼いだ利益。売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引く。

●経常利益
 本業ではないが経常的な営業活動や財務活動を含めて得た利益。営業利益から営業外収益を足し、営業外費用を引く。

●税引前当期純利益
 経常利益に特別利益(臨時の固定資産売却など)を加え、特別損失(災害損失など)を引いた利益。

●当期純利益
 税引前当期純利益から法人税・住民税及び事業税等を差し引いた額。これが配当や社内留保の原資となります。

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14
Q

売上高~売上総利益

A

「売上総利益」には、「売上高」から「売上原価」を差し引いた利益の額が示されています。粗利益や粗利とも呼ばれます。
原価がかからず、売上高が上がる商品は商品力が強いといえます。ここから、様々な費用が差し引かれていきます。
そもそも儲からない商品やサービスを展開すると、この下の諸費用を節約したところで企業収益改善のためには根本的な解決にはなりませんので、
最終的な利益を確保するためにも売上総利益=いわゆる「粗利」が確保されていることは、企業活動上重要なことになります。

●売上高
 売上高 = 商品の販売額 + 役務の提供金額

●売上原価
 売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 ― 期末商品棚卸高(+ 棚卸減耗費 + 商品評価損)
で求めます。売れ残った分(期末在庫)については、当期の商品仕入高から「期末商品棚卸高」として差し引かれ、
その分は「繰越商品」(資産)で翌期に繰越され、「売上原価」とはなりません。
「繰越商品」は「期首商品棚卸高」として、その期の売上原価に算入されます。
販売にかかる費用は「販売費および一般管理費」となり、「売上原価」には入りません。

「材料費」や「労務費」は当期に消費した分だけ、「製造原価」に入ります。
そして当期に完成した製品の中から売上に関わった製品だけが、当期の「売上原価」に算入されます。
当期製造された中でも売れずに在庫になった製品は翌期以降に繰り越され、当期の費用とはなりません。

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15
Q

営業利益

A

「営業利益」には、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を差し引いた利益の額が示されています。

●販売費及び一般管理費
 販売費と一般管理費を合計した費用です。「販売管理費」または「販管費」とも呼ばれます。

◆販売費・・・広告宣伝費や販売員の給与など販売活動にかかった経費。
(例)
「販売手数料」
「荷造費」
「運搬費」など
◆一般管理費・・・事務所の家賃や、間接部門の給与など、管理活動にかかった経費。
(例)
「光熱費」
「消耗品費」
「減価償却費」
「通信費」
「貸倒引当金繰入額」など

*直接工員の直接作業時間の賃金は、製造原価に算入されます。
*「販売費及び一般管理費」には、「減価償却費」や「貸倒引当金繰入額」も含まれますが、「支払利息」は営業外費用になります。

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16
Q

経常利益、営業外収益、営業外費用

A

「経常利益」には、「営業利益」に「営業外収益」を加え、「営業外費用」を差し引いた利益の額が示されています。
したがって、「経常利益」は、経営活動全般を通じた利益を表します。
このような資金調達にかかる費用を含めて計算した利益が、「経常利益」となります。通常では発生しない費用や収益は特別損失、特別利益になります。

●営業外収益・・・本来の営業活動以外の活動から生じる収益。
(例)
「受取利息」
「有価証券利息」
「受取配当金」
「仕入割引」
「有価証券売却益」
「有価証券評価益」など
●営業外費用・・・本来の営業活動以外の活動から生じる費用。
(例)
「支払利息」
「売上割引」
「社債発行費償却」
「開業費償却」
「有価証券売却損」
「有価証券評価損」など

*「前期損益修正益」は特別利益です。
*「減価償却費」は販売費及び一般管理費です。

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17
Q

税引前当期純利益、特別利益、特別損失及び当期純利益

A

「税引前当期純利益」には、「経常利益」に「特別利益」を加え、「特別損失」を差し引いた利益の額が示されています。
「税引前当期純利益」は、臨時的な利益・費用を含めた、企業の総合的な利益を表しています。
税制は各国によってかなり違うため、税引前当期純利益は企業の国際比較などによく利用されています。

●特別利益
 前期損益修正益、固定資産売却益など臨時的・例外的に発生した収益です。

●特別損失
 前期損益修正損、固定資産売却損、減損損失、災害による損失、設備の廃棄による損失、など臨時的・例外的に発生した費用です。

●税引前当期純利益
「税引前当期純利益」には、「経常利益」に「特別利益」を加え、「特別損失」を差し引いた利益の額が示されています。

●当期純利益
「当期純利益」には、「税引前当期純利益」から「法人税、住民税及び事業税」を差し引いた利益の額が示されています。
「当期純利益」と前期繰越利益を合わせて、貸借対照表の「繰越利益剰余金」となります。
「繰越利益剰余金」から、利益処分として株主への配当などが行われます。
さらに、残った金額が企業の内部留保として、成長していくために使われていきます。

*雑収入は「営業外収益」に属します。

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18
Q

収益の認識基準

A

収益の認識基準には、「現金主義」、「発生主義」、「実現主義」の3つの考え方があります。
現行の制度会計では、費用については原則として発生主義を、収益については原則として実現主義を採っています。
収益について発生主義でなく、実現主義を採っているのは、収益の確実性と客観性、処分可能性を確保するためです。

●現金主義
「現金主義」とは、現金収入があったとき(現金の受取時点)に、収益を計上する考え方です。
通常は企業間の取引では「現金」ではなく、企業間信用に基づいて取引されているため、「現金主義」では期間損益を適切に表現できません。

●発生主義
「発生主義」とは、現金の受取りとは関係なく、収益を「発生を意味する経済的事実」に基づいて計上する考え方です。
発生主義は、事実上収益の発生が確定した時点で計上する考え方です。

●実現主義
「実現主義」は、「発生主義」をより厳しくしたものと言えます。
「実現主義」では、商品やサービスを販売し、債権の発生が確定した時点ではなく、債権の回収が確定した時点で計上する考え方です。
つまり、企業が(企業外部に)商品・サービスを提供し、その対価として現金または売掛金・受取手形などの
現金同等物を受け取った時点(①企業外部の第三者に財貨または用役を提供していること、
②その対価として現金または現金同等物を受領するこという2つの要件を満たしたとき)で計上する考え方となります。
実現主義は、具体的には販売という行為をもって収益の実現とすることから、販売基準ともよばれます。

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19
Q

損益計算書の作成

A

売上総利益 = 売上高 - 売上原価

営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税・住民税及び事業税

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20
Q

株主資本等変動計算書

A

「株主資本等変動計算書」は、Statements of Shareholder’s Equity、略してS/Sと呼ばれます。
株主資本等変動計算書の役割は、「貸借対照表の【純資産】の変動状況」を示すことです。
平成18年の会社法施行時に、株式会社は株主総会や取締役会の決議で剰余金の配当がいつでもできるようになりました。
そのため、資本金等の数値の変動を連続的に一覧で把握できるよう作られたものです。

「当期純利益」は「繰越利益剰余金」に繰り入れられます。
また、配当などの利益処分を行なったり、増資などを行うことで純資産の金額は変動します。
株主資本等変動計算書では、純資産の部の項目が表の列として表現されます。
一番上の行は、純資産の部の「当期首残高」、一番下の行が「当期末残高」となっています。
また、その間が「当期変動額」となっており、年間の純資産の変動がわかるようになっています。

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21
Q

剰余金の配当による利益準備金積立

A

「剰余金の配当による利益準備金積立」は、剰余金の配当を行った場合に、一定の割合を「利益準備金」に積み立てたものです。

「利益準備金」には積み立てた額、「繰越利益剰余金」には同じ額だけマイナスした額が表示されます。

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22
Q

株主資本等変動計算書における「当期純利益」

A

株主資本等変動計算書における「当期純利益」は、損益計算書の「当期純利益」ですので、数値は同じです。

また、株主資本等変動計算書の列に表示されている各項目の当期末残高と貸借対照表の純資産の部の各項目の残高は一致します。

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23
Q

当期末純資産合計額当期末純資産合計額は、次の公式で計算します。

A

当期末純資産合計額は、次の公式で計算します。

当期末純資産合計 = 前期末残高 + 当期変動額合計

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24
Q

工事契約に関する会計基準

A

「工事契約に関する会計基準」とは、仕事の完成に対して対価が支払われる請負工事のうち、
基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事契約について適用される会計基準です。
工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額および決算日における工事進捗度を合理的に見積もり、
これに応じて当期の工事収益を認識する方法です。
原価比例法とは、決算日までに実施した工事に関して発生した工事原価が工事総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法です。

