企業経営理論 Flashcards
シナジー(経済的効果)3種類
複数の関連する要素を結びつけて、各要素の持つ力の総和を超えた力を出す相乗効果のことをいいます。シナジーはメリットばかりではありません。シナジーには、プラスの相乗効果だけではなく、マイナスの相乗効果もあることに注意する必要があります。
●販売シナジー:販売組織や、流通経路、倉庫、広告などの共同利用による経済的効果
流通チャネル、販売管理組織、広告・販売、ブランドなどを共有することにより得られます。
●操業・生産シナジー:生産設備や、原材料(仕入)、技術、製品開発などの共同利用による経済的効果
生産設備、生産要員、原材料の一括大量仕入れなどや、機械設備、原材料用倉庫などを共有することにより得られます。
●マネジメント・シナジー:経営能力、管理能力の共同利用による経済的効果
経営管理ノウハウやスキル、総合的な管理上の制度などを共有することにより得られます。
多角化戦略の種類
多角化戦略の基本分類として関連型多角化と非関連型多角化があります。
◆関連型多角化:企業を構成する各SBU(戦略事業単位)が経営資源を共有する多角化です。共有される経営資源には、開発技術、流通チャネル、生産技術、管理ノウハウ等があります。新たに進出する事業が既存の事業に関連性があるもので、既存事業と新規事業間のシナジー効果から、高い収益性をもたらします。
関連多角化の場合、何らかの既存の経営資源を利用するので、まったく未知の分野に進出する場合に比べて、個々の進出先事業自体のビジネス・リスクは小さいといえます。しかし、複数の事業の関連性が強ければ強いほど、好不況の波が同時に来る可能性が高く、複数の事業が同時に不振に陥る危険性も高いので、企業全体のリスクは高いといえます。
◆非関連型多角化:きわめて一般性の高い経営管理スキルと財務資源以外、企業を構成するSBU間の関連性が希薄な多角化です。従って、全くシナジーを得ることができません。相補(コンプリメント)効果、ポートフォリオ効果を得るために行います。リスクを分散させポートフォリオ効果を得ることが目的ですので、関連多角化と比べて、企業全体としてのリスクは低いものとなります。しかし逆に、個々の進出先事業自体のビジネス・リスクは大きいものとなります。なぜなら、新しい進出分野は従来の事業と何ら関係のない分野となるので、その事業で必要な技術や経験やノウハウが不足しがちとなるからです。
多角化戦略を理解するために多角化の効果を理解する必要があります。多角化の効果には、相乗(シナジー)効果と相補(コンプリメント)効果があります。
相乗(シナジー)効果:複数の事業の組み合わせによる情報的資源の同時多重利用によって発生する効果で、掛け算的効果といいます。複数の関連する要素を結びつけて各要素の持つ力の総和を超えた力を出す相乗効果で、企業が事業活動を通じて蓄積してきた経営資源が他の事業に共通に利用することができ、事業が効率的になるときに、このシナジー効果が発揮されます。
ポートフォリオ効果:資源を分散することによって全体としてのリスクが低減する効果をポートフォリオ効果といいます。複数の事業の間でポートフォリオ効果が得られるためには、できるだけ相互に関連性のない分野に進出することになります。すなわち、1つの企業が複数の事業を営み、ある事業が不振に陥っても他の事業の収益でそれを補填することができるようにしておくわけです。
アンゾフの成長ベクトルにおける多角化戦略
水平型多角化:現在の顧客と同じタイプの顧客を対象にして、新製品を投入する多角化。
垂直型多角化:現在の製品の川上や川下に対する多角化。
集中型多角化:現在の製品とマーケティングや技術の両方、またはどちらか一方に関連がある新製品を新たな市場に投入する多角化。
集成型多角化:コングロマリット型多角化ともいい、現在の製品と既存の市場の両方にほとんど関連がない中で、新製品を新しい市場に投入する多角化。
プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス
BCGの開発したPPMは、複数事業や複数製品を持つ企業が事業や製品間の経営資源(資金)の獲得、投資を管理するための手法です。ヒト、モノ、カネ、情報という経営資源のうち、カネについてみたものであり、情報についてみたものではありません。縦軸に市場成長率をとり、横軸に相対的市場シェアをとった4つのセルで表現される。
