中小企業経営・政策 Flashcards
中小企業基本法の目的
中小企業政策について、基本理念・基本方針を定めるとともに、国および地方公共団体の責務などを規定することにより、
中小企業に関する施策を総合的に推進し、国民経済の健全な発展および国民生活の向上を図ること。
中小企業基本法の基本方針
①経営の革新および創業の促進
②中小企業の経営基盤の強化
③経済的社会的環境の変化への適応の円滑化(セーフティネットの整備)
④中小企業に対する資金供給の円滑化および中小企業の自己資本の充実
中小企業憲章 5つの基本原則
1.経済活力の源泉である中小企業が、その力を思う存分に発揮できるよう支援する。 2.起業を増やす。 3.創意工夫で、新しい市場を切り拓く中小企業の挑戦を促す。 4.公正な市場環境を整える。 5.セーフティネットを整備し、中小企業の安心を確保する。
中小企業憲章 8つの行動指針
1.中小企業の立場から経営支援を充実・徹底する。 2.人材の育成・確保を支援する。 3.起業・新事業展開のしやすい環境を整える。 4.海外展開を支援する。 5.公正な市場環境を整える。 6.中小企業向けの金融を円滑化する。 7.地域及び社会に貢献できるよう体制を整備する。 8.中小企業への影響を考慮し政策を総合的に進め、政策評価に中小企業の声を生かす。
小規模基本法・小規模支援法
小規模基本法および小規模支援法は、2014年6月に成立され、小規模企業を支援するための体制が整備されている。
小規模基本法 ◆基本原則 基本原則として、次の 2 つが示されています。 1.小規模企業の事業の持続的な発展を図る。 2.小企業者の円滑かつ着実な事業の運営を適切に支援する。 ◆基本的施策 基本的施策として、次の 4 つが示されています。 1.多様な需要に応じた商品・サービスの販路拡大、新事業展開の促進。 2.経営資源の有効な活用および個人の能力の発揮の促進。 3.地域経済の活性化に資する事業の推進。 4.適切な支援体制の整備。
小規模支援法
商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律(小規模支援法):
商工会及び商工会議所が、市町村や地域の金融機関等と連携して、小規模事業者の意欲ある取組を支援するためのもの。
1.伴走型の事業計画策定・実施支援のための体制整備
小規模事業者の課題に対して、事業計画の策定や着実な実施等を支援する体制や能力を
整えた商工会・商工会議所の支援計画(「経営発達支援計画」)を国が認定・公表する。
2.商工会・商工会議所を中核とした連携の促進
経営発達支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所は、市区町村や地域の金融機関、
他の公的機関等と連携して、地域の小規模事業者を支援する。
3.中小企業基盤整備機構の業務追加
経営発達支援計画の認定を受けた商工会・商工会議所に対して、中小企業基盤整備機構が、
先進事例や経営支援のノウハウの情報提供等を実施する。
小規模企業活性化法 改正ポイント
小規模企業活性化法は、2013年9月に施行され、この法律により、中小企業基本法をはじめに様々な法律が改正された。
改正ポイントとしては、次の 3 つ。
1 つ目は、宿泊業・娯楽業について、従業員 20 人以下の事業者は、小規模企業に含まれることとなった。これによりマル経融資や小規模企業共済制度等が、
従来は 5 人以下だったものが、従業員 20 人以下であれば利用できるようになった(但し、中小企業基本法の定義を変更するものではない)。
2 つ目は、中小企業基本法第 3 条(基本理念)第 2 項に小規模企業の存在意義とその活力の最大限の発揮について規定されました。
3 つ目は、中小企業基本法第 8 条が「小規模企業への配慮」から「小規模企業に対する中小企業施策の方針」へ改められ、内容が刷新されました。
中小企業の政策実施機関
政策実施機関の主な機関には、次のようなものがあります。
●中小企業基盤整備機構(中小機構)
●中小企業支援センター
中小企業支援センターは、地域ごとに設置され、中小企業への各種支援や、情報提供の窓口の役割を果たしている政策実施機関
①都道府県等中小企業支援センター
②地域中小企業支援センター
●商工3団体
①商工会
②商工会議所
商工会議所法に基づいて設置された認可法人で、商工業の振興を図るための地域の政策実施機関
③中小企業団体中央会
●中小企業投資育成株式会社
中小企業投資育成株式会社法に基づいて設立された政策実施機関で、主に中小企業への投資を行う。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、平成20年10月に、従来の国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫が統合して設立された全額政府出資の金融機関。