工事進捗度 = 決算日までに発生した工事原価累計額 ÷ 工事原価総額

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「借方」に記入されるのは...
「借方」に記入されるのは、「資産の増加」、「負債の減少」、 | 「純資産の減少」、「費用の増加」、「収益の減少」となります。
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「貸方」に記入されるのは...
「貸方」に記入されるのは、「資産の減少」、「負債の増加」、「純資産の増加」、「費用の減少」、「収益の増加」となります。
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取引先に商品 400 を売って、そのうち 200 を現金で受け取った場合、仕訳は...
現金  200    売上 400 売掛金 200 現金、売掛金という資産が増加し、売上という収益が増加したことになります。
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銀行から借り入れていた借入金 100 を現金で返済した場合、仕訳は...
借入金 100    現金 100 借入金という負債が減少し、現金という資産も減少したことになります。
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地方の支店に出張した際、宿泊代 10 を現金で支払った場合、仕訳は...
旅費交通費 10     現金 10 旅費交通費という費用が増加し、現金という資産が減少したことになります。
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簿記一巡
簿記では、最終的に財務諸表を作成しますが、財務諸表を作成するまでの一連の手続きを「簿記一巡」と呼びます。 | 「簿記一巡」は、日々の取引の仕訳を記入する「期中の取引」と、期末に財務諸表を作成する「決算手続」に分かれます。
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期中の取引
◆期中の取引 「期中の取引」とは、会計期間中に取引を帳簿に記録することです。 期中の取引では、取引が発生する都度、「仕訳帳」に記録し、その後「総勘定元帳」へ転記します。 「仕訳帳」は、取引が行われたら最初に仕訳を記入するための帳簿です。「仕訳帳」は時系列にすべての取引を記録します。 「総勘定元帳」は、勘定科目別にまとめられた帳簿です。「仕訳帳」では、すべての取引が記録されていますが、例えば、今現金がどれぐらいあるかを調べるのは、すべての現金に関する取引を探さなければならないので大変です。そこで「総勘定元帳」では、現金などの勘定科目別に仕訳を集約することにより、各勘定科目別に取引をまとめて見ることができるようになっています。 期中のすべての取引は「仕訳帳」と「総勘定元帳」に記録されていきます。この「仕訳帳」と「総勘定元帳」をあわせて「主要簿」と呼びます。また「主要簿」を補うための「補助簿」が作成されることがあります。「補助簿」は、特定の用途のために、より詳しい情報を記入する帳簿です。「補助簿」の種類はたくさんありますが、仕入先との取引の詳細を記録した「仕入先元帳」や、得意先との取引の詳細を記録した「得意先元帳」などがあります。
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決算手続
◆決算手続 「決算手続」は、会計期間の期末に、財務諸表を作成するための一連の手続です。 会計期間とは、事業年度とも呼びますが、通常は 1 年間の区切りで財務諸表を作成するための期間です。 会計期間の開始時点を「期首」、会計期間の終了時点を「期末」と呼びます。財務諸表は期末時点のものを作成します。 基本的な決算手続きの流れは、最初に試算表を作成し、次に決算整理仕訳を行い、最後に財務諸表を作成するという手順で行います。 重要なのは、期中に正しく仕訳と転記がされていたとしても、それを単純に集計しただけでは、正しい財務諸表になるとは限らないということです。正しい財務諸表を作成するには、期末に、決算整理仕訳という仕訳を行い、正しい損益や期末の財政状態を表すように修正する必要があります。 決算整理仕訳には、「在庫の評価」、「売上原価」、「減価償却」、「貸倒引当金」、「有価証券の評価」、「経過勘定」などに関連する仕訳があります。決算整理仕訳を行った後、最後に損益計算書と貸借対照表を作成します。
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◆仕入(現金取引) | 商品を現金 100 円で仕入れると...
仕入 100   現金 100 ここでは、商品の代金として現金を渡していますので、現金という資産が 100 減少します。 同時に、仕入という費用が 100 増えたと考えます。費用が増加した場合は、左側に書きます。
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◆売上(現金取引) | 仕入れた商品を 150 円で販売して、代金を現金で受け取ると...
現金 150     売上 150 商品の代金として現金を受け取っていますので、現金という資産が 150増加します。 同時に、売上という収益が 150 増えたと考えます。収益が増加した場合は、右側に書きます。
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◆仕入(掛取引) | 商品 100 円を仕入れて、代金を掛にすると...
仕入 100    買掛金 100 ここでは、買掛金という負債が 100 増加しています。買掛金は、商品を仕入れる際に発生する負債であり、 あとで仕入先に支払う義務があるものです。現金取引の場合は、現金という資産の減少でしたが、 掛取引の場合は、買掛金という負債の増加になります。
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買掛金 100 円を仕入先に支払った場合の仕訳は...
買掛金 100   現金 100 元々は仕入によって買掛金という負債が 100 円ありましたが、支払いにより、買掛金が減少し 0 円になり、 支払義務がなくなります。買掛金は負債であり、負債の減少は左側に記入します。
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◆売上(掛取引) | 商品を 150 円で販売して、代金を掛にした場合は...
売掛金 150 売上 150 売掛金は、商品を販売する際に発生する資産であり、あとで代金を回収できる権利です。 現金取引の場合は、現金という資産の増加でしたが、掛取引の場合は、売掛金という資産の増加になります。
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売掛金 150 円を取引先から受け取った場合の仕訳は...
現金 150 売掛金 150 売上の時に発生した売掛金 150 円が、代金の回収によって 0 円になり、回収できる権利が無くなります。 売掛金という資産の減少ですので、右側に記入します。
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◆返品 | 仕入戻しと売上戻り
◆返品 商品を注文した後に、頼んだ商品と違うものが送られてきた場合、返品をして代金を返金してもらうことあります。 商品を仕入れた側から販売した側に返品することを「仕入戻し(仕入返品)」、 販売した側が返品を受けることを「売上戻り(売上返品)」といいます。
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A商店が、B商店から商品 1000 円を仕入れ、そのうち 300 円分を品違いのため返品したケースを考えます。 | まず、A商店が商品 1000 円を掛で仕入れた時の仕訳は...
仕入 1,000 買掛金 1,000
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A商店が、仕入れた商品のうち 300 円分を返品した時の仕訳は...
買掛金 300   仕入 300
42
B商店が、商品 1000 円を掛で販売した時の仕訳は...
売掛金 1,000 売上 1,000
43
B商店が、販売した商品のうち 300 円分を返品された場合の仕訳は...
売上 300. 売掛金 300
44
値引とは。 | 値引の場合は、どのような仕訳になるか。
◆値引 値引とは、売買した商品にキズや汚れがあった場合などに、返品するのではなく、代金を引き下げることです。 例えば、仕入れた商品にキズがついていたため、代金を当初よりも安くしてもらうことを指します。 値引の場合は、どのような仕訳になるのでしょうか? 値引の場合の仕訳は、返品の場合と全く一緒になります。つまり、値引の分の仕入や売上を取り消します。
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A商店が、B商店から仕入れた商品にキズがあったため、500 円値引してもらった場合の仕訳は...
買掛金 500   仕入 500
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B商店側で、500 円の値引きを受け入れた場合の仕訳は...
売上 500 売掛金 500
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約束手形
◆約束手形 約束手形とは、あらかじめ決められた期日に、決められた額の金額を支払うことを約束した有価証券です。 約束手形は、商品の代金を支払う方法として使われることがあります。 例えば、A社がB社から 100 万円の商品を仕入れる場合、100 万円の現金を支払う代わりに、 A社が 3 か月後に 100 万円を支払うことを約束した約束手形を作り、それをB社に渡すことで支払うことができます。 これにより、手形の振出人であるA社は、満期日までに、手形の受取人であるB社に手形金額 100 万円を支払う義務が生じます。 手形金額を満期日に受け取れる権利のことを「手形債権」と呼び、「受取手形」という資産で表します。 逆に、手形金額を支払う義務のことを「手形債務」と呼び、「支払手形」という負債で表します。 約束手形を使って商品を仕入れた場合、当事者は手形を振り出す人(振出人)と受け取る人(受取人)の 2 者になります。 受取人の仕訳パターンは、受取手形 XXX 売上 XXX 振出人の仕訳パターンは、仕入 XXX. 支払手形 XXX
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A社がB社に商品 600 を売り上げ、そのうち 400 を手形で受け取った場合、受取人であるA社の仕訳は...
受取手形 400 売上 600 | 売掛金 200
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A社がB社に商品 600 を売り上げ、そのうち 400 を手形で受け取った場合、振出人であるB社の仕訳は...
仕入 600 支払手形 400 | 買掛金 200
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手形の割引
受け取った手形は期日前でも銀行に持っていくことで、現金に換えることができます。 これを、「手形の割引」と呼びます。この場合、期日までの日数に応じた利息に相当する割引料という料金がかかります。 この割引料は、仕訳では「手形売却損」勘定で処理します。
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手持ちの約束手形 600 を銀行に持っていき、割引料 60 で現金に割引いた場合の仕訳は...
現金 540 受取手形 600 | 手形売却損 60
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有価証券
有価証券は、株式会社の株式や社債、国が発行する国債などの証券のことです。 株式などの有価証券は、値段が日々上下します。安く購入して高く売ることができれば儲けが得られます。 このように、安く買って高く売ることが目的の有価証券のことを「売買目的有価証券」と呼びます。
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有価証券の購入
有価証券は、株式市場などで購入することができます。 ただし、証券会社などを通じて株式を購入すると、手数料(付随費用)がかかります。 有価証券の価値である取得原価は、有価証券の購入代価に手数料を加えたものになります。 有価証券の取得原価 = 購入代価 + 付随費用 仕訳では、「売買目的有価証券」という資産(勘定)を使用します。
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売買目的で株式 10 株を 1 株 500 円で購入し、手数料 200 円と共に現金で支払った場合の仕訳は...
売買目的有価証券 5,200 現金 5,200 取得原価に手数料が加算されていることに注意。
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有価証券の売却
有価証券を売却した時は、その分だけ売買目的有価証券が減ります。 ただし、有価証券の価格は日々変動しているため、取得した時の価格と、売却した時の価格は異なることが一般的です。 そのため、売却時の価格によっては売却益が得られる場合と、売却損が生じる場合があります。 取得原価よりも売却価額の方が大きい場合は、差額が売却益になります。
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売買目的で株式 10 株を 1 株 500 円で購入し、手数料 200 円と共に現金で支払った場合において、 | 1 株 500 円で購入した株式を、1 株 600 円で 5 株売却した場合の仕訳は...
まず、取得時の取得原価は、10 株分の購入代価 5,000 円に手数料 200 円を加えた 5,200 円でした。 1 株あたりの帳簿価額を計算すると、5,200 円÷10 株=520 円となります。 よって、売却した 5 株の帳簿価額は、520 円×5 株=2,600 円です。 次に、売却時の売却価額を計算すると、600 円×5 株=3,000 円となります。 よって、差額である売却益は、3,000 円-2,600 円=400 円となります。 仕訳では、売却益を有価証券売却益で処理します。売却時の仕訳は次のようになります。 現金 3,000       売買目的有価証券 2,600 有価証券売却益 400
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売買目的で株式 10 株を 1 株 500 円で購入し、手数料 200 円と共に現金で支払った場合において、 | 1 株 500 円で購入した株式を、1 株 400 円で 5 株売却した場合の仕訳は...
まず、取得時の取得原価は、10 株分の購入代価 5,000 円に手数料 200 円を加えた 5,200 円でした。 1 株あたりの帳簿価額を計算すると、5,200 円÷10 株=520 円となります。 よって、売却した 5 株の帳簿価額は、520 円×5 株=2,600 円です。 売却時の売却価額を計算すると、400 円×5 株=2,000 円となります。 よって、差額である売却損は、2,600 円-2,000 円=600 円となります。 仕訳では、売却損を有価証券売却損で処理します。売却時の仕訳は次のようになります。 現金 2,000      売買目的有価証券 2,600 有価証券売却損 600
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有形固定資産
固定資産は、企業が長期間にわたって利用する資産です。 | 有形固定資産はその中でも、建物や土地、備品、車両運搬具など、形のある資産を表します。
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有形固定資産の購入
有形固定資産を購入したときはその分だけ資産が増えます。 有形固定資産を購入する際に、各種の手数料や引取運賃などの付随費用がかかることがあります。 有形固定資産の価値である取得原価は、有形固定資産の購入代価に付随費用を加えたものになります。 有形固定資産の取得原価 = 購入代価 + 付随費用
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倉庫を 5,000 万円で購入し、手数料 100 万円と共に現金で支払った場合の仕訳は...
建物 5,100 万円 現金 5,100 万円
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減価償却
有形固定資産は取得した後で次第に価値が下がっていきます。これを減価償却と呼びます。 | 有形固定資産を売却する際には、減価償却の分だけ価値が下がっていることに注意する必要があります。
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社債
「社債」とは、社債券という有価証券を発行し、法人や個人から資金調達を行うものです。 「社債」を発行した場合は、毎期の利息の支払いと、償還期限(満期)に元本を返済することが必要となります。 社債の発行形態には、「平価(へいか)発行」と「割引発行」があります。 「平価発行」は、社債の額面金額と等しい価額で発行することです。
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額面 100 で社債を発行した場合は、同じ 100 を現金で受け取る場合の仕訳は...
現金 100   社債 100 現金という資産を受け取った代わりに、社債という債務が計上されます。
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割引発行
「割引発行」は、社債の額面金額よりも低い価額で発行することです。
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額面 100 の社債を、95 で割引発行した場合、社債を買った人は発行時に 95 だけ支払い、 満期日には額面金額と同じ 100 を受け取ります。これは、利息を与えるのとおなじような効果があります。 社債を発行した時の仕訳は...
現金 95 社債 95 社債の簿価は払い込まれた金額と等しくなっていることに注意。
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償却原価法
割引発行では、額面金額と払い込まれた金額の差額が生じます。この差額は、償還期限までに毎年少しずつ調整していきます。 この方法を、償却原価法と呼びます。償却原価法には定額法と利息法があります。 償却原価法(定額法)では、発行日から満期日までの期間で、差額の金額を均等に調整していきます。
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額面 100、発行価額 95、利息が年 5%の社債を発行した場合、 | 毎年の利息の支払日に当座預金から支払う金額は、額面 100 の 5%である 5 となりますが、仕訳は...
社債利息 5 当座預金 5 さらに、決算時には、先ほどの決算整理仕訳を行います。
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額面 100、発行価額 95、利息が年 5%の社債を発行した場合、 | 社債の満期日に、当期の社債利息とともに社債を償還する場合の仕訳は...
社債 100 当座預金 105 社債利息 5 このとき支払われる金額は、社債の額面金額 100 と、当期の社債利息 5 を合計した金額になることに注意。
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株式の発行
株式を発行して資金調達を行った場合、「資本金」に払い込まれた額を計上します。 | ただし、払い込まれた額の 2 分の 1 を超えない額を、「資本金」ではなく「資本準備金」として計上することもできます。
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株式 1,000 を発行し、払い込まれた金額のうち 300 を資本金としなかった場合の仕訳は...
当座預金 1,000 資本金 700 | 資本準備金 300
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剰余金の配当
会社が株主への配当を行う場合には、剰余金から配当します。 剰余金は、「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」の合計となります。 ここで、配当を行う場合は、配当の総額は「分配可能額」を超えてはならない、という規定があります。 つまり、原資がないのに配当してはならないということです。 この分配可能額は、基本的には配当時の剰余金が基準となります。 さらに自己株式がある場合には、自己株式分を控除するなどの計算が必要になります。 ●株式の発行  資金調達を行った場合、「資本金」に払い込まれた額を計上します。 ただし、払い込まれた額の2分の1を超えない額を、「資本金」ではなく「資本準備金」として計上することもできます。 (借)当座預金 ××× (貸)資 本 金 ××× (貸)資本準備金 ××× ●剰余金の配当  配当する剰余金の10分の1の額を「資本準備金」または「利益準備金」として積み立てる必要があります。 ただし、この準備金への積み立ては、配当時の「資本準備金」と「利益準備金」の合計額が 資本金の4分の1に達していれば必要ありません。 *配当する剰余金の10分の1の額、または、資本金の4分の1-(配当時の資本準備金+利益準備金)のどちらか少ない額を 積立額にしますが、このとき、資本金の4分の1-(配当時の資本準備金+利益準備金)が正の値であることが 前提となります。