縦軸の市場成長率は、市場の成熟度を示しており、PLC(製品ライフサイクル)の考え方が適用されています。PLCにおいて、成熟期にある製品(事業)のみが他の資金供給源になります。また横軸の相対的市場占有率では、経験曲線効果の考え方が適用されています。経験曲線効果ではシェアが高い製品(事業)ほど他の資金供給源になります。
PPMの意義は、投下資本利益率(ROI)で判断すると切り拾てられてしまう「問題児」に、 企業全体の長期的バランスの観点から将来の資金源を育成するために投資を行うという戦略的な行動を理論化した点にあります。
一方、PPMは、新規事業開発に関して具体的な戦略を提供することができないという問題点があります。現在のデータの分析に過ぎないので、将来の事業戦略を策定するのは難しく、新規事業に適用することができないわけです。この他に、PPMの問題点には、財務の視点しか考えていない、「負け犬」とされた事業部における従業員のモラール(やる気や士気)が低下するおそれがあるなどが挙げられます。
PPMの実務的な問題は、いかに将来の「花形」となる「問題児」事業を探り当てるかにあります。
一方で、「負け犬」事業からの撤退も実務的には困難が伴います。例えば、事業に用いられている経営資源を今後どのように活かせばいいのか、過去のトップマネジメントの肝いりで手掛けた事業である場合における忖度等が撤退の障害になることがあります。
また、PPMは事業間シナジーを考慮していないため、例えば「花形」事業と事業間シナジーがある場合には撤退は躊躇せざるを得ません。更に、PPMは市場成長率と相対的市場シェアの2軸で分類するため、規模は小さくても高リターンをあげている事業が「負け犬」事業群に含まれている可能性があります。
以上から、PPMを実務上利用する際、「問題児」事業、「負け犬」事業の見極めが重要な課題であることがわかります。
経験曲線効果と経済性概念
●経験曲線効果(Experience Curve Effect)
累計生産量が増えるほどコスト面で有利になること 習熟や改善による経済効果
企業である製品の累計生産量が2倍になると、1製品あたりのコストが20%~30%程度減少するという経験則のことを、経験曲線効果といいます。なぜ、コストが減るかというと、人が生産に習熟したり、生産の仕組みを改善したりといった経験が蓄積されてくるからです。
●規模の経済性(Economies of Scale)
生産規模が大きくなるほどコスト面で有利になること
電力業・水道業・鉄道業・ガス業などは、生産規模が大きくなるほど固定費の割合が下がり、経済性が高くなります。そのため、自然に企業規模が大きくなり、独占となる傾向(自然独占)があります。
●範囲の経済性(Economies of Scope)
企業が1つの事業を行うよりも、複数の事業を行う方がコスト面で有利になること
範囲の経済性の例として、AMAZONの事業展開が挙げられます。同社はそもそもインターネットによる書籍販売事業を主に行っていましたが、最近では、日用品、家電製品などを販売する事業にも進出しています。これは同社が保有していた書籍の流通網に他の商品を利用してもコストが大きく増えない一方、売上を大きく増やすことができるためです。
●ネットワークの経済性(ネットワーク効果、ネットワーク外部性)
複数の人や企業がネットワークとして結びつくことにより、経済的な効果が発生すること
ネットワークの経済性、ネットワーク外部性とも呼ばれます。例えば、メールというサービスの場合、利用者が自分ひとりしかいなければ、誰ともつながらないので、何の役にも立ちません。しかし、同じサービスに他の人がより多く加わるほど自分にとっての利便性が増していきます。
●速度の経済性(Economies of Speed)
情報獲得のスピード、意思決定のスピード、商品開発のスピード、顧客対応のスピード、業務遂行のスピードなど、スピードを上げることで様々な経済的効果が生まれること
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規模の経済性も範囲の経済性もいずれもコスト面におけるメリットのことですが、規模の経済性は1つの事業において言っているものであるのに対し、範囲の経済性は複数の事業について言っているものであることに注意しましょう。範囲の経済性は、単一事業において規模が拡大することによる効果ではありません。