日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行う金融を補完し、中小企業者、国民一般、農林水産業者などの資金調達を支援することを目的としている。
日本政策金融公庫の事業には、従来の中小企業金融公庫にあたる「中小企業事業」、国民生活金融公庫にあたる「国民生活事業」、
農林漁業金融公庫にあたる「農林水産事業」がある。
事業引継ぎ支援センター
事業引継ぎ支援センターは、産業競争力強化法に基づき、中小企業者等の後継者マッチング等を支援するために設立された専門機関。
中小企業者等の経営資源および事業の引継ぎや事業承継を進めるために、各都道府県に設置されており、助言、情報提供、マッチング支援等を行う。
センターにおける支援は主に、①相談対応、②登録機関(仲介業者、金融機関等)への橋渡し、③センターによるマッチングという流れ。
センターによるマッチングは、マッチング相手がいる場合や登録機関の不調案件をセンターが士業法人等を活用して実施する。
すでにマッチング相手がいる場合でも、支援対象になる。
事業承継に関わる幅広い相談を受け付けているほか、後継者人材バンク等を利用することができる。
地域金融機関
地方銀行とは、一般社団法人全国地方銀行協会の会員である銀行を指します。
地方銀行の多くは、その本店所在道府県で最大規模の金融機関であり、地域経済に大きな影響力を持っている。
第二地方銀行とは、一般社団法人第二地方銀行協会の会員である銀行を指します。主たる営業基盤は、地方銀行と同じく、
その本店所在都道府県としているが、地方銀行より規模が小さい銀行がほとんど。
信用金庫は、信用金庫法にもとづく会員の出資による協同組織形態の非営利法人です。
営業地域は一定の地域に限定され、地域の中小企業ならびに個人のための専門金融機関の役割を果たしている。
大企業や営業地域外の企業・個人には融資ができないという制限がある。
信用組合(信用協同組合)は、中小企業等協同組合法に規定された中小企業等協同組合の一つ。基本的には銀行や信用金庫と同様の業務を行っている。
また、信用金庫や農業協同組合などと同じ非営利組織だが、組合員以外の預金の受入が全体の20%以内に制限されている点で信用金庫と異なっている。
金融機関別中小企業向け貸出残高
国内銀行の貸出残高は、2015年には約178兆円だったものが増加して、2020年には約218兆円となっている。
中小企業向け総貸出残高は、2015年には約253兆円だったものが増加して、2020年には約313兆円に達している。
政府系金融機関の貸出残高は、2015年の22兆円から、2020年では約30兆円になっている。
信用金庫の貸出残高は、2015年の約42兆円から、2020年では約53兆円となっている。
信用保証制度
信用保証制度は、信用保証協会が実施しています。信用保証協会は、中小企業の資金調達を円滑にすることを目的に、
信用保証協会法に基づき設置された認可法人で、各都道府県に1ヵ所ずつのほか、市を単位として横浜市や名古屋市などにも設置されており、全国に51ヵ所ある。
信用保証を受けられる対象は、個人または法人・組合等で事業を営む中小企業者で、信用保証をしてもらうためには、
中小企業の経営状態に応じた保証料を信用保証協会に支払う必要がある。
保証限度額は、普通保証が2億円、無担保保証が8,000万円、無担保無保証人保証が2,000万円。
ただし、無担保無保証人保証のためには一定の要件がある。
セーフティネット保証
セーフティネット保証制度は、取引先の倒産や、災害、取引金融機関の破綻などにより、
経営の安定に支障をきたしている中小企業に対して、信用保証協会が一般保証とは別枠で保証を付与する制度。
セーフティネット保証を受けるためには、本店所在地の市町村長(特別区の場合は、特別区長)の認定を受ける必要がある。
別枠保証限度額は、一般保証限度額と同額となっており、普通保証が2億円、無担保保証が8,000万円、無担保無保証人保証が2,000万円。
セーフティネット貸付
セーフティネット貸付制度は、経済環境の悪化などにより、資金繰りに困難をきたしている中小企業者に、
政府系金融機関(日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫)が融資をする制度。
セーフティネット貸付制度には、経営環境変化対応資金、金融環境変化対応資金、取引企業倒産対応資金の3種類の融資制度。
経営環境変化対応資金および金融環境変化対応資金いずれも、一時的に資金困難にあるものの、中長期的には、改善が見込まれる方が対象。