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仕訳のルール
●簿記の5要素 「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」を言います。簿記上の取引では、簿記の5要素のいずれかが変動することになります。 ●仕訳  仕訳では、取引の2つの側面を「借方」、「貸方」と呼びます。仕訳の左側が「借方」、仕訳の右側が「貸方」となります。また、借方と貸方の金額は必ず一致します。 ●仕訳のルール 「借方」:「資産の増加」「負債の減少」「純資産の減少」「費用の増加」「収益の減少」 「貸方」:「資産の減少」「負債の増加」「純資産の増加」「費用の減少」「収益の増加」  例えば、取引先から商品10,000を受けとり、現金10,000を現金で支払った場合の仕訳は次のようになります。 (三分法に基づくと、商品(資産)は仕入(費用)となります)。 (借)仕入 10,000 (貸)現金 10,000 三分法では、商品売買の仕訳を「仕入」「売上」「繰越商品」という3つの勘定科目を使って行います。 ●商品を仕入れたとき(現金で仕入) (借)仕入 ××× (貸)現金 ××× ●商品を売上げたとき(現金取引) 商品を売り上げたときの仕訳は、実際に売り渡した金額を記入します。売上原価ではありません。 (借)現金 ××× (貸)売上 ×××
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簿記一巡
簿記では、最終的に財務諸表を作成しますが、財務諸表を作成するまでの一連の手続きを「簿記一巡」と呼びます。 「簿記一巡」は、日々の取引の仕訳を記入する「期中の取引」と、期末に財務諸表を作成する「決算手続」に分かれます。 期中のすべての取引は「仕訳帳」と「総勘定元帳」に記録されます。なお、「仕訳帳」と「総勘定元帳」をあわせて「主要簿」と呼びます。 ●仕訳帳  取引が行われたら最初に仕訳を記入するための帳簿です。 ●総勘定元帳  勘定科目別にまとめられた帳簿です。 ●決算手続  会計期間の期末に、財務諸表を作成するための一連の手続です。いくつかのステップを踏んで財務諸表を作成します。基本的な決算手続の流れは、最初に試算表を作成し、次に決算整理仕訳を行い、最後に財務諸表を作成するという手順で行います。
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売掛金と買掛金に関する仕訳
●仕入(掛取引) (借)仕 入 ××× (貸)買掛金 ××× ●決済時(買掛金支払) (借)買掛金 ××× (貸)現 金 ××× ●売上(掛取引) (借)売掛金 ××× (貸)売 上 ××× ●決済時(売掛金回収) (借)現 金 ××× (貸)売掛金 ×××
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返品に関する仕訳
商品を仕入れた側から販売した側に返品することを「仕入戻し(仕入返品)」、 販売した側が返品を受けることを「売上戻り(売上返品)」といいます。 ●仕入戻し(仕入返品)  商品を仕入れた側が返品した場合、返品した分の仕入をなかったものと考え、仕入を取り消します。 (借)買掛金 ××× (貸)仕 入 ××× ●売上戻り(売上返品)  商品を販売した側が返品を受け入れて、代金を返金した場合は、その分の売上がなかったものと考え、売上を取り消します。 (借)売 上 ××× (貸)売掛金 ××× ●値引 値引とは、売買した商品にキズや汚れがあった場合などに、返品するのではなく、代金を引き下げることです。 値引の場合の仕訳は、返品の場合と全く一緒になります。つまり、値引の分の仕入や売上を取り消すことになります。
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売上控除項目と売上割引
●売上返品 売上返品は、商品の品違いなどによって、一旦売り上げた商品が返品され、取引が取り消しされることです。 売上返品の場合は、返品された金額を売上高から直接控除します。 ●売上値引 売上値引は、商品のキズや汚れなどが原因で、一旦売り上げた金額から値引をすることです。 売上値引の場合も、値引した金額を売上高から直接控除します。 ●売上割戻 売上割戻は、一定期間に大量に商品を購入してくれた取引先に対して、一定の金額を差し引いたり、返金したりすることです。 これは、いわゆる売上リベートに相当します。売上割戻は、基本的には売上高から控除します (内容によっては販売費として別途計上する場合もあります)。 ●売上割引 売上割引は、売掛金を期日よりも早期に回収した場合に、一定の金額を差し引いたり、返金したりすることです。 つまり、商品代金を早く支払ってくれた相手に対する優遇措置です。売上割引は、売上の処理に関する費用ではなく、 金融上の費用と考えられるため、売上高からの控除ではなく、営業外費用として計上します。 「値引」や「返品」および「割戻」は、売上を取り消す処理をしますが、 「割引」は利息に相当するものなので営業外費用として処理します。「売上」から控除しません。 また、「売上割引」は語句の最初に「売上」とありますが、収益ではなく、費用です。
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約束手形
約束手形とは、あらかじめ決められた期日に、決められた額の金額を支払うことを約束した有価証券です。 約束手形は、商品の代金を支払う方法として使われることがあります。 ●受取人の仕訳 (借)受取手形 ××× (貸)売 上 ××× ●振出人の仕訳 (借)仕 入 ××× (貸)支払手形 ××× ●手形の割引  受け取った手形は期日前でも銀行に持っていくことで、現金に換えることができます。 この場合、期日までの日数に応じた利息に相当する割引料がかかります。この割引料は、仕訳では「手形売却損」勘定で処理します。 (借)現 金 ××× (貸)受取手形 ××× (借)手形売却損 ×××
78
売買目的有価証券に関する仕訳
有価証券は、株式会社の株式や社債、国が発行する国債などの証券のことです。 有価証券は、安く購入して高く売ることができれば儲けが得られます。 このように、安く買って高く売ることが目的の有価証券のことを、「売買目的有価証券」と呼びます。 「有価証券売却益」は貸方項目、「有価証券売却損」は借方項目に入ります。 ●有価証券の取得原価 有価証券の購入代価に手数料(付随費用)を加えたものになります。 有価証券の取得原価=購入代価+付随費用 ●有価証券の購入  仕訳では、「売買目的有価証券」を使用します。 (借)売買目的有価証券 ××× (貸)現 金 ××× ●有価証券の売却(売却益がある場合)  仕訳では、売却益を「有価証券売却益」で処理します。 (借)現 金 ××× (貸)売買目的有価証券 ×××              (貸)有価証券売却益 ×××  ●有価証券の売却(売却損がある場合)  仕訳では、売却損を「有価証券売却損」で処理します。 (借)現 金 ××× (貸)売買目的有価証券 ××× (借)有価証券売却損 ×××
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固定資産に関する仕訳
固定資産は、企業が長期間にわたって利用する資産です。 有形固定資産はその中でも、建物や土地、備品、車両運搬具など、形のある資産を表します。 有形固定資産の取得原価に、手数料を加えることを忘れないように。 ●有形固定資産の取得原価  有形固定資産の価値である取得原価は、有形固定資産の購入代価に手数料を加えたものになります。  有形固定資産の取得原価 = 購入代価 + 付随費用 ●有形固定資産購入時の仕訳 (借)有形固定資産 ××× (貸)現 金 ×××
80
固定資産売却
有形固定資産は、減価償却費の扱いに注意する必要があります。 売却に際しての記帳処理では、減価償却の処理が直接法であるか間接法であるか留意する必要がありますが、 減価償却費、固定資産売却損益を計算するには、いずれの手法であっても同じ結果となる点、注意しましょう。  減価償却費は、定額法、定率法がありますが、いずれの方法を採用したとしても、 売却される期における期間経過分(通常は、月数ベースで計上)を計上します。 売却した期の減価償却費=その期1年分の減価償却費×経過月数/12  固定資産売却損益は、直接法はそのまま帳簿価格を用いて計算します。 間接法であれば、減価償却累計額を売却した有形固定資産残高から差し引きます。  固定資産売却損益の計算は以下のようになります。 固定資産売却損益=有形固定資産売却額-(売却した有形固定資産の前期末帳簿価額-売却した期の減価償却費)
81
社債に関する仕訳
「社債」とは、社債券という有価証券を発行し、法人や個人から資金調達を行うものです。 「社債」を発行した場合は、毎期の利息の支払いと、償還期限(満期)に元本を返済することが必要となります。 社債の発行時には、借方に「現金」、貸方に「社債」が記入されます。 社債の金額は、額面金額で記入することになります。社債を発行した会社は利息を支払う必要があります。 仕訳では、借方に「社債利息」を記入します。このとき、社債利息を、一般の借入金利息と区別するため、 「支払利息」勘定ではなく、「社債利息」勘定を使用します。 ●社債発行時の仕訳 (借)現 金 ××× (貸)社 債 ××× ●利息支払の仕訳(当座預金から支払う場合) (借)社債利息 ××× (貸)当座預金 ××× 社債の発行形態には、「平価(へいか)発行」と「割引発行」があります。 ●平価発行  社債の額面金額と等しい価額で発行することです。 ``` ●割引発行  社債の額面金額よりも低い価額で発行することです。利息を与える効果があります。 割引発行では、額面金額と払い込まれた金額の差額が生じます。 この差額は、償還期限までに毎年調整していきます。この方法を、償却原価法と呼びます。 償却原価法には定額法と利息法があります。 ```
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決算手続
``` 中の取引では、取引が発生するたびに仕訳を行い、総勘定元帳へ転記します。 期末になると、財務諸表を作成するために決算手続を行います。 決算手続では、最初に「決算整理前残高試算表」を作成します。 決算整理前残高試算表は、決算整理仕訳を反映する前の残高試算表です。 これに決算整理仕訳を反映させたものが、「決算整理後残高試算表」になります。 ``` ●試算表 「決算手続」は試算表を使って行います。試算表は、総勘定元帳の各勘定をまとめた表です。 試算表を作ることで、数字が正しいかチェックすることができます。 試算表には、「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類があります。 ●合計試算表  勘定ごとに、借方の合計金額と、貸方の合計金額を集計した表です。合計試算表の借方と貸方の合計金額は一致します。 ●残高試算表  勘定ごとに、借方と貸方の差額である残高を集計した表です。残高試算表の借方と貸方の合計金額も一致します。 ●合計残高試算表  合計試算表と、残高試算表を合わせたものです。合計欄と残高欄を横に並べて表示します。 ●決算整理仕訳  期中では、取引があるたびに仕訳を行い、仕訳帳の内容を総勘定元帳に転記します。 期末になると、総勘定元帳を集計して財務諸表を作成していきますが、そのままでは正しい財務諸表になりません。 そのため、決算整理仕訳という処理を行い、正確な財務諸表になるように修正する必要があります。 ●決算整理事項  決算整理が必要な項目です。具体的には、経過勘定の処理、棚卸資産の処理(売上原価の計算)、 貸倒引当金の設定、有価証券の評価替え、固定資産の減価償却、負債性引当金の設定、現金過不足の処理等があります。
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経過勘定に関する仕訳
会計では、実際の支払いタイミングと、費用を計上するタイミングが異なる場合があります。 収益に関しても同じく、入金のタイミングと、収益を計上するタイミングが異なる場合があります。 このようなタイミングのずれを解消し、当期の費用と収益の額を正しく調整するための勘定を経過勘定といいます。 経過勘定には、「前払費用」「未収収益」「前受収益」「未払費用」があります。 ●前払費用(費用の繰延)  当期に支払った費用の中に、次期以降に属する費用が含まれている場合、決算整理で調整します。 (借)前払利息 ××× (貸)支払利息 ××× ●未収収益(収益の見越)  当期に収益として発生しているもので、金銭の受取りが行われていない場合、決算整理で調整します。 (借)未収利息 ××× (貸)受取利息 ××× ●前受収益(収益の繰延)  当期に受け取った収益に、次期以降に属する収益が含まれている場合、決算整理で調整します。 (借)受取利息 ××× (貸)前受利息 ××× ●未払費用(費用の見越)  当期に費用として発生しているが、いまだ支払が行われていない費用がある場合、決算整理で調整します。 (借)支払利息 ××× (貸)未払利息 ×××
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期末商品棚卸高
売上原価は、期首商品棚卸高、期末商品棚卸高、当期商品仕入額から計算します。期末商品棚卸高の計算では、期末商品の単価を求めます。 この単価の決定方法には、「先入先出法」、「移動平均法」、「総平均法」があります。 ●売上原価の計算式  売上原価=期首商品棚卸高(期首在庫)+当期商品仕入高-期末商品棚卸高(期末在庫)  例えば、期首商品が 120、当期商品仕入高が 480、期末商品が 100 だった場合は、売上原価は 500 となります。  売上原価:120+480-100=500 ●先入先出法  先に仕入れた商品から順番に販売されたとみなして、払い出し単価を決定する方法です。 この場合は、期末の在庫は最も新しくなります。よって、期末商品の単価は、新しく仕入れた商品の単価になります。 ●移動平均法  「移動平均法」とは、商品を仕入れる都度、在庫全体の平均の単価を計算し、それを次の払い出し単価とする方法です。 ●総平均法  期末に前期の繰越商品と当期の仕入の合計金額を求め、それを合計数量で割ることで単価を決定する方法です。
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商品評価損と棚卸減耗費
期末商品の数量や単価について、実際には帳簿上の数量と実地棚卸数量が違ったり、 商品の時価が大きく下がっている場合があります。よって、帳簿上の数量と単価によって売上原価を算出した後に、 「在庫の評価」を行い「商品評価損」と「棚卸減耗費」を把握します ●商品評価損  商品の時価が下がっている場合には時価で評価し、下がっていない場合は取得原価のままで評価する方法を低価法と呼びます。 低価法を採用した場合は、商品の価値が減少した分を「商品評価損」という費用として処理します。 「商品評価損」は、取得原価から時価を差し引き、実地数量を乗じることにより算出できます。 商品評価損=(取得原価 - 時価)× 実地数量 ●棚卸減耗費  帳簿上の数量よりも実施数量が減っている場合は、数量が減ることで減少した価値を「棚卸減耗費」という費用勘定で処理します。 「棚卸減耗費」は、帳簿数量から実地数量を差し引き、取得原価を乗じることにより算出できます。 棚卸減耗費=(帳簿数量 - 実地数量)× 取得原価 商品評価損 xxx 棚卸減耗費 xxx
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貸倒引当金
貸倒引当金とは、売掛金、受取手形などの債権のうち、将来貸倒れになる可能性のある金額をあらかじめ見積もったものです。 貸倒引当金の設定では始めに来期の貸倒額を見積もります。貸倒引当金には、当期の貸倒引当金の残高が残っている場合がありますので、 当期の残高に、足りない分を積み立てることになります。そのための方法として、「差額補充法」と「洗替法」の2種類があります ●差額補充法  来期の貸倒見積額と、当期の貸倒引当金の残高の差額を、貸倒引当金に追加する方法です。見積額と残高の差額を追加します。 (借)貸倒引当金繰入額 ××× (貸)貸倒引当金 ×××× ●洗替法  いったん貸倒引当金の残高を0にして、その後、来期の貸倒見積額の全額を設定する方法です。 洗替法で仕訳を行う場合は、期末の残高を0にしてから見積額を設定します。 (借)貸倒引当金 ××× (貸)貸倒引当金戻入益 ××× (借)貸倒引当金繰入額 ××× (貸)貸倒引当金 ×××
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有価証券の評価替
有価証券の価値は日々変動します。売買目的有価証券は期末に評価替えを行います。 評価替とは、有価証券を購入したときの取得原価と期末時点の時価が異なる場合、取得原価を時価に修正することです。 「有価証券評価損」は借方項目、「有価証券評価益」は貸方項目に入ります。 ●有価証券評価損  売買目的有価証券を時価評価した際に生じた、評価損のことです。 (借)有価証券評価損 ××× (貸)有価証券 ××× ●有価証券評価益  有価証券評価額が、取得価額を上回ったことに伴う評価益のことです。 (借)有価証券 ××× (貸)有価証券評価益 ×××
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減価償却費
建物や機械のような有形固定資産は、長期にわたる使用により価値が減少します。 減価償却費は、資産の価値の減少を長期間にわたって費用として処理していく手続きです。 減価償却費の主な計算方法には、「定額法」と「定率法」があります。 ●定額法  毎年同額の減価償却費を計上する方法です。  1年あたりの減価償却費=(取得原価-残存価額)÷耐用年数 耐用年数:その資産を利用することができる使用可能年数 残存価額:その資産の耐用年数が過ぎた後に売却するときの予想価額 ●定率法  資産の簿価に一定の償却率を掛けて毎期の減価償却費を計上する方法です。  1年あたりの減価償却費 =(取得原価 - 減価償却累計額)× 償却率 ●直接法と間接法  減価償却費の記帳方法には「直接法」と「間接法」の2種類の方法があります。  「直接法」とは、計算した減価償却費を資産の帳簿価額から直接控除する方法です。 (借)減価償却費 ××× (貸)資産(建物・設備など)  ×××  「間接法」とは、減価償却費を固定資産から直接控除せずに、「減価償却累計額」勘定によって間接的に控除していく方法です。 (借)減価償却費 ××× (貸)減価償却累計額 ×××
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引当金
引当金は、当期の事象に起因して発生する、将来の費用や損失について、貸借対照表に積み上げる制度です。 引当金として繰り入れるかについては、次のような4つの要件があります。 これら4つの要件が満たされたときには、引当金を計上しなければなりません。 【できる規定ではない】点に注意。 ●将来の特定の費用又は損失であること ●その発生が当期以前の事象に起因していること ●発生の可能性が高いこと ●その金額を合理的に見積ることができること
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負債性引当金
引当金とは、将来の特定の支出や損失に備えるために、貸借対照表の負債の部、または資産の部に繰り入れられる金額のことです。 引当金では、当期の負担に属する金額を見積り、当期の費用として計上します。引当金の種類には「評価性引当金」と「負債性引当金」があります。 ●評価性引当金  将来資産の価値が一部損失することを予想し、資産から控除される引当金のことです。 ●負債性引当金  負債性引当金とは、将来の支出に備えた引当金のことです。賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金などが負債性引当金に分類されます。  当期に退職給付引当金として計上する場合の仕訳は、退職給付引当金は、貸方項目に記載されます。 「退職給付費用」は当期の費用として処理されます。「退職給付引当金」は、貸借対照表の負債の部に積み立てられ、将来に退職給付が支払われた場合には取崩しされます。 ●仕訳(当期に退職給付引当金を計上する場合) (借)退職給付費用 ××× (貸)退職給付引当金 ×××
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現金過不足
現金勘定の借方残高は、通常、帳簿上の現金有高を表しているはずですが、実際の現金有高を調査してみると、記帳漏れなどにより、 帳簿上の有高と実際の有高とが一致しない場合があります。原因が分らない場合には、帳簿上の有高と実際の有高とを一致させるために、 「現金過不足」勘定で処理します。そして、原因が分かったら、「現金過不足」勘定から本来の正しい勘定へと振り替えます。 ●帳簿有高が実際有高よりも多い場合 (借)現金過不足 ××× (貸)現金 ××× ●帳簿有高が実際有高よりも多い場合で、決算日まで原因が分からない場合 (借)雑損 ××× (貸)現金過不足 ××× ●帳簿有高が実際有高よりも少ない場合 (借)現金 ××× (貸)現金過不足 ××× ●帳簿有高が実際有高よりも少ない場合で、決算日まで原因が分からない場合 (借)現金過不足 ××× (貸)雑益 ××× 雑損や雑益は、損益計算書の営業外費用、営業外収益に計上されます。
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帳簿の締切り