M&Aの手法
M&A(Merger and Acquisition)とは、企業の合併・買収のことです。M&Aの手法には、次のものがあります。
●TOB(Take Over Bid、株式公開買い付け)
株価と期間を表明して、不特定多数の株主から証券取引所を通さずに、直接、株式を買い付けること
証券取引所を通さずに、株主から直接、株式を買う点がポイントです。よって、記述は不適切です。買収側にとっては、M&Aの進行過程で株価が上昇するといった不確実性要素がなくなります。一方、投資家にとっても、十分な情報開示のもとで意思決定することができるという長所があります。
●MBO(Management Buy Out、マネジメントバイアウト)
現在の経営陣が、自社や事業を買収すること。MBOの例としては、引越業のアートコーポレーション、レンタルビデオ店TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブなどがあります。
●MBI(Management Buy In、マネジメントバイイン)
企業の外部の経営陣による買収のこと。これはMBOのひとつで、企業を買収した投資家や投資ファンドが、買収先の企業に外部から経営者を送り込んで建て直しを行わせるものです。
●LBO(Leveraged Buy Out、レバレッジドバイアウト)
買収される企業の資産や将来性を担保に、資金を金融機関から借り入れて、その資金で買収すること。負債のレバレッジ効果を利用した買収であるため、レバレッジドバイアウトといわれます。LBOによってM&Aを行う場合、買収後の企業は負債比率が高く、財務リスクが非常に大きい企業になってしまうという弊害があります。LBOを実施した後の企業は、重い金利負担に耐えるために、相当額のキャッシュ・インフローを迫られることになります。そこで、製品やサービスの値上げやコスト削減が検討されますが、それが市場競争力の低下や長期的な投資計画の切り捨てにつながることも多くみられます。さらには、資産の切り売りをせざるを得ないケースも多く、LBOを実施した後の財務体質の悪化には十分な注意が必要です。
M&Aの水平的統合と垂直的統合
水平統合:同業他社との統合です。例えば、ある自動車メーカーが、別の自動車メーカーと統合するような形です。統合することで市場シェアの拡大による規模の経済性を追求します。
垂直的統合:商流を企業グループで囲い込む統合です。自動車メーカーで例えると、川上の部品メーカーや川下の販売業者と統合するケースです。統合により機能を内部化することで、顧客ニーズへの対応を商流全体で行うことができます。また、商流間での情報交換により、新製品開発の機会を得ることや品質が向上することが期待できます。
MBO
MBO(Management Buy Out、マネジメントバイアウト):
MBOは、現在の経営陣が、自社や事業を買収することを表します。これにより、経営陣が自社の経営権をもつオーナー経営者となります。自社の役員が買収を行うのであれば、資金調達の方法に関わらず、MBOとなります。
新たな役員を外部から迎えて経営を引き継がせる場合は、MBOではありません。外部から迎えた経営陣が自社や事業を買収してオーナー経営者になることを、MBI(Management Buy In、マネジメントバイイン)といいます。
新たな役員を外部から迎えて経営を引き継がせる場合は、MBOではありません。なお、外部から迎えた経営陣が自社や事業を買収してオーナー経営者になることを、MBI(Management Buy In、マネジメントバイイン)といいます。
買収防衛策
敵対的な買収を防衛しようとする方策には、次のようなものがあります。
●ポイズンピル(毒薬条項)
既存の株主に、安く株を購入できる権利、すなわち新株予約権をあらかじめ付与しておき、敵対的買収が行われた場合などの条件を満たすと、新株を発行するという買収防衛策は、ポイズンピルです。ポイズンピルは、対象会社を飲み込めば買収者に毒が回るということで、毒薬条項とも呼ばれます。
●クラウンジュエル(焦土作戦)
買収される企業の持っている魅力的な事業や資産を売却してしまい、買収者の意欲をそぐもの。これは、焦土作戦とも呼ばれます。
●ゴールデンパラシュート
取締役の退職金を高額に設定しておくことで、買収者の意欲をそぐという買収防衛策。これは、買収によって乗っ取られた企業から脱出する手段として、お金をパラシュートに見立てた表現です。
