第7章 臨床(原理) Flashcards
臨床心理学の 4 領域
臨床心理学の4領域とは日本臨床心理士資格認定協会が定めた臨床心理士の役割で,以下の4つがあげられている。第1に,クライエントの全体像を観察や面接,心理検査などを用いて把握する臨床心理査定,第2に,査定結果を元に適切な心理療法を行い援助していく臨床心理面接,第3に,地域に働きかけることで地域全体の心理的問題の予防や安全を図る臨床心理的地域援助,そして最後に,査定技法や心理療法の効果を検討していく調査・研究活動である。
コンサルテーション
臨床心理学におけるコンサルテーションとは,心理的問題を抱えたクライエントをもつ臨床心理学外の専門家が効果的に援助できるよう,その専門家を臨床心理士が援助することである。そのため臨床心理士は,クライエントを直接援助しない。しかし,臨床心理学外の専門家がクライエントを効果的に援助できるようになれば,それは地域の問題解決能力が高まったことを意味する。そのため,コンサルテーションは臨床心理的地域援助の主たる役割を果たしている。
スクールカウンセラー
各中学校に配置され,教師に対するコンサルテーションと,生徒・保護者に対するカウンセリングを主に行うのが,スクールカウンセラーである。スクールカウンセラーだけで生徒の問題を解決しようとするのではなく,学校教員や関係機関と連携して問題にあたる必要がある。そのため生徒から得た情報を学校全体で守秘するチーム内守秘義務が重視され,リエゾンによって連携を強化して,効果的な介入を図ることが求められる。
児童虐待
児童虐待とは保護者の行為によって,児童の心身が危機にさらされることで,身体的虐待,心理的虐待,性的虐待,ネグレクトの4つに分類される。児童虐待の原因は,世代間伝達や,社会環境の変化による育児の困難さ,児童自身のパーソナリティ上の問題など多様であり,一義的に特定することはできない。そのため,原因を探ることより,児童虐待の早期発見と早期介入が重視されており,児童虐待の通告義務は守秘義務より優先されている。
スーパービジョン
スーパービジョンとは,臨床心理士がその専門性の向上のために,経験を多く積んだ臨床心理士に指導·助言を受けることである。また,スーパービジョンは,ただの専門性の向上だけでなく,臨床心理士自身の精神的安定を図る目的もある。これにより,臨床心理士のバーンアウトを防止できるだけでなく,クライエントの立場を追体験することも可能となり,よりクライエントに共感できるようになる。
局所論と構造論
局所論とは,人の精神が意識·前意識·無意識の3領域からなるとするフロイトの論である。フロイトは,無意識に抑圧された心的外傷がヒステリー行動などを引き起こすと考えた。構造論とは,人のパーソナリティがイド・自我・超自我の3領域からなるという論である。快楽原則に基づいて快楽を満たそうとするイドを,道徳原則に基づいて超自我が検閲する。イドと超自我のバランスをとるのが自我であり,この自我の強化が精神分析の課題とされる。
エディプス・コンプレックス
エディプス·コンプレックスとは,フロイトの発達理論における,4歳~6歳の男根期の心理的葛藤のことである。自分の性を意識しはじめた幼児は,異性の親に性愛感情を抱き,同性の親に敵意を抱くようになる。最終的に,異性の親への性愛感情と同性の親への敵意を抑圧することで,エディプス·コンプレックスは終結する。この経験を通じて幼児は「してはいけないこと」を知り,超自我の形成がはじまる。また,同性の親への同一視が起こり,性役割の獲得につながる。
防衛機制
外部環境から危険が迫った時や,自身の内的な衝動を満足できない時に,人は何とか自我を守ろうとする。この自我を守るためのさまざまな手段のことを防衛機制という。最も基本的な防衛機制はフロイトが述べた抑圧で,不快な衝動や体験が意識されないよう,無意識下に閉じ込めておくことである。その後,抑圧以外にも反動形成,投射,合理化,知性化,同一化,昇華などさまざまな防衛機制が,フロイトの娘アンナ・フロイトによって体系化された。
集合的無意識
集合的無意識とは,ユングの分析心理学における中心概念で,人類に時代や場所を超えて共通する普遍的な無意識のことである。集合的無意識の存在は,世界各地の神話に共通する内容が存在することから考えられ,その共通する内容が元型とよばれている。代表的な元型に,権威を表す老賢人,慈悲を表すグレートマザー,適応的で外部に表出しているペルソナ,否定的な側面で外部に表出しないシャドウなどがあげられる。
対象関係論
対象関係論とは,最早期の乳児が,内的な世界に思い浮かべる母親の表象との関係性に注目した,クラインによる理論である。アンナ·フロイトは,エディプス・コンプレックスの葛藤を経るまでは,親との対象関係が築かれておらず,精神分析的解釈は意味を成さないと主張した。それに対しクラインは,最早期の乳児も親との対象関係を築くことを対象関係論で説明し,子どもの遊びに対する精神分析的解釈が,児童分析に有効であることを主張した。