第3章 発達・教育 Flashcards
成熟優位説
成熟優位説とは,レディネスの整わない学習は効果をもたないと主張するゲゼルの説である。レディネスとは,学習が可能となるための学習準備状態のことであり,ゲゼルはこのレディネスが心身の成熟によって成立すると考えた。ワトソンの行動主義においては,あらゆる発達が環境からの学習によって成立すると主張されていたが,ゲゼルは一卵性双生児の階段のぼりの訓練実験を用いて,レディネスの整わない学習が効果をなさないことを実証し,行動主義の発達観に反論した。
ピアジェの認知発達論
ピアジェの認知発達論とは,子どもの認知や思考様式の変化に注目して,子どもの発達を4段階に分けたものである。生後すぐの感覚運動期では,言語を使えないため身体感覚と運動を用いて世界の理解がはじまり,その後の前操作期では,言葉やイメージを用いた世界の理解が可能となる。具体的操作期になると,具体的な事物についてさまざまな心的操作が可能となり,形式的操作期になると,抽象的な概念であっても心的操作が可能となる。
フロイトの性発達段階
フロイトの性発達段階とは,精神分析の祖であるフロイトが,性的エネルギーであるリビドーの所在をもとに,発達段階を分類した理論である。口唇期·肛門期·男根期·潜伏期·性器期の5段階に分かれており,各段階でリビドーの所在が異なっている。各段階でリビドーが適切に発散されないと,満たされなかった欲求に対する強い執着が生じる。これを固着という。口唇期の固着は依存的な口唇性格を生むなど,各段階の固着はその特徴に応じた性格特徴を形成する。
エリクソンのライフサイクル
フロイトの性発達段階を基礎におきつつ,フロイトの理論ではふれられていない青年期以降の発達についても言及し,それぞれの段階における課題と危機を整理したのが,エリクソンのライフサイクルである。8段階に分かれた発達段階のうち,とくにエリクソンは青年期を重視した。青年は迷い,混乱する中で,自分は何者でどのように生きていくのかといったアイデンティティを探求する。探求の期間は,大人としての社会的責任が免除されるとし,モラトリアムとよばれている。
レジリエンス
について
レジリエンスとは,ラターによって「深刻な危険性にもかかわらず、適応的な機能を維持しようとする現象」と定義づけられた用語で,困難に対する耐久力·抵抗力・柔軟性を意味する。家庭環境に著しい困難を抱えた子どものすべてが不適応を示すわけではなく,中には,社会への積極的関心をもち,適応的な生活を可能とする子どももいる。このような困難に対して,不適応になる者とそうでない者の差異を明らかにする概念の1つとして,このレジリエンスが近年,注目を集めている。
内言と外言
内言・外言ともに,ヴィゴツキーの論である。内言とは,思考の道具として発話せずに頭の中で用いられる,自分自身への語りかけである。対して外言は,他者への伝達を目的とした発話による語りかけである。ピアジェが幼児の独語を自己中心語とよんだことに対し,ヴィゴツキーは幼児の独語を,本来発話する必要のない思考の道具としての言語まで発話してしまうが故に起こると考え,発達の過程で内言が形成されることで,独語は消滅していくと考えた。
愛着
愛着とは,ボウルビィによって提唱された養育者と乳児との間に成立する情緒的な絆のことである。愛着研究の背景には,施設症の問題がある。施設症の原因は,母子の相互作用が欠如し愛着が形成されていないため,とボウルビィは考えた。母子の相互作用が欠けると,その中で育まれる応答性や有能感が育たず,母親を安全基地とする探索によって生まれる身体的·知的な発育がなされない。このように,発達において愛着の形成は非常に重要な役割をはたすのである。
心の理論
心の理論とは,他者には自分と異なる心的状態が独立して存在していることを理解する能力のことで4歳頃に獲得されるといわれている。これを確かめるための課題が,誤信念課題である。誤信念課題では,自分は知っているが物語中の登場人物は知らない,という状況が提示され,そのことを正しく理解できているかを問う。心の理論が成立していない場合,自分が知っているのだから登場人物も知っているはずと思い込み,正しく答えることができない。
臨界期
発達に大きな影響を及ぼす出生直後の経験を指して初期経験とよび,初期経験が成立する時期のことを臨界期という。ローレンツの刻印づけの研究が有名で,カモやアヒルが,孵化してすぐに目にした対象の後を追う現象を指す。このとき,臨界期は孵化直後の 36時間前後で,この時期をすぎれば刻印づけは成立しない。刻印づけに限らず初期経験で成立した学習は可塑性が低く修正困難だが,人間は可塑性が高く修正の可能性もあるため,臨界期とはよばず区別して敏感期とよぶ。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは,教師が生徒にもつ期待に沿う形で生徒が変容することである。ローゼンタールは,成績が伸びるだろうと教師が期待していた生徒の成績が,他の生徒よりも高くなっていることを実験的に示し,ピグマリオン効果を証明した。ピグマリオン効果は,自身の期待を現実にしようと,期待が行動や態度に無意識下で反映され,その結果として期待が現実のものになりやすいという自己成就的予言のメカニズムが働いていると考えられる。
視覚的断崖
Visual cliff