経営環境変化対応資金の対象となる方は、社会的、経済的環境の変化(物価高騰、円高、株安、経済不安など)の影響により、
一時的に売上高や利益が減少しているものの、中長期的にはその業況が回復することが見込まれる方。
また、利益が増加していても経常損失が生じる等、特定の要件を満たす場合も対象となる。
金融環境変化対応資金の対象となる方は、金融機関との取引状況の変化により、一時的に資金繰りに困難をきたしているものの、
中長期的には資金繰りが改善し経営が安定することが見込まれる方。
流動資産担保融資保証(ABL保証制度)
流動資産担保融資保証制度は、売掛債権や棚卸資産などの流動資産を担保にして、金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会から保証を受けられる制度。
ABLは、Asset Based Lendingの略。資金調達力が弱い中小企業でも活用することができる資金調達方法のひとつ。
なお現在、信用保証協会が行っているABL保証制度は機械設備等の固定資産は担保の対象となっていない。
これによって、中小企業者は、担保となるような不動産がなくても、決算書に計上される売掛債権や棚卸資産などの流動資産を担保にした融資が受けやすくなる。
売掛債権や在庫を担保とした融資に信用保証協会が保証を行うことにより、個人保証や不動産担保に過度に依存しない円滑な資金調達の実現を支援する。
制度内容は、保証割合が80%の部分保証となっており、融資限度額が2億5千万円、保証限度額は2億円となっている。
中小企業経営力強化資金融資制度
創業または経営多角化・事業転換による新たな事業活動への挑戦を行う中小企業・小規模事業者であって、
認定支援機関の経営支援を受ける事業者等を対象に日本政策金融公庫が融資を行う。
対象者は次のいずれかに該当する者。
① 経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により、市場の創出・開拓を行おうとする者で、
自ら事業計画書を策定し認定支援機関による指導および助言を受けている者
② 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している、または適用する予定で、事業計画を策定する者
支援内容 ■対象資金:設備資金および運転資金 ■貸付限度:【中小企業事業】7億2,000万円(運転資金は2億5,000万円) 【国民生活事業】7,200万円(運転資金は4,800万円) ■貸付利率:基準利率(特別利率あり) ■貸付期間:設備資金・20年以内、運転資金・7年以内
経営者保証に関するガイドライン
中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルールとして本ガイドラインが策定された。
ガイドラインの対象となる保証契約は、主たる債務者は中小企業で、保証人は個人であり主債務者である中小企業の経営者の社長。
保証契約の見直しを希望する方や保証債務の整理について、専門家を派遣し適切なアドバイスを行う専門家派遣事業がある。
専門家により、経営の磨き上げの支援やガイドライン充足状況の確認などを行う。
経営者保証に関するガイドラインは、経営者の個人保証について、
(1)法人と個人が明確に分離されている場合等に、経営者の個人保証を求めないこと
(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、
年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
以上の内容を定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を応援する。
法人税の軽減税率
中小企業では、大企業と比べて低い法人税率が適用される。具体的には、期末資本金が 【1 億円以下】の中小法人では、法人税が軽減される。
中小企業の法人税率は、年間所得が 800 万円を超える部分には大企業と同様に法人税率 23.2%が適用されるが、
年間所得が 800 万円以下の部分には軽減税率が適用される。この軽減税率は、本則では 19%だが、時限的な措置により 15%まで軽減されている。
中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制は、中小企業が機械・装置などの設備投資をする際に、税額を控除することができる制度。
対象者は、資本金1億円以下の法人、青色申告をする個人事業者、農業協同組合など。
対象となる設備は、取得価額が160万円以上の機械装置や、一定のソフトウェア、普通貨物自動車、内航船舶など。
対象者がこのような設備を取得した場合は、7%の税額控除、もしくは30%の特別償却のどちらかを行うことができる。