決算整理が終わると、仕訳帳や総勘定元帳には、全ての取引と決算整理仕訳が記入されています。 ここで、当期の記入を整理して締切る必要があります。当期の記入と次期の記入を区別し次期の記入に備えます。これを帳簿の締め切りと言います。 ●収益・費用の締切り  すべての収益・費用の勘定の残高は「損益」勘定に振り替えます。最後に、損益勘定の残高を、繰越利益剰余金勘定に振り替えます。 この後の手順である損益計算書は、この損益勘定を基に作成します。 ●資産・負債・純資産の締切り  資産・負債・純資産の締切りでは、それぞれの残高を次期に繰越します。その方法として、「英米式決算法」と「大陸式決算法」があります。  英米式決算法は、仕訳を使わない簡便な方法です。英米式決算法では、資産・負債・純資産の勘定に、「次期繰越」と記入して貸借を一致させて締切ります。 さらに、次期の期首の日付で「前期繰越」と記入して、残高を次期に繰越します。その後、繰越試算表を作成します。 繰越試算表は、資産・負債・純資産の勘定の次期繰越額を表にしたものです。 英米式決算法では、この後の手順である貸借対照表は、この繰越試算表を基に作成します。  大陸式決算法は、仕訳を使って帳簿を締切る方法です。 大陸式決算法では、資産・負債・純資産の勘定の残高を「閉鎖残高」勘定(もしくは「決算残高」勘定)に振替えてから締切ります。 大陸式決算法では、この閉鎖残高を基に貸借対照表を作成します。
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伝票会計
総勘定元帳への転記のための資料となる取引を記録する紙片のことを、伝票といいます。また、伝票を作成することを、起票といいます。  これまで、取引は仕訳帳に記入した後に、総勘定元帳へ転記するという簿記一巡の手続きを学習してきました。 しかし、実務では、小規模の企業においてあまり仕訳帳は用いられていません。仕訳帳の代わりに伝票を用いて取引を処理することが多いです。  仕訳帳の代わりに伝票を用いて取引を処理する会計処理の方法を、伝票会計といいます。 仕訳帳では帳簿のページに取引を行ごとに記録するのに対して、伝票会計においては取引ごとに伝票に1枚ずつ記録します。 伝票は、取引発生順に綴りこめば、仕訳帳になります。 入金伝票、出金伝票、振替伝票の3つの伝票を用いるものを、3伝票制といいます。 なお、入金伝票、出金伝票、振替伝票に、仕入伝票、売上伝票を加えて5つの伝票を用いるものは、5伝票制といいます。 ●入金伝票 入金伝票は、「(借方)現金」と仕訳される取引、すなわち入金取引を記入する伝票です。 入金伝票の科目欄には、金額と貸方の科目のみ記入することになります。 (借)現金 〇〇(貸)◇◇◇◇ 〇〇  ●出金伝票 出金伝票は、「(貸方)現金」と仕訳される取引、すなわち出金取引を記入する伝票です。 出金伝票の科目欄には、金額と借方の科目のみ記入することになります。 借)◇◇◇◇ 〇〇 (貸)現金  〇〇 ●振替伝票 入出金取引以外は振替伝票を利用します。 振替伝票は、仕訳に現金が出てこない取引、すなわち振替取引を記入する伝票です。 振替伝票の科目欄には、借方と貸方のそれぞれの勘定科目名と金額を記入します。
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資本金の額や発行株式の総数
会社法の第445 条には、株式会社の資本金の額は、払込み又は給付をした財産の額とすると定められています。 しかし、この払込み又は給付に係る額の2 分の1 を超えない額は、資本金として計上しないことができるとも定められています。 この資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければなりません。 よって「全額」を資本金とするのが原則ということになり、「2 分の1 まで」を資本金としないで、資本準備金として計上することができます。 また、会社法の第37 条には、設立時の発行株式の総数は、発行可能株式総数の4 分の1を下ることができないと定められています。 この規定は、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は適用されません。
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閉鎖残高勘定
閉鎖残高勘定とは、資産、負債、純資産の各勘定の残高を集計したものです。 閉鎖残高勘定を貸借対照表に記載する場合、純資産から、「自己株式」「貸倒引当金」「建物減価償却累計額」を控除して記載する必要があります。 閉鎖残高勘定を貸借対照表に記載するときには、「自己株式」を純資産の部の控除項目に、「貸倒引当金」と「建物減価償却累計額」は資産の部に 控除項目として記載します。
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税効果会計
税効果会計とは、法人税・住民税等の額を適切に期間配分することにより、税引前当期純利益と税金費用(法人税・住民税等に関する費用)を 合理的に対応させる手段のことをいいます。一時的に会計と税務で、費用を計上するタイミングが異なる場合を、「一時差異」と呼びます。 一時差異には「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」があります。 ●繰延税金資産:将来減算一時差異  将来の法人税の支払額を減額します。法人税の前払いをするという観点で、「資産」の性格をもちます。貸借対照表の資産の部に計上します。 「貸倒引当金の超過額」「減価償却費の償却超過額」などがあります。「繰延税金資産」を計上する際には、将来の所得を見積もり、「繰延税金資産」が 将来回収できるかを検証することが義務付けられています。これは、もし次期に赤字になってしまい、所得がマイナスになってしまった場合は、 法人税が無くなるため、法人税を減算する効果が得られなくなるためです。 ●繰延税金負債:将来加算一時差異  将来の法人税の支払額を増額します。法人税の未払いという観点から、「負債」の性格をもちます。貸借対照表の負債の部に計上します。 税効果会計では、税引前当期純利益の額に応じた、法人税等の金額と当期純利益を表示するように調整をします。 当期の損金として認められなかった費用に実効税率40%を掛けて税効果を計算します。 この税効果を法人税等からマイナスし、同時にマイナス分を「繰延税金資産」として貸借対照表に計上します。 ●繰延税金資産が計上されるとき (借)繰延税金資産 ××× (貸)法人税等調整額 ××× また、次期において、当期の損金として認められなかった費用が、次期の損金として認められた場合、 損金として認められた費用に実効税率を掛けた金額が税効果となります。この税効果を法人税等にプラスし、同時に当期の「繰延税金資産」を取り崩します。 ●繰延税金資産が取り崩されるとき (借)法人税等調整額 ××× (貸)繰延税金資産 ×××
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一時差異と永久差異
一時差異 将来減算一時差異 将来の課税所得を減算する効果をもつもの              「繰延税金資産」を生じさせる              ex.減価償却費の超過額・引当金の繰入超過額・評価損の損金不算入額      将来加算一時差異 将来の課税所得を増額する効果をもつもの               「繰延税金負債」を生じさせる              ex.圧縮記帳の損金算入額など 永久差異 差異が永久に解消されないため、税効果会計は適用されない     ex.受取配当金の益金不算入額・交際費の損金不算入額・寄付金の損金不算入額・罰科金の損金不算入額 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ●一時差異  一時差異とは、企業会計と税法の差異のうち、将来の期間において解消される差異です。 一時差異は、税効果会計が適用され、法人税等が期間配分されます。 一時差異は、将来減算一時差異と将来加算一時差異に分類されます。 ① 将来減算一時差異  将来減算一時差異は、将来、一時差異が解消するときに、その期の課税所得を減額する効果をもつものをいい、 一時差異の発生時には法人税等を繰延べすることで、その期の課税所得が増額されるような差異です。 将来減算一時差異の具体的な項目には、貸倒引当金、退職給付引当金等の引当金の損金算入限度超過額、 減価償却費の損金算入限度超過額、損金に算入されない棚卸資産等に係る評価損などがあります。 ② 将来加算一時差異  将来加算一時差異は、将来、一時差異が解消するときに、その期の課税所得を増額する効果をもつものをいい、 一時差異の発生時には法人税等を見越計上することで、その期の課税所得が減額されるような差異です。 ●永久差異  永久差異とは、企業会計と税法の差異のうち、将来の期間において解消されない差異です。 永久差異は、その差異が永久に解消されないため、税効果会計は適用されません。 永久差異の具体的な項目には、受取配当金の益金不算入額、寄付金の損金不算入額、交際費の損金不算入額などがあります。
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合併会計
合併会計とは、「ある企業又は事業」が「他の企業又は事業」の「資産」と「負債」を受け入れ、財務諸表を一つにする処理です。 一般的には合併時に行われる処理のことをいいます。合併会計には、パーチェス法と持分プーリング法があります。 ●パーチェス法  被合併会社の資産や負債を時価評価する会計手法です。 ●持分プーリング法  被合併会社の資産・負債を帳簿価額のまま引き継いで計上する会計手法です。 日本では、国際会計基準に合わせて、原則パーチェス法で処理することとなっています。 パーチェス法は時価評価しますので、「時価評価した純資産額」との間に差が生じることがあります。これを「のれん」といいます。 ●のれん  取得価額(取得原価)-時価評価した純資産額(資産-負債) 資産として計上された「のれん」は、一定の期間で費用として償却しなければなりませんが、 企業会計原則では20年以内と定められています。
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連結会計の連結範囲
「連結の範囲」は子会社の認定基準のことをいいます。「連結の範囲」は「支配力基準」という基準で決定されます。 支配力基準は 他の会社等の議決権の40%以上50%以下を所有している場合で、かつ次のいずれかの要件に該当する会社です。 議決権の所有割合         実質的な支配とされる場合 50%超(過半数)    他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有 40%~50%       他の企業の議決権の 40%~50%を自己の計算において所有              かつ            緊密者の議決権や役員関係などの一定の条件のいずれかを満たす(※) ``` 0%~40%未満     他の企業の議決権の 0%~40%未満を自己の計算において所有              かつ            緊密者と合わせると他の企業の議決権の過半数を所有              かつ            役員関係などの一定の条件(※の②~⑤のいずれかに該当) ``` ①「自社が所有する議決権+自社と緊密な関係がある者が所有する議決権が他の会社等の議決権の50%超である場合 ②役員もしくは使用人等が、他の会社の取締役会等の構成員の過半数を占めている場合 ③他の会社等の事業の方針決定を支配する契約等が存在する場合 ④他の会社等の負債に計上されている資本総額の過半について融資している場合 ⑤その他、他の会社等の意思決定機関を支配していると推測される事実が存在する場合 なお上記、①に該当する会社であって、かつ上記②~⑤までのいずれかの要件に該当する会社も 支配基準により他の会社の意思決定機関を支配しているとされます。
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連結会計に関する、連結貸借対照表の作成
連結財務諸表は、親会社と子会社の個別の財務諸表に基づいて作成されます。 連結財務諸表は、最初に個別の財務諸表を合算します。次に子会社の資産、負債の時価評価を行います。 次にグループ内の取引や資産などを相殺消去し、非支配株主持分を計算するという手順になります。 親会社が子会社の株式を100%所有していない場合には、親会社の持分以外を「非支配株主持分」として、連結貸借対照表の純資産の部に計上します。 子会社資本金のうち親会社の持分と、親会社が時価で取得した金額で取得相殺消去します。 「投資と資本の相殺消去」を行う際に差額がある場合には、その差額を「のれん」として無形固定資産に計上します。 ●非支配株主持分  子会社の自己資本のうち、親会社が所有していない非支配株主の持分のことをいいます。つまり子会社の資本のうち親会社の持分以外になります。 連結貸借対照表の純資産の部に計上します。 ●のれん  親会社の子会社に対する投資額と、親会社持分の差額になります。のれん」として無形固定資産の区分に表示されます。
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評価性引当額と影響要素
評価性引当額とは、税効果会計において、繰延税金資産のうち回収可能性がないと会社が判断した金額のことです。 具体的には、将来減算一時差異又は税務上の繰越欠損金等に対応させる十分な将来加算一時差異や課税所得がないことを指します。 課税所得が減少すると、将来減算一時差異となり、繰延税金資産が計上されます。 繰延税金資産は、将来減算一時差異が解消される時に課税所得を減少させて、税金負担を軽減できます。 そのため、他の条件が一定の時、将来における課税所得の減少は、繰延税金資産の回収可能性を下げ、評価性引当額の増加に繋がります。 タックスプランニングとは、将来の法人税等の発生につき計画を行うため、評価性引当額に影響します。 当期の業績が低下すると課税所得が減少する可能性が発生します。 繰越欠損金が発生事象と、評価性引当額の減少は、直接的には無関係であるため、評価性引当額には影響しません。
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のれん
「中小企業の会計に関する指針」において、のれんの償却を行わないとしている規定はありません。 のれんは、買収価額が買収された企業の時価評価純資産よりも大きいときに計上されます。 被合併会社から受け継ぐ時価評価純資産額が買収価額よりも大きい場合は、負ののれんになります。 また、時価評価純資産額であって、総資産額ではありません。 さらに、買収価額というのは、被合併会社の株主に交付される金額だけではありません。 被合併会社の株主に交付される株式も含まれます。 「企業結合に関する会計基準」第32項目に、 「のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する」 と規定されています。 「企業結合に関する会計基準」第31項目に、 「取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、 その超過額はのれんとして次項に従い会計処理し、下回る場合には、その不足額は負ののれんとして第33項に従い会計処理する」 と規定されています。よって、のれんはマイナスの金額になることもあります。 また、「企業結合に関する会計基準」第48項目に、 「負ののれんは、原則として、特別利益に表示する」 と規定されており、発生時の損益計算書に特別利益として計上されることになります。
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持分法投資利益(または損失)
持分法投資利益(または損失)は、持分法適用会社から上がる損益のことをいいます。 これは、持分法適用会社への投資が本体企業の収益にどれくらい貢献したかを見る一つの物差しとなっています。 黒字の場合は「持分法投資利益」、赤字の場合は「持分法投資損失」として計上します。 持分法投資損益について、受取利息や配当金と同様、営業外損益として処理するため、経常損益の変動要因になります。
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持分法投資利益(または損失)
持分法投資利益(または損失)は、持分法適用会社から上がる損益のことをいいます。 これは、持分法適用会社への投資が本体企業の収益にどれくらい貢献したかを見る一つの物差しとなっています。 黒字の場合は「持分法投資利益」、赤字の場合は「持分法投資損失」として計上します。 持分法投資損益について、受取利息や配当金と同様、営業外損益として処理するため、経常損益の変動要因になります。
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連結財務諸表を作成する基本的な流れ
連結財務諸表を作成する基本的な流れは、最初に個別の財務諸表を単純合算します。 次に子会社の資産、負債を時価評価します。その後、グループ内の取引や資産などを相殺消去し、非支配株主持分を計算するという手順になります。 関連会社の個別貸借対照表は、合算しません。親会社が子会社の株式を100%所有していない場合には、親会社の持分以外を、「非支配株主持分」として、 連結貸借対照表の純資産の部に計上する必要があります。
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キャッシュ・フロー計算書で扱うキャッシュの範囲
キャッシュ・フロー計算書のキャッシュは、「現金及び現金同等物」のことを表します。 ●「現金」の考え方  手許現金だけでなく当座預金、普通預金などの預金も含まれます。  一方、定期預金は「現金」に含まれません。いつでも引き出すことの出来るキャッシュが「現金」と考えます。 ●「現金同等物」の考え方  容易に換金可能で、元本がほぼ保証される短期投資を指します。短期投資とは、具体的には3ヶ月以内に現金化できるものとなります。例えば、定期預金、譲渡性預金、コマーシャルペーパーなどのうち、満期が3ヶ月以内のものが「現金同等物」となります。取得した日から満期までの期間が3ヶ月以内であることが「現金同等物」の基準となります。 取得日から満期日または償還日までの期間が3ヶ月以内の短期投資であり、決算日を起算日にはしません。
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キャッシュ・フロー計算書の 3 つの区分
●営業活動によるキャッシュフロー  企業の本質的な営業活動から得られたキャッシュの増減を表します。営業活動は、商品を仕入れて販売するような活動です。 つまり企業の本業で得たキャッシュを表します。 ●投資活動によるキャッシュフロー  企業が将来成長するために投資したキャッシュの増減を表します。 投資活動は、営業活動で得たキャッシュを元に、設備投資したり、関係会社へ投資したりするような活動です。 固定資産の取得及び売却、現金同等物に含まれない短期投資の取得及び売却によるキャッシュフロー等を記載します。 ●財務活動によるキャッシュフロー  資金の調達・返済によるキャッシュの増減を表します。資金の借入や返済、株主からの資金調達や配当の支払いなどによるキャッシュを記載します。 財務活動は、営業活動や投資活動を支えるために、投資家や金融機関からキャッシュを調達したり、逆に返済するような活動です。 キャッシュフロー計算書での「現金及び現金同等物の増減額」の数値は、貸借対照表の「現金及び預金」の前期と当期の増減額にも等しくなります。 現金及び現金同等物の増加額 =「営業活動によるキャッシュフロー」                +「投資活動によるキャッシュフロー」                +「財務活動によるキャッシュフロー」
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営業活動によるキャッシュ・フローには、2 つの作成法
直接法と間接法 直接法は、直接キャッシュの動きを伴う取引を記録し、これを集計することによって作成します。 間接法では、税引前当期純利益から出発し、キャッシュの動きを表すように調整することにより作成します。
109
間接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の非資金項目は?
減価償却費と貸倒引当金の増加額 非資金項目は、損益計算書の費用のうち、キャッシュの出入りを伴わないものをプラスする手続きです。 ●減価償却費  減価償却費の分だけマイナスされている利益にその分をプラスする必要があります。符号がプラスになることに注意。 ●貸倒引当金  貸倒引当金の増加は、貸借対照表の負債項目の増加にあたり、営業キャッシュ・フローの計算過程においては、キャッシュに対してプラスの影響を与えます。 従って、貸倒引当金が増加している場合に、符号がプラスになります。損益計算書の貸倒引当金繰入額ではなく、貸倒引当金の増加額を記入することに注意。 貸倒引当金の増加額は、当期の貸借対照表の貸倒引当金残高から、前期の貸借対照表の貸倒引当金残高を引くことで計算できます。
110
間接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、営業活動以外の損益の調整項目は?
受取利息及び受取配当金・支払利息・有形固定資産売却益 損益計算書の符号を逆にして記載します。利益がマイナス、費用がプラスとなります。 営業キャッシュ・フローは税引前当期純利益からスタートしているため、有形固定資産売却益の分が税引前当期純利益にすでに含まれています。 よって、一旦、有形固定資産売却益の影響を利益から取り除くために、符号を逆にして調整します。
111
間接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、営業活動で生じる資産と負債に関する調整項目は?
(-)売上債権の増加額、(+)棚卸資産の減少額、(-)仕入債務の減少額の 3 つ 符号は、資産の増加がマイナス、負債の増加がプラスになります。 ●売上債権の増加額  売上債権が増えた分だけマイナスします。 ●棚卸資産の減少額  棚卸資産が減った分だけプラスします。 ●仕入債務の減少額  仕入債務が減った分だけマイナスします。  仕入債務の増加額は、間接法の営業活動によるキャッシュ・フローの区分において、キャッシュ・フローのプラスとして表示されます。  仕入債務は貸し方項目(調達源泉)であり、キャッシュを増加させます。
112
間接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、その他の営業関連の調整の項目は?
営業活動に関連する経過勘定などの調整 具体的には、前払費用、未収収益、前受収益と未払費用という経過勘定と、前受金や前払金のうち、営業活動に関連するものが対象になります。 符号は、資産の増加がマイナス、負債の増加がプラスになります。