●ホワイトナイト
敵対的買収を仕掛けられたときに、ほかの友好的な第三者に買収してもらうもの。ホワイトナイトは敵対的買収を仕掛けられた企業にとっては救世主となります。
これら以外にも、買収を仕掛けられた企業が、買収を仕掛ける企業に対して、逆に買収を仕掛ける「パックマンディフェンス」や、MBOやLBO等を行ない非公開化することによって、買収を防衛する「非公開化」などの買収防衛策があります。
アウトソーシング
アウトソーシングは企業が外部に業務を委託することです。 アウトソーシングには、次のようなメリットがあります。 ●コストを削減することができる ●経営資源をコア事業へ集中させることができる ●高い専門性を持ったサービスを利用することができる
逆に、次のようなデメリットがあります。
●アウトソースした業務のノウハウが蓄積できない
アウトソーシングを経営手法として見る場合には、従来からあった「外注」、「下請け」、「人材派遣」などとの区別が必要となります。一般的には、業務の一部でも外部企業に任せればアウトソーシングです。しかし、経営手法としてのアウトソーシングは、当該業務の企画・設計段階から高い専門性を持つ企業に任せ、業務管理自体も任せるものを指す場合があります。すなわち、重要度が低い定型業務をよりコストの低い企業に委託するのがいわゆる「外注」や「下請け」ですが、経営手法としてのアウトソーシングは、重要な業務であっても外部企業の専門性に期待して外部化することを含んでいます。
当初、アウトソーシングは、情報システム部門が中心でした。その後、経理、人事など間接部門全般、そして物流、開発業務、製造プロセス、電力供給などあらゆる分野に拡大してきています。作業プロセスの設計業務も任せ、自社で行う以上の成果を受け取ることも、アウトソーシングです。
アウトソーシングの目的には、自社の得意分野への経営資源を集中することがあります。アウトソーシングする目的は、外部の専門企業を活用することによって、設備投資負担を軽減したり、自社の資産・人員を圧縮したり、業務を迅速化させたり、固定費の変動費化によって需要変動へ対応したり、自社が得意とする分野へ経営資源を集中させたりすることにあります。その結果、総資産利益率などの経営指標の改善、生産性向上、競争力の向上などの実現を図るわけです。
事業の再構築(リストラクチャリング)
事業構造を再構築して経営の仕組みを変革することをいいます。
新聞やテレビでは、リストラと呼ばれて人員削減という意味で使われていることが多いですが、リストラクチャリングの本来の意味は、企業のビジョンを達成するために、事業構造を変革したり、効率的な経営の仕組みをアウトソースしたりすることなどを含めて再検討することです。この事業を再構築する過程で、不採算の事業を削減したり、アウトソースしたりすることが多く、その結果、不要となった人員を削減するので、リストラ=人員削減というイメージが強くなってしまいました。
ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR:Business Process Re-engineering)とは、業務プロセスに着目して従来のプロセスを根本的に変革することをいいます。リストラクチャリングは企業全体のレベルであるのに対し、ビジネスプロセスリエンジニアリングは業務プロセスのレベルのものです。この視点の違いに注意してください。
ドメイン(Domain)
ドメイン(Domain)とは、事業を行う領域のことです。
ドメインには、次のような2つのレベルがあります。
●企業ドメイン 企業全体を表すもの ①企業全体の活動範囲の選択 ②企業のアイデンティティ(基本的性格)の決定 ③現在の活動領域や製品・事業分野との関連
●事業ドメイン 各事業単位のもの 以下の①と②により、事業マネジャーにオペレーションの自立性を付与する。 ①事業範囲 ②事業の見方
一般に、現代の企業は複数の事業を展開しています。これを多角化といいます。多角化している企業では、企業ドメインは、複数の事業ドメインを包括することになります。この場合、企業ドメインは、企業の戦う範囲(事業)を限定することに役立ちます。
