認知発達 Flashcards
ピアジェの認知発達の理論
新しい対象に出会ったとき、既存の知識(シェマ)の範囲で理解しようとしつつ(同化)それでは応じきれない側面は既有知識のほうを修正し(調節)、新たなバランス(均衡化)を得り、それを繰り返しながら外界の理解を広げ深めていく
シェマ(schema):外界を理解するための心のなかの知識構造
同化(assimilation):外界の情報が手持ちのシェマで理解できるときそれをシェマと合致すること
調節(accommodation):新しい経験をした場合シェマを修正して新しい情報を理解すること
均衡化(equilibrium):外界のある対象に対して同化と調節が均衡した状態(理解の成立)
感覚運動期
感覚運動期(誕生~2歳)sensorimotor stage
生まれたばかりの刺激に対する反射的な活動から出発し、様々な動作をくり返すことを通じて感覚と運動の関係を構築し、目の前にあるものをだんだんとうまく操作できるようになる。知覚と動作が直結しており、認知的な過程がほとんど介在せず、認知的な表象はまだ不十分である。
前操作期
前操作期(2~7歳)preoperational stage
表象を思い浮かべて頭の中で操作しながら考えことができるようになる。モノを表すシンボルを利用することや、言語を用いた思考も可能になる。しかし、そうした表象の操作はまだ知覚に強く縛られており、実際に見えているモノやその見え方によって思考の幅が限定される。
自己中心的(自分の視点から離れて他者の視点をとることができない)コミュニケーション。アニミズム的思考(無生物にも生物の属性を帰する)。
前概念的思考段階(2~4歳):概念の獲得が不十分
直感的思考段階(4~7歳):概念の獲得が進み、相互の事物を関連づけることができるようになってくるが、知覚情報に左右されて、論理的判断はうまくできない
具体的操作期
具体的操作期(7~12歳)concrete operational stage
具体的に外界に存在するものについては表象に様々な操作を加えて論理的な思考が可能になる。三つ山課題や保存課題も問題なく解決できるようになる。しかし、現実の規則から外れたような仮定を置いた思考は難しい。
形式的操作期
形式的操作期(12歳~)formal operational stage
現実の事物から離れた表象を扱い、自由に仮説を置いた上での論理的思考が可能となる。より抽象的で複雑な世界についての理解が進む。
感覚運動期の6段階
第1段階(0~1ヵ月)
反射行動(泣く、吸う)によって環境に適応する
第2段階(1~4ヵ月)
行動に経験の影響が含まれ始める
同化と調節が行動レベルで機能し始める
第1次循環反応(自己の身体に限った感覚運動の繰り返し)
行為の協応(感覚および複数の行為の相互協調的な発動)
第3段階(4~8ヵ月)
外界の事象と自己を区別し始める
行動に意図がかかわり始める
第2次循環反応(第1次循環反応の中にものを取り入れての繰り返し)
第4段階(8ヵ月~1歳)
事物の予期をし始める
因果関係を意識し、目標に向かって行動する
ものの永続性(ものが視界から消えても存在し続けること)
第5段階(1歳~1歳半)
認知レベルでの調節が機能し始める
第3次循環反応(循環反応を介し、外界の事物に働きかけ、外界に変化をもたらす自分の動作に興味をもつ)+目と手の協応動作
第6段階(1歳半~2歳)
行動の前に頭で考え始める(表象の操作)
思考に言語がかかわり始める
ものの永続性
ものの永続性 (object permanence):ものが視界から消えても存在し続けること
感覚運動期の第1段階:ものを隠しても特別な反応はない;第2段階:動いているものを追跡するが、ものが新しい場所へ動いても前に見ていた場所を探す;第3段階:追跡のエラーは犯さず、ものの一部が布で覆われても見つけることができる、しかし、完全に覆われた場合、見つけられない;第4段階:ものが完全に布で覆われていても見つけることができる(ものの永続性)、しかし、目の前でものが別の場所に移動されたとしても、以前に見つけたことのある場所を探してしまう;第5段階:目の前でものが別の場所に移動される場合は対処できるが、目の前でないものの置き換えには対処できない;第6段階:ものがどこにどのように隠されても見つけることができる
しかし、ピアジェの実験では、運動能力と実行機能などの要因が絡んでいる⇒期待違反法を用いた実験では、生後3ヵ月半~5ヵ月半にものの永続性が獲得される
+
知覚の恒常性(観る方向や距離などが異なっても大きさや形、色、明るさなどを一定のものとしてとらえること)
同一性の理解(あるものが以前にあったものと同じものか違うものかがわかること)
凝集性の原理(ものは一つに結合して、境界を持ったものとして動く)
連続性の原理(ものは連続した軌跡を通って、他のものと同時に同じ空間を占めることなく動く)
接触の原理(動いているものは接触すると互いに影響をおよぼし、接触しなければ影響 を与えない)
自己中心性
自己中心性 (egocentrism):自分自身の視点から離れられず、他の視点に立ってものごとを理解することが難しいこと
外界の事物を表象として頭の中で操作する際に、一度あるとらえ方をすると、それを変えて多面的に考えることが難しい
三つ山課題:子どもの前に高さや色や形の異なる三つの山の模型を配置する小さな人形が様々な位置に置かれ、子どもは人形からの見えを尋ねられる
①山の形をした3枚の厚紙で人形からの見えを再構成する