113
営業キャッシュ・フローで、小計以降にはどのような項目があるか?
・利息及び配当金の受取額 ・利息の支払額 ・法人税等の支払額
114
利息及び配当金の受取額を計算する式は?
利息及び配当金の受取額 = 受取利息及び受取配当金 + 前受利息↑ - 未収利息↑ ●利息及び配当金の受取額  利息及び配当金の受取額 =受取利息及び受取配当金 + 前受利息増加額 - 未収利息増加額 ●利息の支払額  利息の支払額 = -支払利息 + 未払利息増加額 - 前払利息増加額 ●法人税等の支払額  法人税等の支払額 = -法人税等 + 未払法人税等増加額
115
直接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、小計までの項目には何があるか?
``` 直接法の小計までの項目は、次の4つ ・営業収入 ・原材料又は商品の仕入れによる支出 ・人件費の支出 ・その他の営業支出 ```
116
直接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、営業収入の計算式は?
●営業収入(貸倒のある場合)  営業収入=売上高-売上債権増加額+前受金増加額-当期貸倒高 ●当期貸倒の求め方  当期貸倒高=-貸倒引当金増加額+貸倒引当金繰入額+貸倒損失
117
直接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、「原材料又は商品の仕入れによる支出」の計算式は?
●「原材料又は商品の仕入支出」 |  原材料又は商品の仕入支出=-売上原価-棚卸資産増加額+仕入債務増加額-前払金増加額
118
直接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、「人件費の支出」の計算式は?
●「人件費支出」  人件費支出=-人件費支出項目+未払給料増加高-前払給料増加高 「人件費支出」は名前の通り、人件費の支払いによるキャッシュの流出です。 「人件費支出」は、損益計算書の販管費に含まれる「給料」などの人件費支出項目を元に計算します。 なお、貸借対照表に「未払給料」や「前払給料」がある場合は、増減額を調整します。 未払いの場合は、まだお金を払っていないのでキャッシュはプラスです。 前払いの場合は、費用は計上されているものの、お金を前払いしているので、キャッシュはマイナスになります。
119
直接法で営業キャッシュ・フローを作成した場合の、「その他の営業支出」の計算式は?
その他の営業支出 = -営業費関連項目 + 未払営業費等↑ - 前払営業費等↑ 営業費関連項目は、損益計算書の販売費及び一般管理費から、人件費を除いた営業費に関連する費用
120
投資活動によるキャッシュフローについて
投資活動によるキャッシュフローは、企業が将来成長するために投資したキャッシュの増減を表します。 投資活動は、営業活動で得たキャッシュを元に、設備投資したり、関係会社へ投資したりするような活動です。 ●有価証券  有価証券の取得による支出と、有価証券の売却による収入を記載します。 ●有形固定資産  有形固定資産の取得による支出と、有形固定資産の売却による収入を記載します。 ●投資有価証券  投資有価証券は、投資目的の有価証券になります。投資有価証券の取得による支出と、投資有価証券の売却による収入を記載します。 ●貸付金  資金の貸付による支出と、貸付金の回収による収入を記載します。
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財務活動によるキャッシュ・フローの項目には、どのようなものがあるか?
``` ・短期借入れによる収入、短期借入金の返済による支出 ・長期借入れによる収入、長期借入金の返済による支出 ・社債の発行による収入、社債の償還による支出 ・株式の発行による収入、自己株式の取得による支出 ・配当金の支払額 ``` 財務活動によるキャッシュフローは、資金の調達・返済によるキャッシュの増減を表します。 財務キャッシュフローには、「短期借入金、長期借入金の借入と返済」「社債の発行と償還」「株式の発行」「配当金の支払い」などが含まれます。 投資キャッシュフローと同じように、借入と返済というように、分けて表示する必要があります。 なお、「長期貸付金」は「投資活動によるキャッシュフロー」に関する項目になります ●短期借入金  短期借入金に関する項目には、「短期借入れによる収入」と「短期借入れの返済による支出」があります。 ●長期借入金  長期借入金も短期借入金と同様です。「長期借入れによる収入」と「長期借入れの返済による支出」があります。 株式に関連する項目には「株式の発行による収入」と「自己株式の取得による支出」があります。 配当金の支払額は、キャッシュの流出になるため符号がマイナスになります。 なお、損益計算書上の「受取利息・配当金」は、財務活動によるキャッシュフロー「配当金の支払い額」に影響しません ●「株式の発行による収入」  資本金と資本準備金の増加額を足したものになります。 ●「自己株式の取得による支出」  自己株式を取得する際に支払った金額となります。  貸借対照表の「自己株式」の増加額となります。この場合は、キャッシュがマイナスになります。
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短期借入金の期首残高が 200、期末残高が 100、当期借入が 150 の場合、「短期借入金の返済による支出」はいくらになるか?
△250
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原価の構成
原価を構成する項目には様々なものがあります。原価は大きく「製造原価」と「販売費及び一般管理費」に分類されます。 ●製造原価  製品の製造にかかった原価です。原価計算では、主に製造原価を扱います。 なお製造原価は、製造間接費と製造直接費の合計になります。 ●販売費及び一般管理費  販売活動と管理活動にかかった原価です。 ●総原価  製造原価と販売費及び一般管理費を合計して、総原価と呼びます。  生産活動と販売活動でかかった全ての費用であり、原価を広く捉えたものです。
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製造原価の分類
製造原価は、製品の製造工程で発生する原価です。製造工程では、材料や労働力などをインプットとして投入し、アウトプットとしての製品を生産します。 よって、アウトプットとしての製品の原価は、投入したインプットにかかった原価を集計したものになります。 原価発生の【形態】による分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類になります。 原価要素は、この分類基準によって【材料費、労務費および経費】に属する各費目に分類します。 製品に対する原価発生の【態様】とは、製品との関連における分類にあたり、 原価要素はこの分類基準によって【直接費と間接費】に分類します。 ●費目別の分類  「材料費」は、投入した原材料や部品などの原価です。  「労務費」は、投入した労働力に対する原価です。  「経費」は、材料費、労務費以外で製造にかかった費用です。 ``` ●製造直接費と製造間接費による分類  各種の原価は、特定の製品に関連付けることができる「製造直接費」と、 特定の製品に関連付けることのできない「製造間接費」に分類されます。  「製造直接費」: 特定の製品にいくらかかったかが明確にわかる費用  「製造間接費」: 特定の製品にいくらかかったかが明確ではない費用 ```
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非原価項目
費用であっても原価に算入しない項目を非原価項目と呼びます。 非原価項目は、営業外費用や特別損失などが該当します。 非原価項目には、次のようなものがあります。 ●経営目的に関連しない価値の減少  例:支払利息などの財務費用、投資用の資産や未稼動・休止中の固定資産、有価証券の評価損・売却損、寄付金 など ●異常な状態を原因とする価値の減少  例:異常な仕損・減損・棚卸減耗、火災・震災・風水害・盗難等による損失、臨時多額の退職手当、固定資産の売却損・除却損、異常な貸倒損失 など ●税法上特に認められている損金算入項目  例:価格変動準備金繰入額や、租税特別措置法による償却額のうち通常の償却範囲額を超える額 ●その他の利益剰余金に課する項目  例:法人税・所得税・都道府県民税・市町村民税や、配当金、役員賞与金、任意積立金繰入額、建設利息償却 など
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製造原価報告書
製造原価報告書の上部には、インプットの材料費、労務費、経費が表示されます。 次に、これらのインプットを合計した「当期総製造費用」が計算されます。 そして、一番下に「当期製品製造原価」が表示されます。 「当期総製造費用」は、材料費、労務費、経費を集計したものです。 「当期製品製造原価」は完成した製品に対する原価のことをいいます。
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個別原価計算
個別原価計算は、個別の製品ごとに原価計算をする方法です。 例えば、特注の機械や船舶などを個別の注文ごとに生産する受注生産形態で採用される方法です。 なお、大量生産形態で採用される原価計算の方法は、総合原価計算になります。 個別原価計算では、顧客からの注文ごとに製造指図書を発行します。 原価の集計では、製造直接費については製造指図書に直接賦課します。 また、製造間接費については合理的な配賦基準に従って各製造指図書に配賦します。 ●賦課  かかった費用を直接製品に負担させるということをいいます。 ●配賦  全体の費用を、ある基準で各製造指図書に割り振ることをいいます。
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個別原価計算に関する、当月製品製造原価と月末仕掛品について
製造状況により当月製品製造原価と月末仕掛品に分ける必要があります。 当月に完成したものについては、当月製品製造原価になります。 また当月に未完成のものについては月末仕掛品になります。
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総合原価計算
総合原価計算は、大量生産形態で採用される原価計算の方法です。 総合原価計算では、発生原価を「直接材料費」と「加工費」に分けて行います。 総合原価計算では、1ヶ月単位に発生した原価を集計し、それを生産量で割ることで製品あたりの原価を計算します。 ●加工費 「直接労務費」「直接経費」「製造間接費」が加工費になります。加工費は加工の進捗度に比例して発生します。 加工作業が進めば進むほど増えていきます。 当期投入数量は次の算出式で求められます。 「当期投入数量」=「完成品」+「期末仕掛品」-「期首仕掛品」
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標準原価計算
標準原価計算は、あらかじめ製品の製造にかかる標準的な原価を設定しておき、原価管理を行う方法です。 この標準的な原価を使って算出した標準原価と、実際に発生した実際原価を比較することで、原価差異を計算します。 直接材料費の差異は「数量差異」と「価格差異」に分けて考えます。 ●数量差異  製品1個あたりに要した材料の量が、予定と異なった時に発生する原価差異になります。  数量差異 = 標準単価 ×(標準消費量 - 実際消費量) ●価格差異  材料の購入単価が、予定と異なった際に発生する原価差異になります。  価格差異 = (標準価格 - 実際価格) × 実際消費量
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直接労務費の差異分析
直接労務費の差異は、「時間差異」と「賃率差異」に分けて考えます。 ●時間差異  作業時間による差異になります。製品1個あたりに要した直接作業時間が、予定と異なった場合に発生する原価差異になります。 時間差異=標準賃率×(標準時間-実際時間) ●賃率差異  工員の賃率による差異です。賃率が予定と異なった場合に発生する原価差異になります。 賃率差異 = (標準賃率 - 実際賃率) × 実際時間
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予算差異と操業度差異
予算差異は製造間接費の実際発生額と、実際直接作業時間に許容された製造間接費予算との差異です。 操業度差異とは、実際作業時間が基準操業度に達しないときなどに生じます。 操業度差異が不利差異の場合、実際作業時間が標準操業度差異を下回ったために生じた製造間接費の配賦不足を表しています。 原因は、需要が減少したことによる受注不足、機械の故障などによる生産停止などです。
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能率差異
能率差異は、不能率が発生した等で製造間接費に無駄が生じた場合に発生します。
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直接原価計算
全部原価計算では変動費と固定費を区別せずに、全てを原価とする方法です。 直接原価計算は費用を変動費と固定費に分けて、損益構造を明確にします。 ●変動売上原価  製造原価のうち変動費だけを集計したものです。 ●変動販売費  販売費のうち変動費だけを集計したものです。 ●変動製造マージン  売上高から変動売上原価を引いたものです。 ●限界利益  限界利益は、売上高から変動費(変動製造費、変動販管費)を引いたものです。  売上高 - 変動製造費 - 変動販管費 ●営業利益  営業利益は、限界利益から固定費(固定製造費用、固定販売費)を引いたものです。  営業利益 = 限界利益 - 固定製造費用 - 固定販売費
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直接原価計算に関する限界利益と営業利益
限界利益は、売上高からすべての変動費を引いたものです。営業利益は限界利益から固定費を引くことで求めることができます。固定費には、製造や販売にかかった固定費をすべて含めます。 ●限界利益  限界利益=売上高-変動費  変動費は売上高に比例して発生する費用ですので、限界利益も売上高に比例して増加する収益となります。 ●営業利益  営業利益=限界利益-固定費  固定費は、売上高によらない費用ですので、固定費の額は基本的に一定です。
136
原価の定義
原価計算制度において、原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、財貨または用役(以下「財貨」という。)の消費を把握し、 貨幣価値的に表したものである。原価は、財貨の生産、販売に関して消費された経済価値であり、正常な状態における経営活動を 前提として把握された価値の消費である。 原価は簡単に言えば、特定の製品や活動にかかったお金のことです。 例えば、製品を作るためには、材料を買い、工場で働く人を雇い、設備や電力などを購入することで生産をする必要があります。 また、製品を販売するためには、営業員を雇ったり、広告を出すことで販売する必要があります。 原価はこのような生産活動、販売活動でかかったお金を測定したものです。 財務活動について、原価計算基準では、財貨の生成および消費の過程たる経営過程以外の、 資本の調達、返還、利益処分等の活動であり、したがってこれに関する費用たるいわゆる財務費用は、原則として原価を構成しない、 と記載されています。
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加工費を計算式で表せ。
加工費= 直接労務費+ 直接経費+ 製造間接費 加工費は総合原価計算で出てきますが、直接材料費以外の原価要素です。 原価要素は、という区分と、という区分があり、組み合わせると6 つに分類されます。 そうすると、加工費は、直接労務費、直接経費、間接材料費、間接労務費、間接経費の5 つの原価要素から構成されます。 ここで、間接材料費、間接労務費、間接経費は製造間接費です
138
意思決定に関連する原価、関連しない原価
◆機会原価  資源を他の用途に利用したとしたら得られるであろうと予測される利益のことです。 資源を他の用途に利用したとしたら得られる利益が変われば、意思決定も異なるものとなりますから、 機会原価は将来の意思決定に関連のある原価です。 ◆限界原価  生産量に比例して発生する外部からの購入費用のことで、材料費などの変動費のことです。 将来の生産量が変化すると変動費も変化しますので、限界原価は将来の意思決定に関連のある原価です。 ◆裁量可能原価  企業がコントロールすることができる原価のことです。 企業がコントロールすることができる原価が変われば、意思決定も異なるものとなりますから、 裁量可能原価は将来の意思決定に関連のある原価です。 ◆埋没原価  ひとたび投資してしまうと再び回収することができない原価のことです。 ひとたび投資してしまうと再び回収することができないわけですから、埋没原価は代替案の選択によって 金額に差異が生じないコストであり、将来の意思決定に無関連な原価です。 埋没原価は「無関連原価」と呼ばれることもあり、意思決定会計における重要な概念です。
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経営分析で利用する指標
経営分析で利用する指標には様々なものがありますが、いくつかの種類に分類することができます。それは、収益性分析、安全性分析、生産性分析、成長性分析です。収益性分析では、企業が利益を上げる能力を分析します。安全性分析では、企業の財務的な安定性を分析します。生産性分析では、投入したインプット、つまり経営資源に対するアウトプットの効率を分析します。成長性分析では、企業を時系列で見たときに、どれぐらい成長したかを分析します。 ●収益性分析  企業が利益をあげる能力を分析します。主な経営指標に「総資本利益率亅「総資本経常利益率」「売上高総利益率」などがあります。「総資本経常利益率」は、投下した総資本に対して、経営活動全般で得た利益である経常利益の割合を見るものです。「売上高総利益率」は売上高に対する総利益の割合を見るものです。 ●安全性分析  企業の支払能力や倒産リスクを分析するための代表的な指標に「流動比率」「当座比率」などがあります。安全性分析は、「短期安全性」「長期安全性」「資本構成」の分析があります。「流動比率」「当座比率」はともに「短期安全性」の分析になります。 ●生産性分析  投入したインプット、つまり経営資源に対するアウトプットの効率を分析します。インプットには、人や、設備などが使用されます。アウトプットには、付加価値が使用されます。主な経営指標に「労働生産性」などがあります。「労働生産性」とは従業員一人あたりの付加価値であり、生産性分析では最も重要な指標です。なお「固定長期適合率」は、安全性分析にあたるので、不適切です。 ●成長性分析  企業の売上高や利益、総資産などが一定期間でどれぐらい成長しているかを分析します。主な経営指標に「売上高成長率」「経常利益成長率」「総資本成長率」などがあります。
140
収益性分析に関する資本利益率
資本に対する利益の割合のことを「資本利益率」といいます。資本利益率は、収益性分析の中でも最も基本的な指標となります。 投下した資本に対して、リターンである利益の割合になります。よって資本利益率が高いと収益性が高いことになります。 資本利益率で使用する利益や資本にはいくつか種類があります。 ●資本利益率 投下した資本に対し、どれだけの利益を獲得したかを示す指標です。この式の利益は損益計算書から、資本は貸借対照表から取得します。  資本利益率 = 利益 ÷ 資本 × 100(%) ●事業利益  事業利益は損益計算書に出てくる利益ではなく、計算して求める必要があります。事業利益では支払利息などの資金調達から生じた金融費用が含まれません。  事業利益 = 営業利益 + 受取利息・配当金 + 有価証券利息 ●総資本  総資本は、貸借対照表の貸方を全て合算したものです。総資本は負債と純資産を足しあわせた額になります。  総資本 = 負債 + 純資産  ●経営資本  経営資本は、資産のうち本業で使用されていないものを除いたものです。  経営資本 = 総資産 - 建設仮勘定 - 投資その他の資産 - 繰延資産  ●資本利益率の分解  資本利益率を高めるためには、売上高利益率を高めるか、資本回転率を高める必要があります。  資本利益率 = 利益/資本 = 利益/売上高 × 売上高/資本 = 売上高利益率 × 資本回転率 ●総資本経常利益率  総資本経常利益率=経常利益÷総資本× 100(%) ●総資本事業利益率(ROA)  総資本事業利益率 = 事業利益 ÷ 総資本 × 100(%) ●経営資本営業利益率  経営資本営業利益率 = 営業利益 ÷ 経営資本 × 100(%) ●自己資本利益率(ROE)  自己資本利益率=当期純利益÷自己資本× 100(%)
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事業利益を求める式は
事業利益 = 営業利益 + 受取利息・配当金 + 有価証券利息 つまり、経常利益に比べると、事業利益では支払利息などの資金調達から生じた金融費用が含まれていません。
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総資本事業利益率の式は
総資本事業利益率 = 事業利益 ÷ 総資本 経常利益に比べると、事業利益では支払利息などの資金調達から生じた金融費用が含まれていません。 よって、総資本事業利益率は、より厳密に企業の資金調達によらない収益性を表すことができます。 ちなみに、総資本事業利益率は、米国では ROA(Return On Asset)と呼ばれます。Asset は資産という意味です。
143
経営資本の求め方は
経営資本 = 総資産 - 建設仮勘定 - 投資その他の資産 - 繰延資産 つまり、経営資本は、資産のうち本業で使用されていないものを除いたものです。
144
経営資本営業利益率は
