第4章 社会・感情・性格 Flashcards
帰属
帰属とは出来事や行動の原因を推測し,因果的な解釈を行うことである。ハイダーは,帰属を大きく内的帰属と外的帰属に分類した。内的帰属とは,出来事や行動の原因を,能力や努力など自分自身の内的要因に帰属することである。対して外的帰属とは,出来事や行動の原因を,周囲の環境や運などの外的要因に帰属することである。帰属理論は,認知や推論の個人差や歪みを明らかにするための視点の1つとして役立っている。
認知的不協和理論
認知的不協和理論とは,認知要素間の矛盾から生じる不快な緊張状態を低減するために,矛盾のない協和な状態に認知を変えたり,不協和を増大させる認知を回避したりするフェスティンガーの理論である。たとえば,過酷な課題に対して金銭報酬が少ないと,過酷さと少ない金銭報酬に矛盾が生じる。そこで,課題に対する過酷さの認知を変えたり,金銭的ではない報酬を得ていると認知したりすることで,矛盾から逃れようとするのである。
説得
説得とは,意図的なメッセージを用いて,他者の意見や行動を変えることである。代表的な理論に,ホウランドのスリーパー効果がある。時間経過とともに,メッセージの内容と送り手の信憑性が分離して,メッセージの内容のみが残ることで,送り手の信憑性効果が消失する。嫌な相手に叱られた時,その場で納得できなくても,時間が経つとメッセージの内容だけを考えられるようになり,納得できるようになるのはスリーパー効果で説明できる。
印象形成
印象形成とは,服装や外見,声や身振りなど,他者に関する限られた情報を手がかりとして,その人物の全体的なパーソナリティ像を推測することである。現実場面においては,断片的な情報だけで相手の印象を作り上げることは困難であるため,ステレオタイプや個人の暗黙の人格観による印象形成のサポートが必要になる。反面,これらが印象形成のバイアスとなり,差別や偏見などの歪んだ印象を形成する可能性を忘れてはならない。
葛藤
葛藤とは,同時に満足させることが困難な欲求が,同程度の強さで個人内部に存在し,行動を決定できない状態である。レヴィンにより3つに分類された。1つめは接近一接近型で,同程度に魅力的な対象が2つ以上あり1つを選択する時に生じる。2つめは回避一回避型で,望ましくない対象が2つ以上あり,いずれも選択したくない場合に生じる。3つめは接近一回避型で,1つの対象が,肯定的と否定的の両面を併せもつ場合に生じる。
ジェームズ=ランゲ説
ジェームズ=ランゲ説とは,情動の生起にかかわる理論のことで,生理的変化が先に生じ,その変化を脳が受信することで情動が発生するという説である。一般的に考えられる「情動をもとに生理的変化が生じる」とは逆のケースであるため,批判も多い。その中でも最も有力なものがキャノン=バード説である。この説は,外部情報により脳の視床が活性化し,そこから身体反応と情動体験が同時に生じるという説である。
情動の2要因説
情動の2要因説とは,情動の生起には生理的喚起と,その生理的喚起に対する認知的解釈の2要因が必要となるという説である。シャクターとシンガーの実験によって示された。この情動の2要因説は,情動の生起に関して身体反応を重視するという意味で,ジェームズ=ランゲ説を再評価するものであり,またつり橋効果やロミオとジュリエット効果など、帰属錯誤から生じる情動理論の基礎を築いた。
内発的・外発的動機
内発的動機づけとは,賞や報酬に依存しない動機づけであり,外発的動機づけとは,行動に伴う賞や報酬に依存する動機づけである。たとえば,勉強そのものか面白くて理解したいから勉強する場合は,内発的動機づけに基づく勉強,テストでいい点数を取るともらえるご褒美やおこづかいのために勉強する場合は,外発的動機づけに基づく勉強である。外的報酬によって内発的動機づけが高まることもあれば,低くなることもあるので,注意が必要である。
欲求階層説
欲求階層説とは,人間の欲求を5段階に分類したマズローの説である。第1段階が生理的欲求,第2段階が安全の欲求,第3段階が所属と愛情の欲求であり,第4段階が尊敬の欲求,第5段階が自己実現の欲求である。基本的に下位の欲求が満たされていない限り,上位の欲求は生まれないという考え方に基づく。マズローは第5段階を最も重視し,人間が自己実現に向かって成長し続けていくという人間観を強く打ち出した。
性格類型論
性格類型論とは,性格を比較的少数の典型に分類することで,その特徴をとらえようとする方法論のことである。類型論は,直感的に個人の全体像を把握しやすいという利点をもつが,細かい個人差や複数の特徴をもつ性格,類型にまたがる中間タイプの性格をとらえられず,性格を固定的にとらえてしまいやすいという欠点をもつ。類型論の代表的な理論として,体型をもとに分類を行ったクレッチマーの気質類型や,心の機能をもとに分類を行ったユングの機能類型があげられる
類型論として最も院試における出題頻度が高いものは,先ほどの体格を基に分類するクレッチマーの気質類型だ。まずはこれを優先的におさえておきたい。次におさえたいのは,精神分析·フロイトの弟子であるユングの機能類型だ。心的エネルギーが向かう方向である内向·外向と心の機能「思考·感覚·感情·直観」を組み合わせた2x4の8類型に分けている。この2つの類型論を優先的に理解した上で,余裕があれば他の類型論(シェルドンの類型論,シュプランガーの価値類型など)の理解に移ろう。
クレッチマーの気質類型
体型 気質 性格特徴 関連する精神疾患
肥満型 循環気質 大らか,社交的 躁うつ病
細長型 分裂気質 繊細,非社交的 統合失調症
闘士型 粘着気質 几帳面,頑固 てんかん
性格特性論
性格特性論とは,性格を複数の性格特性の集合体ととらえ,それらを測定することで個人の性格を把握する手法である。個人の全体像がとらえにくいという欠点をもつが,数量化するため量的差異で個人差をとらえることが可能で,現在では性格特性論が性格研究の主流となっている。いくつの性格特性を測定すべきかは研究者によって主張が異なるが,現在,5つの因子で性格をとらえるビッグ·ファイブが注目を集めている。
ビッグ·ファイブ5因子
外向性:内向——外向
調和性:孤立——協調
誠実性:怠惰——勤勉
開放性:堅実——好奇
神経症:鈍感——敏感