資本金3,000万円超1億円以下法人については、30%の特別償却のみ。
さらに、生産性の向上に資する設備を取得等した場合については、上乗せ措置があり、特別償却を即時償却にできる。
税額控除の割合は10%になる。資本金3,000万円超1億円以下法人では、30%の特別償却か7%の税額控除かを選択できる。
欠損金の繰越
法人税は、益金から損金を引いた所得額を基に税額を計算する。ここで、所得額がマイナスになった場合は、それを欠損金と呼ぶ。
税務上では、益金から損金を引いたものを利益ではなく、所得と言う。
欠損金の繰越制度とは、過去に欠損金が発生していた場合、当期の黒字と過去の赤字を相殺し、当期の法人税額を軽減することができる制度。
欠損金の繰越は、最大10年間行うことができる。10年間かけても黒字と相殺できない赤字がある場合は、その分は相殺の対象から外れる。
なお、欠損金の繰越制度の対象となる事業者は、青色申告法人。法人税における規定のため、対象は法人。
人材確保等促進税制
人材確保等促進税制は、新卒・中途採用による外部人材の獲得や人材育成への投資を積極的に行う企業に対し、
新規雇用者給与等支給額の一定割合を法人税額又は所得税額から控除する制度。
■適用対象:青色申告書を提出する全企業
■適用期間:令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度
■適用要件および税額控除
□通常要件:新規雇用者給与等支給額が、前年度より2%以上増えていること
⇒税額控除:控除対象新規雇用者給与等支給額の15%を法人税額又は所得税額から控除
□上乗せ要件:教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えていること
⇒税額控除:控除対象新規雇用者給与等支給額の20%を法人税額又は所得税額から控除
(ただし税額控除額は、法人税額又は所得税額の20%を上限とする)
エンジェル税制
エンジェル税制は、創業期のベンチャー企業に対する投資を促進するための税制で、
ベンチャー企業に投資する個人投資家のリスクを軽減し、新規産業の創出・発展を図ることを目的としている。
令和2年4月1日から、株式投資型クラウドファンディング業者の電子募集取扱業務により、
個人が株式を取得した場合についても、エンジェル税制の対象となった。
個人投資家が、ベンチャー企業に投資することはリスクが高いため、エンジェル税制では、個人投資家が、
制度の対象となる企業の株式に投資をする際と、売却をする際に、課税上の優遇措置を設けている。
株式を保有している際の税制上の優遇措置はない。
エンジェル税制の適用を受けるためには、各地域の経済産業局に確認書の発行申請が必要だが、
発行申請を行うのは個人投資家ではなく、投資を受けるベンチャー企業。
投資段階では、株式への投資額をその年の所得金額から控除するか、株式譲渡益から控除することができる。
投資段階の優遇措置には、所得税の控除(優遇措置A)と株式譲渡益の控除(優遇措置B)があり、いずれかを選ぶ。
優遇措置Aは設立5 年未満の中小企業者が対象で、優遇措置Bは設立10年未満の中小企業者が対象となっている。
売却段階では、株式売却で損失を出した場合に、その年の株式売却益から控除するだけでなく、
その年に清算しきれない損失がある場合は、それを翌年以降3年間繰り越して、株式譲渡益から控除することができる。
これにより、翌年以降の税額が少なくなる。
投資対象のベンチャー企業の要件としては、設立5年未満または10年未満の中小企業者で、
大規模法人及び大規模法人と特殊の関係にある法人の所有に属さない未上場の株式会社、かつ風俗営業等に該当する事業を行っていないこと。
外部(特定の株主グループ以外)からの投資を1/6 以上取り入れている会社であることが定められている。
さらに、設立年度に応じて、研究開発費の売上高に占める割合が一定を超えていることなどの要件がある。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、景気の変動等により事業の縮小を余儀なくされた企業が、休業、教育訓練、出向等を行うことにより、
雇用を維持する際に費用の助成をする制度。この制度は中小企業に限定されない制度。
助成率は休業手当又は賃金相当額の2分の1、中小企業の場合は3分の2。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、2つのコースがあり、
「特定就職困難者コース(60歳以上65歳未満)」では障害者等特に就職が困難な人、
「生涯現役コース(雇い入れ日の満年齢が65歳以上の離職者の再雇用支援)」では65歳以上の離職者再雇用支援
として雇い入れた企業に対して交付される助成金。