経営資本営業利益率 = 営業利益 ÷ 経営資本 経営資本営業利益率は、経営活動で使用されている資本から、どれぐらいの営業利益を得ているかを表す指標です。 つまり、経営資本は、資産のうち本業で使用されていないものを除いたものです。 営業利益は本業で得た儲けですので、経営資本営業利益率は、本業で使用されている資産から生み出される儲けを表します。
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資本利益率の基本的な式は
資本利益率 = 利益 ÷ 資本 資本に対する利益の割合のことを、「資本利益率」と呼びます。この式の利益は損益計算書から、資本は貸借対照表から取得します。 資本利益率を高めるためには、売上高利益率を高めるか、資本回転率を高める必要があります。 売上高利益率は、売上に対する利益の割合です。資本回転率は、一定期間の間に資本が売上によって何回転するかを表します。 少ない資本で、大きな売上を得られれば資本回転率は大きくなり、この資本利益率が高いほど、収益性が高いということです。
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収益性分析に関する効率性分析
効率性を分析するために「回転率」や「回転期間」を求めます。 「回転率」には、総資産回転率、経営資本回転率、売上債権回転率、棚卸資産回転率、固定資産回転率、有形固定資産回転率などがあります。 これらの指標が高いほど資産を効率的に活用し、売り上げに貢献していると言えます。「回転期間」は、回転率を逆数にして365日を掛けたものです。 これにより、資産が1回転する期間を表すことができます。 ●総資産回転率 総資本回転率は、一定期間に、企業の全ての資産を使って、何倍の売上を上げたかを表します。 総資本回転率が高いほど、資産から効率的に売上を上げたことになります。よって数値が高いほど良好と言えます。  総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産(回) ●経営資本回転率  経営資本回転率=売上高÷経営資本(回) ●売上債権回転率    売上債権回転率=売上高÷売上債権(回) ●売上債権回転期間  売上債権回転期間は、売上債権を回収する期間を表します。よって短い(数値が低い)ほど良好といえます。  売上債権回転期間 = 365(日) ÷ 売上債権回転率 (日) ●棚卸資産回転率  棚卸資産回転率=売上高÷棚卸資産(回) ●棚卸資産回転期間  棚卸資産回転期間は、棚卸資産が企業内に滞留している期間を表します。期間が短いほどよく売れていることを意味します。  よって短い(数値が低い)ほど良好になります。  棚卸資産回転期間 = 365(日) ÷ 棚卸資産回転率 (日) ``` ●有形固定資産回転率  固定資産回転率は、固定資産をどれぐらい有効に活用して売上を上げたかを表します。  固定資産回転率が低い場合は、売上に比べて固定資産が多いということです。よって数値が高いほど良好と言えます。    有形固定資産回転率=売上高÷有形固定資産(回) ``` ●回転期間 回転期間= 資産/売上 × 365日 = 365日/資本回転率(日)
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自己資本比率、負債比率
自己資本と他人資本の構成を分析する「自己資本比率」「負債比率」があります。 自己資本比率は、総資本に対する自己資本の割合です。安全性の観点では、自己資本比率は高いほど望ましいです。 しかし、財務レバレッジの効果を考慮した場合、必ずしも望ましいとはいえません。よって、自己資本比率は適度な水準を維持していることが重要です。 負債比率は、他人資本である負債と自己資本の割合を表します。借入をすれば負債比率は増えるため、安全性という意味では低い方が良い指標です。 ●固定長期適合率  固定負債とは、1年以内に支払い義務が発生しない負債のことであり、会社が抱えている負債のうち、借金の返済に時間的余裕がある負債を指します。 固定負債には社債などの長期金銭債務や、金融機関から長期的に融資を受けている借入金も含まれています。 *決算翌日から起算して1年以内に入金または支払期限を迎える負債は流動負債です。  固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (固定負債 + 自己資本)× 100(%) ●自己資本比率  自己資本比率は業種により差がありますが、高いほど経営が安定していて倒産しにくい。低い場合は、資本金を増やす、つまり増資を行えば達成できます。 とはいえ増資をするということは、それはそれで時間もコストもかかるものです。そこで現実的には、会社が自力で稼いで利益を上げて「利益剰余金」を 増加させていく努力をしなければならないということになります。利益剰余金が増加すれば純資産つまり自己資本が増えますので、自己資本比率も高くなります。  自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本 × 100(%) ●負債比率  負債比率 = 負債 ÷ 自己資本 × 100(%)
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固定負債とは?
1年以内に支払い義務が発生しない負債のことであり、会社が抱えている負債のうち借金の返済に時間的余裕がある負債を指します。
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固定負債に含まれる勘定科目
社債:企業が資金を集めるための手段である「社債」は、固定負債に含まれます。固定負債とは、1年以内に支払い義務が発生しない負債を指します。 長期借入金:長期借入金は、返済期限が1年を超える借入金を指します。この期限が1年を超える場合は長期借入金、1年以内であれば短期借入金として区分します。 預かり保証金:取引や賃貸借契約の際に担保とする保証金や敷金を指します。契約終了を迎えれば原則、全額返還します。        損害等がみられる場合には、一部を差し引いて返還しなくてはなりません。代理店契約の保証金や営業保証金などの預かり金が該当します。 繰延税金負債:繰延税金負債とは、会計上の利益と税務上の所得に差がある場合に調整する税効果会計と呼ばれる手法の1つです。貸借対照表上では負債の部に表示します。
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収益性分析に関する短期安全性と長期安全性
短期安全性では、短期の支払能力を分析します。 ●流動比率  流動比率は、1年以内に返済する必要がある流動負債と、1年以内に現金化される流動資産の比率を表したものです。数値は大きいほど良好です。  流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100(%)       =(現金及び預金 + 受取手形 + 売掛金 + 有価証券 + 棚卸資産)÷(支払手形+買掛金+短期借入金)× 100(%) ●当座比率  当座比率の分子は当座資産となります。当座比率では、流動比率よりもより短期に回収できる当座資産と、流動負債の比率を見るものです。 当座資産は、現金・預金、受取手形、売掛金、有価証券を合計したものです。数値は大きいほど良好です。  当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100(%)       =(現金及び預金 + 受取手形 + 売掛金 + 有価証券)÷(支払手形 + 買掛金 + 短期借入金)× 100(%) ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 長期安全性では、資金調達と運用の妥当性を分析します。 ●固定比率  固定比率は、固定資産と、返済義務のない自己資本の比率を表します。よって、この指標は数値が低くなるほど良好です。  固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100(%) ●固定長期適合率  固定長期適合率は、自己資本だけでなく、固定負債を含めて計算した指標です。数値は低くなるほど良好です。  固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債)× 100(%)  固定長期適合率は、自己資本だけでなく、固定負債を含めて計算します。
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生産性分析の概要
生産性分析では、投入したインプットに対するアウトプットの効率を分析します。インプットには、人や、設備などが使用されます。 アウトプットには、付加価値が使用されます。生産性分析の代表的な指標として、「労働生産性」があります。 労働生産性は、人というインプットに対する付加価値の割合です。労働生産性はさらに「付加価値率」と「従業員1人あたり売上高」に分解して分析されます。 ●付加価値  付加価値=経常利益+人件費+賃借料 + 純金利費用+減価償却費+租税公課 ●労働生産性  労働生産性を高めるためには、付加価値率を増加するか、1人あたりの売上高を増加する必要があります。  労働生産性=付加価値÷従業員数 ●労働生産性の分解  労働生産性=付加価値/従業員数 = 付加価値/売上高 × 売上高/従業員数        =付加価値率 × 従業員1人あたり売上高
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付加価値率
付加価値率は「売上高」に占める「付加価値」の割合です。商品の競争力が高いと付加価値率は高くなります。
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労働生産性の分解
労働生産性は計算式を分解することにより、詳細に分析することができます。「売上高」「有形固定資産」「人件費」などで分解する方法があります。 ●労働生産性を売上高で分解  労働生産性 = 付加価値/従業員数 = 付加価値/売上高 × 売上高/従業員数        = 付加価値率 × 従業員1人あたり売上高 ●労働生産性を「有形固定資産」で分解  労働生産性 = 資本装備率(労働装備率) × 資本生産性(設備生産性)        = 有形固定資産/従業員数 × 付加価値/有形固定資産 ●労働生産性を「人件費」で分解  労働生産性 = 人件費/従業員数 ÷ 人件費/付加価値        = 従業員1人あたり人件費 ÷ 労働分配率
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損益分岐点
損益分岐点とは、利益がちょうど0になる販売量のことを指します。 損益分岐点分析を行うには、費用を変動費と固定費に分解する必要があります。 変動費は売上の増加に比例して増加する費用です。変動費には、材料費、運送費、販売促進費などがあります。 固定費は、売上の増減に関係なく固定的に発生する費用となります。支払家賃、火災保険料、支払利息などがあります。 費用分解には様々な方法があります。代表的な方法に、「勘定科目法」「高低点法」「最小自乗法」があります。 損益分岐点とは、利益がちょうど0になるときの販売量のことをさします。 ●勘定科目法  勘定科目別に変動費と固定費を分類する方法です。例えば、仕入原価や運送費などを変動費とし、 給料や家賃は固定費とするように、勘定科目で費用を分解する方法です。 ●高低点法  高低点法は、過去の実績データのうち、最も高い売上と、最も低い売上のデータをとりだし、 その2つの間の費用の変化から、変動費と固定費を算出します。 ●最小自乗法  過去の実績データから、数学的な方法で固定費と変動費率を求める方法です。
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損益分岐点分析に関する「損益分岐点売上高」「安全余裕率」
「損益分岐点売上高」は、ちょうど利益が0になる売上高です。 つまり「損益分岐点売上高」とは損益分岐点における売上高のことをさします。 また実際の売上が損益分岐点からどれぐらい離れているかを表す指標に「安全余裕率」があります。 売上高の安全性を判断する比率になります。 ●変動費率  変動費率= 変動費/売上高 ●損益分岐点売上高  損益分岐点売上高 = 固定費/1 - 変動費率  分母の「1 - 変動費率」は、売上が 1 増えたときに増加する限界利益の額です。これを限界利益率と呼びます。 ●損益分岐点比率  損益分岐点比率は、実際の売上高に対する、損益分岐点売上高の割合を表すものです。 損益分岐点比率が大きいと、売上が低下したときにすぐに赤字になる可能性があります。 損益分岐点売上高を下げるためには、固定費を削減するか、変動費率を引き下げるか、販売価格を引き上げする必要があります。  損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高 ●安全余裕率  安全余裕率は、実際の売上が損益分岐点よりも大きいほど高い値になります。安全余裕率は、現在の収益の安全性を表す指標と言えます。 安全余裕率が大きい方が、売上が低下しても利益の余裕があり、不況に強いです。 損益分岐点売上高を下げることができれば、同じ売上高であっても安全余裕率を高めることができます。  安全余裕率 = (実際売上高 - 損益分岐点売上高) ÷ 実際売上高× 100        = 1 - 損益分岐点比率 ●利益  利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費 利益 = 売上高 - (変動費率 x 売上高) - 固定費 売上高 = 固定費 + 利益/1 - 変動費率
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損益分岐点分析に関する目標売上高の計算
損益分岐点分析は、現在の分析だけでなく、将来の利益計画に活用することができます。損益分岐点売上高の公式を変形し目標売上高の公式を導き出すことができます。 目標利益は営業利益や経常利益で設定します。 ●目標売上高の計算 ```  目標利益 = 目標売上高 - 変動費 - 固定費       = 目標売上高 ×(1 -変動費率)- 固定費    目標売上高 = 利益 + 固定費 /(1 -変動費率) ---------------------------------------------------------------------------------- ここで、 ``` 固定費 = 営業外費用 ー 営業外収益 + 販管費のうち固定費 変動費 = 売上原価 + 販管費のうち変動費 変動比率 = 変動費 / 売上高 *ただし、問題文の与件による。
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セグメント別損益分析
損益の分析を全社一括で行う方法を見てきましたが、実際には、企業には様々な事業や製品があります。 事業や製品によって損益構造も変わってきますので、事業別や、製品別などのセグメント別に損益分析を行うことで、より意思決定に役立つ情報を得ることができます。 セグメント別の損益分析では、直接原価計算による損益計算書の形式で作成すると、各セグメントの損益構造が明確になります。 一番上は、売上高です。次が変動売上原価となります。 変動売上原価は、売上原価のうち変動費を集計したものです。 売上高から変動売上原価を引いたものが、変動製造マージンです。 変動販売費と変動売上原価を合計すると変動費の総額となります。 売上から変動費を引いたものが限界利益ですので、変動製造マージンから変動販売費を引いたものは、限界利益です。 固定費は、個別固定費と共通固定費に分けられます。個別固定費とは、そのセグメント個別の固定費です。 例えば、事業部別の損益分析の場合は、その事業部に関する人件費などが個別固定費となります。 共通固定費は、セグメントに共通に発生する固定費です。 例えば、事業部別の損益分析の場合は、本社スタッフ部門の人件費などが共通固定費になります。共通固定費は、何らかの基準でセグメントに配賦する場合もあります。 しかし配賦した金額は、実際のセグメントで発生した費用ではありませんので、個別固定費と、共通固定費は区別して扱います。
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貢献利益と営業利益
貢献利益:限界利益から個別固定費を引いた後の利益 営業利益:貢献利益から共通固定費を引いた後の利益
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株主資本・自己資本・純資産の違いとは?
「株主資本」=資本金+資本剰余金+利益剰余金 「自己資本」=株主資本+その他包括利益累計額 「純資産」=自己資本+新株予約権+非支配株主持分 まず株主資本とは、株主の資本を指します。 株主からの出資金や事業運営で得た利益累計額など、会社内部に留保されている利益は、株式会社では株主の資本として扱われます。 そして、「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」「自己株式」の4つを包括したものが株主資本です。 次に自己資本とは、株主資本に「その他包括的利益累計額」を加えたものです。 時価で価値が変動する資産を保有するような場合に、それらの評価額や換算持の差額なども鑑みて計算したものになります。 自己資本は資産の時価評価額が加減されているため、株主資本とは区別されます。ただし、貸借対照表に自己資本という名称は存在しません。 最後に純資産とは、自己資本に「新株予約権」と「非支配株主持分」(連結決算の場合)を加えたものです。 新株予約権は新株を購入する権利であり、現株主の持分とはいえません。また、連結決算をした場合の非支配株主持分も株主の持ち分とは異なります。 このことから、純資産は株主の資本とは違うということになります。
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ROA・ROE等式
ROE = {ROA + (ROA-i) × D ÷ E} × (1 - t) ROE = 税引後当期利益 ÷ 自己資本 ROA = 営業利益 ÷ 総資本 D ÷ E = 負債比率 i = 負債利子率、t = 実効法人税率とします。 この式からは、ROAが有利子負債利子率を超えるのであれば、負債を増やし、負債比率を上昇させることでROEが上昇することを示しています。 ROA・ROE等式から分かるように、ROAの変動に対してROEの変動を大きくさせる要因として最も適切なものは、【負債比率】です。
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インタレスト・カバレッジ・レシオ
企業の借入金等の利息の支払能力を測るための指標が、インタレスト・カバレッジ・レシオです。 営業利益と受取利息・配当金といった年間の事業利益が、支払利息・割引料といった金融費用の何倍であるかを示します。 インタレスト・カバレッジ・レシオ= (営業利益+受取利息・配当金) ÷ 支払利息・割引料 インタレスト・カバレッジ・レシオの単位は、「倍」です。 インタレスト・カバレッジ・レシオの倍率が「1」の場合、受取利息・配当金がないとすると、営業利益と支払利息・割引料が等しいことになります。 この場合、借入金を増額しても、営業利益では借入金の支払利息を払うことができないことになります。そのため、企業の追加の借入の余裕はまったくありません。 インタレスト・カバレッジ・レシオの倍率が「1」を上回っている場合、受取利息・配当金がないとすると、営業利益が支払利息・割引料を上回っていることになります。 この場合、借入金を増額しても、現在の営業利益で借入金の支払利息を払う余裕があるといえます。 インタレスト・カバレッジ・レシオの倍率が「1」を下回っている場合、受取利息・配当金がないとすると、営業利益が支払利息・割引料を下回っていることになります。 この場合、借入金を増額するどころではなく、現在の借入金の利息すら支払いできない状況といえます。
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``` 長期借入金により資金を調達し、その全額を設備投資に使用した場合における次の財務比率への影響は? ・固定比率 ・自己資本比率 ・当座比率 ・流動比率 ```
長期借入金により資金を調達した場合、貸借対照表の貸方の「固定負債」が増加します。 また、その全額を設備投資(新規の生産設備の取得)に使用した場合、貸借対照表の借方の「固定資産」が同額だけ増加します。 ・固定比率  固定比率は、「固定資産 ÷ 自己資本 ×100」で計算することができ、自己資本を超えるだけの固定資産投資をしてないかという点で低い方が良い指標になります。 長期借入金により資金を調達し、その全額を設備投資(新規の生産設備の取得)に使用した場合、「固定資産」が増加しますが、「自己資本」は変わりません。 すると、この計算式で計算される固定比率は上昇します。 ・自己資本比率  自己資本比率は、「自己資本 ÷ 総資本 ×100」で計算することができ、総資本に対する自己資本の割合を示し、適度な水準を維持していることが重要です。 長期借入金により資金を調達し、その全額を設備投資(新規の生産設備の取得)に使用した場合、「自己資本」は変わりませんが、「固定資産」が増加するので 「総資本」は増加します。すると、この計算式で計算される自己資本比率は低下し、悪化します。 ・当座比率  当座比率は、「当座資産 ÷ 流動負債 ×100」で計算することができ、流動負債を賄えるだけの当座資産をもっているかという点で高い方が良い指標です。 長期借入金により資金を調達し、その全額を設備投資(新規の生産設備の取得)に使用した場合、「当座資産」も「流動負債」も変わりません。 すると、この計算式で計算される当座比率は不変です。 ・流動比率  流動比率は、「流動資産 ÷ 流動負債 ×100」で計算することができ、流動負債を賄えるだけの流動資産を持っているかという点で高い方が良い指標です。 長期借入金により資金を調達し、その全額を設備投資(新規の生産設備の取得)に使用した場合、「流動資産」も「流動負債」も変わりません。 すると、この計算式で計算される流動比率は不変です。
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労働生産性とは