企業ドメインは個々の事業の定義を足し合わせるのではなく、事業ドメインを包括するものです。外部の利害関係者とは、企業ドメインを示すことで収益性の源泉、競合する部分、お互いに補える部分、有機的な相乗効果が生じる部分の理解共有をすることができます。この相互作用の範囲を反映し、企業ドメインの範囲内で事業を柔軟に見直すことが可能となります。
企業ドメインが新規事業進出分野を制約する一方、その顧客セグメントの選択判断に直接的に影響するのが事業ドメインです。さらに、競争戦略策定の出発点として差別化の基本方針を提供するのも事業ドメインです。
将来手掛ける事業の定義を決定するのは企業ドメインです。また、事業ドメインが全社戦略策定の第一歩となるのではなく、企業ドメインの決定が全社戦略策定の第一歩となります。
多角化とM&A
M&Aの準備段階では機能の重複や補完関係についての調査や、被買収先の内部統制上の問題を明確化することでM&Aのリスクを低下させることが重要となります。
異業種のM&Aのメリットは範囲の経済性により自社の事業のリスクを分散することにありますが、買収された企業に自社に不必要な経営資源、例えば余剰となる従業員や設備が含まれてしまうリスクがあります。
企業の主要市場での需要の低下は新たな需要のある市場を求めた他の市場への参入という外部の成長誘因になります。
多角化の効果として相乗効果と相補効果があります。相乗効果とは複数の事業の組み合わせにおいて情報的資源を同時に多重利用することで発生する効果をいいます。相補効果とは複数の事業の組み合わせにより、各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、需要変動の平準化や余剰資源の有効活用に結び付く効果です。
同業種のM&Aのメリットは基本的に規模の経済と経験効果の実現ですが、同業種であっても組織文化はそれぞれ固有のモノであり、調整と統合にはコストがかかります。
多角化戦略の基本分類
関連型多角化と非関連型多角化に大別されます。
関連型多角化は企業の各事業が開発技術、製品用途、流通チャネル、生産技術、管理ノウハウを共有する多角化で、シナジー効果により高い収益性を得る戦略です。本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に、既存事業の資源を最大限転用して相乗効果を得ます。
非関連型多角化は極めて一般性の高い経営管理スキルと財務資源以外、事業間の関連性が希薄な多角化です。既存事業とは関連性が希薄であり、既存事業の市場シェアは新規事業の市場シェアには影響を及ぼしません。
動的シナジーと静的シナジー
相補(コンプリメント)効果は足し算的効果であり、複数の事業の組み合わせにより、各製品事業分野での需要変動(需要変動の平準化)や資源制約(余裕資源の有効活用)に対応し効果を得るものです。
相乗(シナジー)効果は、掛け算的効果であり、情報資源を同時多重利用することで発生する効果です。
シナジー効果が時間に依存するのが動的シナジーであり、依存しないのが静的シナジーです。時間経過により生み出される動的シナジーには組織学習や技術革新などであり、時間経過と共に企業成長への影響が大きくなります。このような動的シナジーを得られる事業の組み合わせは静的シナジーを得られる事業の組み合わせよりも大きくなります。
動的シナジーは時間経過に応じて効果が高まることから静的シナジーを作り出す事業の組み合わせよりも望ましいといえます。
シナジー効果は、範囲の経済性効果を生じるため、別個に発生するものではなく、また、複数事業の組み合わせによる情報資源の同時多重利用により発生します。
規模の経済性と経験効果
規模の経済性は、例えば水平的M&Aや大規模な設備投資によって大量生産可能な体制が構築されることで、コスト低減効果を得るものなので時間に依存しない静的な効果です。
経験効果は連続的に生じますが、規模の経済は水平的M&Aや大規模設備投資等によるため、連続的に行うことはできず停滞期間が生じます。
規模の経済の追求には相当額の投資が必要であり、新たに生じる固定費を回収するには、売上が伸びて設備稼働率が高まる必要があるため、相当額の投資が必要になります。
経験効果は、経験を重ねることで生産が効率化していき、コスト低減効果を得ることができるという時間に依存する動的な効果です。経験効果は労働の能率性向上、仕事の専門化と方法の改善、費用節約的な資源活用等の会社全体としての取組として行われるものもあり、生産機能においてのみ生じる効果ではありません。