②様々な方向から見た山の重なり方を描いた10枚の絵カードから人形からの見えに一番近い絵カードを選ぶ
③絵カードを1枚選び、そのように見えるはずの位置に人形を置く
4~5歳(前操作期):自分の視点と人形の視点を区別できず、自分の視点からしか判断できない
7歳(具体的操作期):山の位置関係を把握できないが、見え方が変わることに気づく
9歳(具体的操作期):他者の視点に立つことができる
アニミズム
アニミズム (animism):無生物に対して、生命あるいはその属性(意識や意図など)を付与して認知すること
自分の中の心理的世界と外の物理的世界との区別ができない=自己中心性の問題
~6歳:すべてのものは生きていると判断する
6~8歳:動くものはすべて生きていると判断する
8~11歳:自力で動くものは生きていると判断する
11歳~:生きているものは植物や動物のみに限定される
保存の概念
保存の概念 (conservation):見かけ上の形や配列が変化しても、ものの数量は変わらないことを理解すること
6~7歳:数の保存
9~10歳:長さ・量・重さの保存
保存の概念を完全に獲得した子どもが「なぜ同じなのか」について、
①同一性:増えても減ってもいないから
②相補性:高くなった分、細かくなったから
③可塑性:戻せば元に戻るから
と説明できる⇒頭の中で表象を操作する思考実験ができる
ピアジェの理論の特徴
①認知発達とはより高次のシェマを獲得していくことで、子どもの認知は段階的に一定の方向に発達し、後戻りはしない
②各段階を特徴づける思考様式がある
③思考様式はどのような内容に対しても一貫しており、領域一般性を持つ
ピアジェの理論に対する批判
ピアジェの理論に対する批判
①段階の概念:ピアジェが主張していた時期より年少の子どもでもピアジュの概念を示すことができる/ピアジェが主張していた時期より年長の子どもがピアジェの概念を示すことができない
②段階を検証するための方法論:子どもの力の過小評価
ものの永続性:ものを子どもに提示し隠すという方法はものの永続性ではなく子どもの記憶力を検証している
量の保存:液体を一つの容器から他の容器に移すという行為には明確な目的が無く非現実的
③領域一般性:ある領域でエキスパートの子どもは、素人の大人よりも優れた遂行を示す⇒知的発達がある時期に特有のシェマに支配され縛られているのではなく、知的発達はそれぞれ多様な領域固有の知識の総体であり、人はそれら個々の領域で自由に能力を伸ばすことができる
ヴィゴツキーの社会文化的理論
認知発達とは社会・文化・歴史的な構成過程で、子どもの認知は他者との協同によって、また文化的な道具に媒介されて、発達する
現在の発達水準:子どもが現在持っている、限られている、課題を独力で解決できる力
潜在的な発達可能水準:子どもがこれから持つようになる、課題を独力で解決できる力
発達の最近接領域 (zone of proximal development):2つの発達水準の間の領域
大人が発達の最近接領域に働きかける(足場かけをする)ことを通して、子どもが発達し、潜在的な発達可能水準であったものが現在の発達水準へと変わり、またそれに伴い新たな潜在的な発達可能水準が生まれる
足場かけ (scaffolding):教示や誘導質問、解答のヒントなど
大人が子どもの子どもの現状を読み取り、適度なレベルの足場を与え、また、子どもが次第に自力でできるようになれば、徐々に足場を外していく
認知を媒介する文化的道具
①技術的道具:思考過程を記録したり記憶の補助とする e.g. 筆記用具、ノートなど
②心理的道具:思考そのものを運用する e.g. 言語、記号(図表など)⇒具体的・直接的な学びにとどまらず、抽象的・間接的な学習を行うことが可能となる
ピアジェとヴィゴツキー①:知識の習得について
ピアジェ:個人内で、シェマの同化→調節→均衡化を経験することにより、子どもは自分自身で知識を作り上げる+段階的
ヴィゴツキー:社会文化的な環境内で、他人との協同や他人の助けを経験することにより、子どもは知識を内在化していく+連続的
ピアジェとヴィゴツキー②:言語について
多語文を話せるようになると、子どもは他者とのコミュニケーションを増やし、世界を徐々に広げていく。その一方で、遊び場面などで他者への働きかけを意図しないひとりごとが、2~3歳から見られ、4~6歳頃になると最も頻繫に見られるようになる。
ピアジェは、こうしたひとりごとを、幼児が自己中心的に思考する傾向の現れと考え、自己中心的発話と読んだ。そして、こうした自己中心的発話の段階から、他者へのコミュニケーションを意図した社会的発話の段階へと移行すると考えた。
これに対して、ヴィゴツキーは、幼児はまだ思考のための言語活動(内言)を十分にできない段階にあるため、ひとりごとを外的な発声が伴った結果だと考えた。たとえば、遭遇する課題が難しくなるほど幼児のひとりごとが上昇することから、ひとりごとは内言の現れとした。
ヴィゴツキーの理論によれば、ことばはまず他者とのコミュニケーションのツール(外言)のために語彙や文法が発達していき、のちに思考のツール(内言)としての役割が新たに追加される。ただし、内言が最初から十分に機能していないために、不完全な内言がひとりごととして表出してしまう。ひとりごとはその後、構文が簡略化していき、最終的にはキーワードのみが表出されるようになる。そして、6~7歳には出現頻度が減少し、8歳頃になるとほとんど見られなくなる。このように、ヴィゴツキーは「外言から内言へ」と至る言語と思考の発達プロセスの理論化した。