労働生産性とは、人というインプットに対する付加価値の割合です。労働生産性は、付加価値生産性や付加価値労働生産性と呼ばれることもあります。 従業員1 人あたり売上高は、売上高を従業員数で割った値です。 付加価値労働生産性=付加価値 ÷ 従業員数 ここで、 付加価値=付加価値率×売上高ですから、 付加価値労働生産性=付加価値率×従業員1 人当たり売上高で求められます。
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現在価値の計算方法
現在価値 = 将来の資金 x (1 / 1 + 割引率) 将来の資金を C、割引率を r、年数を n とすると、n 年後の現在価値は、 現在価値(PV: Present Value)= C x 1 / (1 + r) ^n
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年金現価係数
1 年後から ●年後の複利現価係数を足したもの。 毎年同じ収入がある場合は、年金現価係数で計算すると簡単です。 例えば、100 万円を 4 年間に渡って毎年得られる収入案件の現在価値は、4 年後の年金現価係数が 3.55 ですので、約 355 万円となります。
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フリーキャッシュ・フロー(FCF)
事業活動によって得た資金から、投資した資金を引いたものになります。つまり、投資分を除いた純粋な収入です。 フリーキャッシュ・フローには、資金調達や返済によるキャッシュ・フローは含まれず、純粋に事業から生み出されたキャッシュを表します。 フリーキャッシュフローは、事業活動によって得た資金から、投資した資金を引いたものになります。つまり、投資分を除いた純粋な収入を表します。 キャッシュ・フロー計算書を基にした計算では、投資活動によるキャッシュ・フローは、投資をした場合に符号がマイナスになりますので、注意しましょう。 FCF = 営業利益 x (1-実効税率) + 減価償却費 - 運転資本増価額 - 投資額 ここで、式の前半の「営業利益 x (1-実効税率)」は、営業利益から法人税を引いた額、つまり税引後営業利益を計算しています。 なぜ、営業利益を使うのかというと、経常利益などを使うと金利費用の支払いなどの財務活動が含まれてしまうからです。 フリーキャッシュ・フローは、財務活動によるキャッシュ・フローは除きますので、このような式になります。 次の、減価償却費は、キャッシュ・フロー計算書の講座で学習したように、資金の支払を伴わない費用ですので、 利益に足し戻してキャッシュの動きを表すように修正します。 次の、運転資本の増加額では、運転資本の増加分をマイナスします。運転資本の式は、 運転資本 = 売上債権 + 棚卸資産 - 買入債務 最後の投資額は、投資した資金の額です。投資額をマイナスすることにより、純粋に投資から生み出されたキャッシュを表します。 なお、 FCF = 営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー したがって、 営業活動によるキャッシュ・フロー = 営業利益 x(1-実効税率) + 減価償却費 - 運転資本増価額
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運転資本と正味運転資本
正味運転資本は、流動資産の合計から流動負債の合計を引いたものです。 運転資本と正味運転資本の違いとして、正味運転資本では、現金・預金や短期貸付金、前払費用・未収収益などの資産が含まれます。 また、短期借入金や前受収益・未払費用などの負債が含まれます。
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投資の評価方法
●貨幣の時間的価値を考慮する方法 ・正味現在価値法(NPV法:Net Present Value Method)  投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引き、そこから投資額を控除した正味現在価値を求めて投資案を評価する方法。 投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いているので、正味現在価値法は貨幣の時間的価値を考慮する方法です。 正味現在価値がプラスであり、かつ大きいほど、投資案の投資効率がよいと判断されます。 NPV = FCF0 + FCF1 / (1 + r) + FCF2 / (1 + r) ^2 + ... + FCFn/ (1 + r) ^n r は割引率、FCFn は n 年目のフリーキャッシュ・フローを表します。 フリーキャッシュ・フローは、投資の回収による収入だけでなく投資として支出した額を含めて計算します。 入ってくるキャッシュ・フローのことをキャッシュ・インフロー(CIF)と呼びます。流出するキャッシュ・フローをキャッシュ・アウトフロー(COF)と呼びます。 ・内部収益率法(IRR法:Internal Rate of Return Method、内部利益率法)  投資額と投資によって将来得られるキャッシュ・フローの現在価値が一致する割引率を求めて投資案を評価する方法。 投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いているので、内部収益率法は貨幣の時間的価値を考慮する方法です。 また、割引率が高いほど、投資案の投資効率がよいと判断されます。 NPV = CIF1 / (1 + r) + CIF2 / (1 + r) ^2 + ・・・ + CIFn / (1 + r) ^n - 投資額 目標とする収益率(資本コスト)と内部収益率を比較することで投資を判断します。 内部収益率法では、資本の調達コストである資本コストと内部収益率を比較し、内部収益率が資本コストを上回れば投資を行うことになります。 【問題点】  ●計算が複雑である  ●解が一意に決まらない場合がある  ●規模が反映されない.IRRはNPVと異なり、投資のリターンの大きさが反映されない.   例えば、同じ内部収益率であっても、100 万円の現在価値の案件と、1 億円の現在価値の案件があった場合、正味現在価値法では後者を選択します。   しかし、内部収益率法では規模の大きさを判断できません。正味現在価値法では額を問題としていますが、内部収益率法では、収益率(割引率)は   内部収益率法の計算式の中で決定され、率を問題としているため、投資案の額を問題にしている正味現在価値法と異なる結論を導くことがあります。 ●貨幣の時間的価値を考慮しない方法 ・回収期間法  投資額の回収にどれくらいの期間がかかるかを求めて投資案を評価する方法。 投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いていないので、回収期間法は貨幣の時間的価値を考慮しない方法です。 また、回収期間の短い案ほど、投資案の安全性が高いと判断されます。回収期間法は貨幣の時間的価値を無視していますが、 安全性を重視することは資金繰りの観点からも重要であり、計算も簡単なので、実務では多くの中小企業が採用しています。 回収期間 = 投資額 / キャッシュフロー 回収期間に端数がある場合は、n年後の時点で回収できていない残りの金額 と、n+1年後のキャッシュ・フローの 金額の比率を取って端数を計算します。 目標とする回収期間と比較することで投資を判断します。回収期間法では、目標とする回収期間と回収期間を比較し、回収期間が目標とする回収期間を下回れば 投資を行うことになります。 【問題点】  ●貨幣の時間的価値を考慮していない  ●目標となる回収期間の設定に客観性がない  ●投資を回収した後のキャッシュ・フローを考慮していない   例えば、正味現在価値が小さくても早く回収できる案件と、正味現在価値は大きいが回収期   間が長い案件では、早く回収できる案件が選択されてしまいます。これは、より有利な投資案が却下される可能性があるということです。 ・会計的投資利益率法  投資額に対する会計的な利益の割合を求めて投資案を評価する方法のことをいいます。 投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いていないので、会計的投資利益率法は貨幣の時間的価値を考慮しない方法です。 会計的投資利益率が高いほど、投資案の収益性が高いと判断されます。 投資利益率 = 会計上の平均利益 / 平均投資額 分子の平均利益は、複数の年度にまたがる場合は、複数の年度の税引後利益を平均したものになります。  会計上の平均利益 = 対象期間中の会計上の利益の平均値 分母の平均投資額は、投資した資産の平均値を採ります。  平均投資額 = 残存価値の平均 = (購入したときの簿価+残存価値)÷ 2 目標とする投資利益率と比較することで投資を判断します。会計的投資利益率法では、目標とする投資利益率と会計的投資利益率を比較し、 会計的投資利益率が目標とする投資利益率を上回れば投資を行うことになります。 【問題点】  ●貨幣の時間的価値を考慮していない  ●目標となる会計的利益率の設定に客観性がない  ●キャッシュインフローを考慮していない
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現価係数と年金現価係数との関係
年金現価係数は現価係数の累計ですので、現価係数と年金現価係数との関係は、次のようになります。 n年の複利現価係数 = n年の年金現価係数 - (n - 1)年の年金現価係数
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正味現在価値法(NPV法:Net Present Value Method)
●正味現在価値法(NPV法:Net Present Value Method)  投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引き、そこから投資額を控除した正味現在価値を求めて投資案を評価する方法。  ⇒正味現在価値がプラスであり、かつ大きいほど、投資案の投資効率がよいと判断される  〈数 式〉現在価値をPV、投資額をIとすると、正味現在価値NPVは次のように計算されます。  NPV = PV - I 投資による収入がキャッシュ・フローで与えられた場合は、NPVの計算にはキャッシュ・フローをそのまま使います。 もし、投資による収入が会計上の利益で与えられた場合は、フリーキャッシュフローを計算する必要がある点に注意。
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資本市場において、投資家が企業に投資を行う方法
●社債の購入 ●株式の購入 ⇒社債の方が、株式よりもリスクが少ない  社債は、株式に比べて、リスクが小さいものとなります。社債は利回りが投資する時点で確定されています。 実際に、社債に明記されています。これに対し、株式は株式市場で株価が決まるため、利回りは確定していません。 よって、社債の方が、株式よりもリスクが少なくなります。社債や借入金などの負債は、基本的に会社が倒産しない限りは、 確実に金利分を上乗せした額がリターンとして期待できます。これに対して、株式の配当は、負債の金利の支払いと 税金の支払いが終わった後の税引後利益に基づいて行われます。そのため、企業の業績が悪くなれば配当も少なくなる可能性があります。 また、株式の売却益についても、株価の変動は大きいためリスクが高いといえます。 企業にとっての資金調達→投資家にとっての投資 企業の資金調達のコストである資本コスト→投資家にとっては投資に対するリターン
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資本市場において、投資家が企業に投資を行う方法
●社債の購入 ●株式の購入 ⇒社債の方が、株式よりもリスクが少ない  社債は、株式に比べて、リスクが小さいものとなります。社債は利回りが投資する時点で確定されています。 実際に、社債に明記されています。これに対し、株式は株式市場で株価が決まるため、利回りは確定していません。 よって、社債の方が、株式よりもリスクが少なくなります。社債や借入金などの負債は、基本的に会社が倒産しない限りは、 確実に金利分を上乗せした額がリターンとして期待できます。これに対して、株式の配当は、負債の金利の支払いと 税金の支払いが終わった後の税引後利益に基づいて行われます。そのため、企業の業績が悪くなれば配当も少なくなる可能性があります。 また、株式の売却益についても、株価の変動は大きいためリスクが高いといえます。 企業にとっての資金調達→投資家にとっての投資 企業の資金調達のコストである資本コスト→投資家にとっては投資に対するリターン
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ポートフォリオ理論におけるリスク
ポートフォリオ理論におけるリスクとは、不確実性のことです。 リスクは、言い換えれば、リターンのばらつきであると表現することができます。リスクの種類には、次のものがあります。 ``` ●システマティック・リスク(市場に連動するリスク) ●信用リスク(利子や元本を返済できなくなるリスク) ●流動性リスク(金融資産を市場で換金できないリスク) ●金利リスク(金利変動によるリスク) ●価格変動リスク(金融商品の価格変動によるリスク) ●為替リスク(為替相場の変動によるリスク) ●カントリー・リスク(その国の政治や経済などに連動するリスク) ``` 安全資産とは、国債などのリスクが無い資産のことです。 国債は、景気の変動によってリターンが変わりませんので、リスクが無い資産、つまりリスクフリー資産であると考えられます。 このように、国債などの安全資産は、あくまでリスクが無い資産であって、期待収益率(リターン)がゼロというわけではありません。 国債に投資すると、いくらかの期待収益が得られます。 収益率が完全な正の相関を有する場合、相関係数は1となります。 相関係数が1のとき、2つの株式はまったく同じ方向に動きます。 そのため、相関係数が1のときは、ポートフォリオのリスク低減効果は無くなります。 このように、収益率が完全な正の相関を有する2つの株式へ分散投資しても、リスク分散効果は得られません。 同一企業の社債と株式への投資を比較すると、リスクが高いのは株式への投資です。社債への投資ではありません。 なぜなら、社債については、基本的に会社が倒産しない限りは、確実に金利分を上乗せした額がリターンとして期待できるからです。 これに対して、株式の配当は、負債の金利の支払いと税金の支払いが終わった後の税引後利益を基にして行われます。 そのため、企業の業績が悪くなれば配当も少なくなる可能性があります。 株式への投資は、リターンが変動する可能性があるので、リスクが高くなります。 限りなく銘柄数を増やしていっても、リスクをゼロに近づけることはできますが、ゼロにはなりません。
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リスクに対する投資家の選好
リスクに対する投資家の選好は、次の3つに分類されます。 一般に、ファイナンスでは、リスク回避者の行動を想定しています。 ●リスク回避者  同一のリターンならば、リスクのより小さいものを選好する投資家 ●リスク中立者  リスクと無関係に、より高いリターンを選好する投資家 ●リスク愛好者  同一のリターンならば、リスクのより大きいものを選好する投資家
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ポートフォリオのリスク低減効果
ポートフォリオとは、様々な投資を組み合わせたもののことをいいます。 2つの株式XとYについてポートフォリオを組む際の、ポートフォリオの期待収益率は、次のように計算されます。  ポートフォリオの期待収益率 = [株式Xの期待収益率] × [株式Xの組み入れ比率] + [株式Yの期待収益率] × [株式Yの組み入れ比率]  個別の証券に集中して投資するリスクよりも、資産が分散化されたポートフォリオのほうがリスクは小さくなることを、 ポートフォリオのリスク低減効果(分散投資によるリスク低減効果)といいます。 一般に、個別の証券に集中して投資するリスクよりも、資産が分散化されたポートフォリオのほうがリスクは小さくなります。 H.マコービッツは、リターンとリスクを分布の平均と分散の統計量として具体的に示し、最適なポートフォリオの選択方法を提示しました。 ポートフォリオを組むことによってリスクの分散が可能になることから、最適なポートフォリオの選択方法を提示した理論のことを、 ポートフォリオ選択理論といいます。
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相関係数とリスクでポートフォリオのリスク低減効果を説明すると
●共分散  資本市場では、2つの株式がどれぐらい一緒に動くかを表す  共分散がプラス → 2つの株式は景気の動向に対して同じ方向に動く  共分散がマイナス → 2つの株式は景気の動向に対して逆の方向に動く 〈数 式〉共分散 = Σ (Xの偏差 × Yの偏差 × 確率)  ※ 偏差 = 値 - 期待値 ●相関係数  資本市場では、2つの株式の関係の強さを表す  相関係数 = -1のとき:2つの証券の動きはまったく反対の方向に動く  →リスクを最大限に低減することができる  相関係数 = 0のとき:2つの証券の動きには何の関係もない  →リスクの低減をすることができる  相関係数 = 1のとき:2つの証券の動きはまったく同じ方向に動く  →リスクの低減をすることができない 〈数 式〉  相関係数= 共分散 / Xの標準編差 × Yの標準偏差 似たような動きをする株でポートフォリオを組むよりも、逆の動きをするような株でポートフォリオを組んだ方が、 ポートフォリオのリスク低減効果が高いです。
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ポートフォリオを組むことで分散化できるリスクと分散化できないリスク
分散化できるリスクをアンシステマティック・リスク、分散化できないリスクをシステマティック・リスクといい、 | システマティック・リスクは市場全体のリスクを意味しています。分散化によってリスクが低減される効果をポートフォリオ効果といいます。一般に、組込銘柄数が20程度になると、ほぼ、市場ポートフォリオと同様のリスク水準となるといわれています。
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証券市場線(Security Market Line、SML)
証券市場線(Security Market Line、SML) とは、横軸にベータ、縦軸に期待リターンをとったときに、 CAPMにおけるベータと期待リターンの関係を表した直線です。 証券市場線は、ベータの一次関数で表され、切片は安全利子率であり、傾きは市場ポートフォリオのリスクプレミアムです。
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効率的フロンティア
●効率的フロンティア  特定のリスクの大きさに対して、最高のリターンをあげることが期待されるポートフォリオ  または  期待される利益の一定の大きさに対して最もリスクの低いポートフォリオ 合理的な投資家は必ず効率的フロンティアの上にある点を選ぶ。 ローリスク・ローリターンを好む投資家は、標準偏差の低く期待収益率が低い、 効率的フロンティアの左側の線上のポートフォリオを選びます。 ハイリスク・ハイリターンを好む投資家は、標準偏差が高く期待収益率の高い、 効率的フロンティアの右側の線上のポートフォリオを選びます。
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リスクフリー資産
国債は、景気の変動によってリターンが変わりませんので、リスクがない資産、つまりリスクフリー資産であると考えられます。 国債だけを単独に購入した場合は、図の縦軸切片(直線が縦軸を切り取る値)で表されます。 国債を購入する比率が低くなるほど、標準偏差で示されるリスクは大きくなります。 株式Xを全く購入しない状態から、株式Xを購入する比率を増やしていくと、 期待収益率と標準偏差の関係は、株式Xが100%の点まで引かれた右上がりの直線となります。 リスクフリー資産をポートフォリオに入れると、投資家の選択の幅が広がります。 リスクを嫌う投資家は、株式だけのポートフォリオよりも、よりリスクの低いポートフォリオを選択できるようになります。
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資本市場線と効率的フロンティアの接点
●資本市場線  リスクフリー資産である国債と、任意の株式を自由に組み合わせた場合におけるリターンとリスクの分布を示した場合の直線のうち、 最大限に上に位置するもの。資本市場線とは、資本市場において、リスクフリー資産だけを購入した場合を示すものではありません。 ●効率的フロンティア  特定のリスクの大きさに対して、最高のリターンをあげることが期待されるポートフォリオ、 または、期待される利益の一定の大きさに対して最もリスクの低いポートフォリオ ●市場ポートフォリオ  資本市場線と効率的フロンティアの接点で表される
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資本資産評価モデル(CAPM:Capital Asset Pricing Model)
投資資本(証券)の期待収益率は、リスクフリーレートとリスクプレミアムを加えたものになるというモデル 〈数 式〉 個別株式の期待収益率 = リスクフリーレート + β × 市場リスクプレミアム ※ 市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート  市場ポートフォリオの期待収益率とは、期待市場収益率と同義。リスクフリーレートは、安全利子率と同義。 ※ β:市場ポートフォリオと比べたときの、個別株式のリスクの大きさ     βが0以上1未満のとき、「β × 市場リスクプレミアム」(リスクプレミアム)は正の値になります。  そのため、βが0以上1未満である証券の期待収益率は、無リスク資産の利子率よりも高くなります。     βが0のとき、「β × 市場リスクプレミアム」(リスクプレミアム)はゼロになります。  そのため、βがゼロである証券の期待収益率は無リスク資産の利子率と等しくなります。  均衡状態においてもリスクはゼロとはならず、市場ポートフォリオのリスクは存在するため、  すべての投資家が、危険資産として市場ポートフォリオを所有することになります。