経験効果は累積生産量に比例します。単年度の生産量増加はその年の生産量を増加させることですぐに効果がでますが、累積生産量の増加は過年度の累積生産量の影響を受けるため効果を得るまで時間がかかります。
規模の経済は、業界内において利益をあげられる企業数の上限を決定する一因となり、市場規模に対する生産の最小効率規模が大きいほど、当該業界に存在できる企業数は少なくなります。
最小効率規模が大きいとは、自動車産業のように大規模で高額な設備が必要なため、損益分岐点売上高が高いことをいいます。
経験曲線は累積生産量の増加に伴ってコストが低下することを表し、累積生産量に対応する技術の進歩や改善等の要因からも生じるが、生産機能において生じる経験効果に限定されません。
レバレッジド・バイアウト
LBOは、レバレッジド・バイアウト(LeveragedBuy Out)の略です。
企業買収では、大量の買収資金が必要ですが、LBOはこの資金を全て用意しなくても買収できる手法です。LBOでは、買収される企業の資産や将来性を担保に、資金を金融機関から借り入れて、その資金で買収します。これにより、限られた資金でも大型の買収ができます。ただし、買収後に企業の業績が悪化した場合は、借り入れた資金を返済できなくなるリスクがあります。
レバレッジド・バイアウト(LBO)は買収される企業の資産や将来性を担保に資金を調達して買収する戦略です。企業の一部門に限らず全体を買収することもあり一部門としている点が誤った記述です。企業の一部門の買収はLBOに限らず自社にはない経営資源の獲得を目的とすることもあり、経営資源の拡大を意図したものである点は正しい記述です。しかし、MBOやEBOはLBOを利用して行われることもあり、異なる範疇の手法とはいえません。
「事業規模の縮小」は販売量や従業員の削減等の経営資源の削減をいいます。スピンオフや非中核事業からの撤退は「事業範囲の縮小」に該当します。
オーナーではない経営者による買収はMBOであり、通常、買収後に経営の自由裁量の確保や敵対的買収に対する防衛のために株式を非公開にします。MBOの必要資金を買収対象である自社資産を担保に調達すればLBOに該当します。従って、広義のLBOの一形態ということができます。
プライベート・エクイティ投資会社(PE)
長期的な計画のもと、非上場企業を買収し、収益性を高めて上場させ、上場後に売却してリターンを得ます。買収により非上場化することが目的ではありません。
累積占有率と、市場第4位のD社の相対シェアは。
D社はこの製品市場第4位に位置しており、D社の市場占有率は10%です。
トップ企業であるA社の市場占有率は25%です。
上位5社による累積占有率が70%に達しています。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)でのD社の相対シェア
=D社の市場シェア ÷ 1位の企業のシェア
という計算式で求められますので、
10% ÷ 25% = 0.4
寡占度が高い市場では、高い参入障壁が構築されているのが通常です。
そのため、追随者(フォロワー)としての新規参入が比較的難しくなります。
国内のある製品市場においての個別メーカーによる金額ベースの市場占有率を算出せよ。
国内のある製品市場においての個別メーカーによる金額ベースの市場占有率を算出するためには、 a:「自社の当該製品の国内向け出荷額」、 b:「当該製品に関する国内の全事業者による出荷額」、 c:「当該製品に関する海外への輸出額」 を用いる。算出式は、市場占有率(%)={a/(b+c)} ×100 となる。
リストラクチャリングとリエンジニアリングの違い
リストラクチャリングは企業の部門が対象であり、事業構造を再構築して経営の仕組みを変革し、会社全体の構造を変える戦略レベルのことです。リストラクチャリングの一環として事業売却を行う場合には、対象となる事業の従業員に納得してもらうことがとても大切なこととなります。しかし、納得してもらうためにはどれだけ時間をかけてもいいというわけではありません。時間をかけすぎることなくリストラクチャリングを円滑に進めるためには、ボトムアップではなく、トップダウンで売却ステップを検討していくことが必要となります。
リストラクチャリングの一環として事業を子会社として独立させる場合は、経営成績に責任を持つ独立採算制を採らせることとなります。そのため、本社から各子会社に大幅に権限を委譲し、意思決定の迅速化を図ることが課題となります。
リエンジニアリングは、業務プロセスを抜本的に見直すことによって業務を再設計し、業務の効率化を図る運用レベルのことです。より正確には、BPR (Business Process Reengineering)といいます。
リエンジニアリングを進める場合、業務の効率化を図ることが課題となります。
ポーターの5つの競争要因(ファイブフォース)
業界構造を5つの競争要因で分析することで、既存の競争相手だけではなく、業界全体の構造を明確にすることができます。
- 既存業者の敵対関係:
業界内の競合他社との競争がどれぐらい激しいか。競合他社が多い場合は当然競争が激しくなります。また、同じぐらいの規模の会社が多い方が競争が激化します。また、業界の成長率が低くシェア争いが起きている場合や、差別化が出来ていない場合、固定費が高く価格競争になりがちな業界では競争が激化します。 例えば、大規模な設備投資が必要な半導体などの産業では、いったん設備を導入すると大量に生産・販売して投資資金を回収する必要があるため、供給過剰になりがちです。そうなると価格引下げが起こり、価格競争が激化していきます。 - 買い手の交渉力:
製品の買い手である顧客の力がどれぐらい強いか。買い手の力が強いと、企業は値引きを要求されるため収益が上がらなくなります。買い手の交渉力が強くなるのは、強力な購買力を持った顧客がいる場合です。 例えば、大型のスーパーが自社ブランドの商品を、幾つかのメーカーに委託して製造する場合は、大型スーパーの購買力は強力なため、製造するメーカーの力は小さくなります。そうなると、メーカーは大型スーパーからの値下げ圧力によって、安い価格で販売せざるを得なくなります。 - 売り手の交渉力:
売り手というのは、部品や原材料を仕入れている供給業者(供給業者側からいえば部品や原材料を提供している、となります)のことです。
売り手側の業界が少数の企業に支配されている場合、すなわち寡占業界の場合は、売り手の交渉力が高まり、業界の収益性は低くなります。
また、売り手側が独自の技術や製品を持っていると、高い価格を受け入れざるを得なくなるため、業界の収益性は下がります。
例えば、パソコンメーカーに、CPU を提供するインテルという会社があります。パソコンメーカーは、CPU は希少な部品であるため高い価格でインテルから購入する必要があります。そうすると、パソコンメーカーがパソコンを売ることで得た利益は、インテル側が多く持って行き、パソコンメーカーにはあまり利益が残らないという事になります。このように、売り手側が寡占業界で、独自性の高い製品の場合は、業界の収益性は低くなります。 - 新規参入の脅威:
新規参入があると、業界内の競争が激しくなるため、業界内の収益性は低くなります。 新規参入の脅威の程度は、参入障壁がどれぐらい高いかによります。業界内の企業は、参入障壁を高くしておき、新規参入を防ぐ必要があります。 - 代替品の脅威:
代替品というのは、ユーザーニーズを満たす既存製品とは別の製品のことです。例えば、レコードは、CD という代替品の登場によって衰退していきました。このように、強力な代替品が登場すると、業界構造が一気に変わる可能性があります。
参入障壁
参入障壁とは、ある業界に新規参入しようとする企業にとって、参入を妨げる障害のことをいいます。参入障壁が低い業界では、新規参入してくる可能性が高くなります。よって、業界内の企業は、参入障壁を高くしておき、新規参入を防ぐ必要があります。参入障壁が高まる場合は、例えば、次のようなときです。
●独自で高度な技術が必要な場合
●大規模な設備投資が必要で、規模の経済性が働く業界の場合
●流通チャネルが排他的な場合
M.E.ポーターは、参入障壁の規模を測る具体的な指標として、
①規模の経済性が働くか ②製品の差別化が存在するか ③巨額の投資が必要か ④仕入先を変更するコストは大きいか ⑤流通チャネルの確保は難しいか ⑥規模の経済性以外のコスト面での不利な点が存在するか ⑦政府の政策による参入の制限や規制が存在するか ⑧参入に対し強い報復が予想されるか
といった8つのものを挙げています。
参入障壁と移動障壁の違い
参入障壁は、業界の外から新たにその業界に参入するときの障害のことです。
これに対して、
移動障壁は、同じ業界で、ある戦略グループから別の戦略グループに移動する際の障壁のことです。