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加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital)
``` 負債から生じるコストと資本から生じるコストを加重平均したもののことをいいます。 構成比率は、帳簿価額ではなく、時価を用います。 〈数 式〉 WACC= 負債 / (負債+資本) ×(1-実効税率)× 負債利子率    + 資本 / (負債+資本) × 資本コスト ```
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資金調達方法
内部金融とは、自己金融ともいわれ、企業の内部で資金の調達を行うことです。留保利益と減価償却費が内部金融に該当します。 企業外部から資金調達を行うものは、外部金融です。企業間信用、借入金融、証券金融が外部金融に該当します。 直接金融とは、金融仲介機関を経由せず、借り手が金融市場から直接資金を調達することです。 証券金融(社債発行、株式発行)が直接金融に該当します。 ある企業の増資に応じて、個人投資家が証券会社を通して株式を取得したときというのは、その企業にとっては直接金融となります。 銀行が株式の発行を行った場合も、その銀行にとっては直接金融となります。 間接金融とは、金融市場を経由せずに、貸し手と借り手の間を金融仲介機関(銀行、信用金庫、保険会社など)が仲介し、 金融仲介機関を経由して、間接的に資金を融通することをいいます。 金融市場を経由するものが直接金融、金融市場を経由しないものが間接金融です。 金融庁の「貯蓄から投資へ」というスローガンは、経済発展を支える投資資金が円滑に供給されるよう金融市場の構造改革を進め、 社債発行や株式発行による直接金融がしやすいようにしようとするものです。この「貯蓄から投資へ」の流れは、個人のお金を 預貯金に眠らせたままにしておくのではなく、元手として活用して資産形成 する方向に導くというものですので、間接金融の 割合を減らし、直接金融の割合を増やすことを目指しているものです。
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ファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース取引とは、リース会社が、借り手が選択した設備などのリース物件を購入し、借り手に貸与するリース取引の一種です。 ファイナンス・リース取引には、次のような特徴があります。 ●ノンキャンセラブル  借り手はリース期間中に途中解約できません。 ●フルペイアウト  リース物件の維持管理費などの使用コストを負担し、リース料をリース会社に支払う必要があります。 貸し手のことをレッサー、借り手のことをレッシーといます。 ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理をします。 したがって、リース物件は、借り手の貸借対照表で開示され、リース物件の減価償却費は借り手の損益計算書に計上されます。 ファイナンス・リース取引は、長期借入して設備を購入した場合と同様の効果があるため、資金調達の性格が強いです。
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効率的市場仮説
不特定多数の投資家で構成される株式市場においては、株価には情報が迅速かつ正確に反映されていて 効率的な価格形成が達成されているとするのが効率的市場仮説です。よって、情報が即座に価格に織り込まれていることを通じて、 市場では効率的な価格形成が達成されているとするのが、「効率的市場仮説」です。 効率的市場仮説は、株価に反映される情報のレベルにより以下の3種類に分類されます。 ・ウィーク・フォームの効率的市場仮説  現在の株価には過去の株価データの全てが迅速かつ正確に反映されているため、過去の株価や出来高といった取引実績に関する変動推移などの情報を分析しても将来の株価を予想することはできないとする仮説のことです。つまり、チャート分析などテクニカル分析の有効性が否定されています。 ・セミストロング・フォームの効率的市場仮説  現在の株価には過去の株価データの全てが反映されているだけでなく、企業が公開している情報の全てが迅速かつ正確に反映されているため、ディスクロージャー制度によって企業が公開している財務諸表などの情報を分析しても将来の株価を予想することはできないとする仮説のことをいいます。つまり、ファンダメンタル分析の有効性が否定されています。 ・ストロング・フォームの効率的市場仮説  公開されている情報だけでなく、一部の投資家だけ利用できる情報も迅速かつ正確に反映されているとするものです。インサイダー情報を利用しても将来の株価を予測することはできないとするものです。  なお、ランダムウォーク理論についても効率的市場仮説と関連するためおさえておきましょう。 ・ランダムウォーク理論  株価が上昇するか下落するかは五分五分の可能性なので、株価の将来の値動きを予測することは不可能であるとするものです。
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ファイナンス・リース取引の借手側の会計処理および開示
所有権移転ファイナンス・リースの減価償却費は、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定します。 つまり、経済的使用可能予想期間(経済的耐用年数)をもとに償却します。 リース債務の開示については、貸借対照表日後1年以内に支払期限が到来するものは流動負債の区分に表示し、 貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものは固定負債の区分に表示します。 所有権移転ファイナンス・リース取引では、リース取引開始日に、リース物件とこれに係る債務を 「リース資産(または「機械・装置」等各固定資産勘定)」「リース債務」としてそれぞれ資産・負債に計上します。 リース資産については、減価償却されますので、有形固定資産もしくは無形固定資産に計上されます。 ``` 「リース資産」「リース債務」の計上額は所有権移転ファイナンス・リースの場合、以下の方法によります。 1.借手においてリース物件の貸手の購入価額等が明らかな場合は、貸手の購入価額等 2.貸手の購入価額等が明らかでない場合は、次のうちいずれか低い価額  ・ リース料総額の割引現在価値  ・ 借手の見積現金購入価額 ```
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ゼロ成長モデル
企業価値は、企業全体の価値を金額で表したものです。 企業価値の評価方法の一つに、DCF法があります。 ●DCF法(Discount Cash Flow Method)  企業が将来生み出すキャッシュフローを、現在価値に割引いて、企業価値を計算する ●ゼロ成長モデル(将来のフリーキャッシュフローが毎年同じ場合のモデル) 〈数 式〉  企業価値= FCF / r  FCF:将来のフリーキャッシュフロー  r:資本コスト
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定率成長モデル
●定率成長モデル(将来のフリーキャッシュフローが一定率で成長する場合のモデル) 〈数 式〉 企業価値= FCF / (r-g) (r > g)  FCF:第1期のフリーキャッシュフロー  r:資本コスト  g:フリーキャッシュフローの成長率 定率成長モデルは、ゴードンの成長モデルと呼ばれることもあります。 この計算式において、資本コストがフリーキャッシュフローの成長率を上回っていることが必要となります。
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収益還元法
●収益還元法  会計上の利益から企業価値を求める 〈数 式〉 企業価値= 予想税引後利益 / 資本還元率 DCF法のゼロ成長モデル(毎年のキャッシュフローが一定の場合)の式とよく似ていますが、 収益還元法では、フリーキャッシュフローの代わりに税引後利益を用いている点に注意。
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配当還元法
●配当還元法  毎期の配当から企業価値を求める 〈数 式〉 株主価値= 配当額 / 資本還元率 企業価値=株主価値+負債価値  DCF法、収益還元法、配当還元法は、いずれも将来獲得されるリターンを現在価値に割引いて評価するものです。 将来獲得されるリターンが、それぞれ、キャッシュインフロー、利益、配当といった違いはありますが、 DCF法、収益還元法、配当還元法は、いずれもインカム・アプローチによる評価方法です。
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簿価純資産法・時価純資産法
●簿価純資産法  資産(簿価)から負債(簿価)を控除したものを株主価値とする 〈数 式〉株主価値 = 資産(簿価) - 負債(簿価) ●時価純資産法  資産(時価)から負債(時価)を控除したものを株主価値とする 〈数 式〉株主価値 = 資産(時価) - 負債(時価) 簿価純資産法、時価純資産法は、いずれも企業の所有する資産および負債の価値を個別評価し、 その合計をもって企業の価値を評価します。このような評価をするものを、コスト・アプローチといいます。 企業価値を算定する方法には、インカム・アプローチ、コスト・アプローチの他に、マーケット・アプローチがあります。 マーケット・アプローチとは、企業自身もしくは同業他社の株式市場での評価を利用して、企業の価値を評価する方法です。
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M&Aの手法
M&Aの手法には、次のようなものがあります。 ●LBO(Leveraged Buy Out)  LBO(レバレッジドバイアウト)は、買収される企業の資産や将来性を担保に、 資金を金融機関から借り入れて、その資金で買収するものです。 ●MBO(Management Buy Out)  MBO(マネジメントバイアウト)は、現在の経営陣が、自社や事業を買収することです。 ●EBO(Employee Buy Out)  従業員が資金を出し合って、経営権の取得等を行うのものが、EBO(エンプロイーバイアウト)です。 ●TOB(Take Over Bid)  TOB(テイクオーバービット)は、株式公開買い付けのことです。 TOBでは、ある企業を買収したい場合には、株価と期間を表明して、不特定多数の株主から証券取引所を通さずに直接株式を買い付けます。 これにより、短期間で大量の株式を取得することができます。
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MM理論
負債を利用することによる資本構成の変化が、加重平均資本コストや企業価値にどのような影響を与えるかについて、 法人税がない完全資本市場を仮定して最適資本構成を研究したモデルのことを、「MM理論」といいます。 〈結 論〉 法人税が存在しない完全資本市場では、企業価値はその資本構成に依存しない。最適資本構成は存在しない。 加重平均資本コスト(WACC)は一定である。 完全資本市場においては、企業の価値は、借入(負債)で資金調達するか 株式(自己資本)で資金調達するかといった資本の調達方法によらず、企業が将来生み出すキャッシュ(資産)によって決まります。 法人税が存在する現実においては、企業価値は資本構成に依存することになり、 最適資本構成が存在し、加重平均コストの最小値が存在することに注意。
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MM理論において、加重平均資本コストが一定になるとはどのようなカラクリか。
負債コストは不確実性がないため、資本コストよりも低くなります。 すると、負債が増えるに従って加重平均コストは引き下げられることになります。 しかし一方で、財務レバレッジ効果が働き、負債が増えるに従って株主資本コストも上昇します。 財務レバレッジ効果とは、負債の増加により株主のリスクとリターンが高まる効果のことです。 すると、負債の増加に従って加重平均コストが引き下げられる効果と、株主資本コストが上昇する効果が打ち消し合って、 法人税が存在しない完全資本市場では、加重平均資本コストは一定になります。
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最適資本構成
法人税が存在する現実では、企業価値はその資本構成に依存します。 すなわち、企業価値が最大になる最適資本構成が存在します。 法人税を考慮すると、借入(負債)で調達した場合には、支払利息が発生します。 支払利息の損金算入によって法人税が軽減されるため節税効果が働きます。 そのため、実質的な負債コストは低下することになり、加重平均コストは低下します。 負債を利用すればするほど、加重平均資本コストは低下することになります。 しかし、実際には負債比率が高まれば倒産などの財務リスクが高くなります。 財務リスクが高くなると、負債の調達金利が高くなるため、加重平均資本コストが増加します。 つまり、負債比率が0から次第に高くなるにつれ、節税効果により、加重平均資本コストは低下し、 企業価値は増加していきますが、さらに負債比率が高くなると倒産などの財務リスクによる効果が働き、 加重平均資本コストは上昇し、企業価値が下がっていくと考えられます。 この負債比率のときが最適資本構成となります。
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理論株価
理論株価は、次の式で計算されます。 理論株価 = 株主価値 ÷ 発行済株式数 成長する企業の方が、成長しない企業よりも理論株価が高くなります。
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株価収益率
●株価収益率(PER:Price Earning Ratio)  株価が1株あたり当期純利益の何倍になっているかを表す 〈数 式〉PER = 株価 ÷ 1株あたり当期純利益 ●1株あたり当期純利益(EPS:Earning Per Share) 〈数 式〉EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数 純利益に比べて株価が安い株は、割安と考えられます。逆に、純利益に比べて株価が高い株は、割高と考えられます。 このように、株主から見た場合は、PERが低い株が買得ということになります。
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PBR(株価純資産倍率)
●株価純資産倍率(PBR:Price Book - value Ratio)  1株あたり純資産額の何倍で株式が売買されているかを表す 〈数 式〉PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産額 ●1株あたり純資産額(BPS:Book - value Per Share) 〈数 式〉BPS = 純資産額 ÷ 発行済株式数  PBRは1を基準として、1よりも高いほど割高と判断できる点に注意。
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配当利回り
配当関連の指標には、次のものがあります。 ●配当利回り 〈数 式〉配当利回り = 1株あたり配当 ÷ 株価 ●1株あたり配当 〈数 式〉1株あたり配当 = 配当総額 ÷ 発行済株式数 ●配当性向  利益のうち配当する割合 〈数 式〉配当性向 = 配当総額 ÷ 当期純利益 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 株価純資産倍率(PBR)=株価 ÷ 1株あたり純資産額 =(株価 × 発行済株式数)÷(1株あたり純資産額 × 発行済株式数)           = 株式時価総額 / 純資産額 配当性向= 配当総額 / 当期純利益 配当利回り=1株あたり配当 ÷ 株価      =(配当総額 ÷ 発行済株式数)÷ 株価      = 配当総額 / 株価×発行済株式数      = 配当総額 / 株式時価総額 自己資本利益率(ROE)= 当期純利益 / 純資産額            = 株式時価総額 / 純資産額 × 配当総額 / 株式時価総額 ÷ 配当総額 / 当期純利益            = 株価純資産倍率(PBR)× 配当利回り ÷ 配当性向
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為替予約
``` ●為替予約  為替予約は、為替相場の変動リスクを回避するためのものです。 為替予約では、将来の為替相場をあらかじめ決定しておくことでリスクを回避します。 為替予約をすると早く損益を確定でき、為替変動リスクを回避できます。 為替予約の損益図において、当事者同士のグラフは対称形になっていることに注目。 ```
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先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)
先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)は、所定の原資産を将来の一定時点に所定の価格で売買する契約 という意味では同じです。 ●先渡取引(フォワード)  先渡取引とは、将来のある特定の日に、特定の原資産を、当事者間で合意した価格で売買することを現時点で約定する取引で、 取引単位、受渡日について当事者間で自由に決定することができるオーダー・メイドの取引です。 ●先物取引(フューチャー)  先物取引は、取引の当事者が、将来のある特定の日に、特定の原資産を現時点で約定した価格で売買する取引で、 価格・数量・受渡し決済日が決まっているレディー・メイドの取引です。 ```       先渡取引(フォワード)  先物取引(フューチャー) 取引方法 店頭取引(相対取引)    取引所取引 取引単位   自由          標準化 反対売買 期日に契約の決済   期日前に反対売買をして取引解消が多い 信用リスク   ある         基本的にはない 証拠金     不要            必要 ```
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オプション取引
オプションとは、決められた期間内にあらかじめ決められた価格で取引する権利のことです。 ●プット・オプション:売る権利のこと ●コール・オプション:買う権利のこと ``` オプション取引とは、そのオプションを取引する(売り買いする)ものです。 〈オプションの取引の4種類〉 ●プット・オプションを買う ●プット・オプションを売る ●コール・オプションを買う ●コール・オプションを売る ``` 〈権利の行使期間〉 ●ヨーロピアンタイプ:満期日のみ権利を行使できる ●アメリカンタイプ:満期日以前であればいつでも権利を行使できる 為替予約では必ず取引を行う必要がありましたが、オプション取引は権利なので、 権利を行使するか行使しないかを自由に選択することができます。
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オプションの価格構成
オプションの価格構成は本質的価値と時間的価値から成ります。 オプション料=本質的価値+時間的価値 ・本質的価値  本質的価値とは、その時点でオプションを権利行使した場合に生じる価値(原資産価格と権利行使価格との差額)のことで、 内在的価値とも呼ばれます。本質的価値は、ゼロになることはあっても、マイナスになることはありません。 ・時間的価値  時間的価値とは、原資産の現時点から満期日までの間の価格変動により、オプションの本質的価値が上昇することへの期待値のことです。 ですので、時間的価値についても、ゼロになることはあっても、マイナスになることはありません。 プレミアム(オプション価格)に、時間の経過や価格変動の大きさなどといった時間的価値が影響してくるのが、 オプションの最大の特徴であるといえます。 コールオプションでは、原資産価値が増加すると、オプション価値であるプレミアムが上昇します。 これは、オプションを権利行使すると、「原資産価格-権利行使価格」がオプションの買い手の利益になることを意味しています。 一方、「原資産価格-権利行使価格」<0のときは、オプションの買い手は権利を放棄します。
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企業評価のアプローチ手法
``` 一般的に企業評価のアプローチ手法として、 過去の蓄積を基礎とするコストアプローチ、 将来の収益性を基礎とするインカムアプローチ、 実際の売買市場で成立している類似企業の株価を基礎とする マーケットアプローチの3 種類があります。 ```  コストアプローチには、貸借対照表の純資産額をもとに企業評価を行う純資産額法という方法があります。また、会計上の資産価額は会計ルールに則って計算されていて、資産の時価とは大きく異なる場合があるため、時価を基準として評価する修正簿価法という方法もあります。 インカムアプローチには、将来の業績を予測し、毎年生み出される新たなキャッシュを現在価値に引き戻し、その総額を企業評価額とする収益還元方式やディスカウントキャッシュフロー方式と呼ばれる方法があります。  マーケットアプローチは、すでに証券市場で売買されている企業の株式について、それが企業の価値を体現していると考え、株式の時価総額と負債の金額を合わせて企業評価額とするものです。上場されていない企業については、同業種の上場企業を参照し、その指標を参考に企業評価額を類推する方法が採られ、株価倍率法と呼ばれています。