概念理解・問題解決 Flashcards
表象
表象 (representation):「あるもの」を別の形で置き換えたもの e.g. 表記、記号、シンボル、あるいはそれらの集合
表象を操作することによって、認知活動が行われる
知識表象に関する問い
①情報は一貫した表象としてどのように蓄えられているのか?
→知覚ベース:元々の知覚的情報を保存
→意味ベース:詳細は捨象して意味を保存
⇒知覚情報に比べて意味情報は長く保持される
②意味はどのようにして蓄えられているのか?
→命題表象
→スキーマ・スクリプト
命題表象とその心理的妥当性
命題 (proposition):意味の最小単位(述部、変項1、変項2、…、変項n)
述部:1つの命題には1つ(動詞、形容詞、形容動詞、副詞、接続語を表す属性、関係、集合、関数などを表す)
変項:1つの命題にも複数存在しうる(名詞、名詞句)
命題表象の心理的妥当性
Sachsの実験
方法:文章を朗読させ、特定のタイミング(0・80・160音節後)で再認判断(①原文・②意味的変化なし、文法的変化あり文・③意味的変化あり文)
結果:0音節後、①②③正確;80音節後、②不正確③正確;160音節後、②不正確③正確
⇒原文は命題のような抽象的表象として保持される
命題表象の表現方法とその心理的妥当性
命題ネットワーク (propositional network)
概念を表すノードと関係を表すリンクから構成される
命題ネットワークの心理学的妥当性
Weisbergの実験
方法:①文を呈示し、憶えるよう指示;②文中の単語を呈示し、最初に浮かんだ語を解答するよう指示
結果:ネットワーク内で近い語が想起されやすかった
Ratcliff & McKoonの実験
方法:①文を呈示;②文中の単語を1つずつ呈示し、再認判断にかかる時間を計測
結果:ネットワーク内の距離を反映した反応時間
命題表象と命題ネットワークの心理学的妥当性が高い一方で、命題表象と命題ネットワークが反証不可能だという問題がある
スキーマ
スキーマ (schema):様々な事柄に関する構造的な知識
スキーマの性質
①変数を持つ(スロットと値・デフォルト値あり)
②埋め込み構造をしている
③様々なレベルの抽象度に対応する
④定義ではなく知識を表現する
スキーマの問題
アクション・スリップ (action slip):意図せずに起きる行動のエラー
機能的固着 (functional fixedness):既存の知識などによって対象の機能を習慣的なものに限定してしまう現象
スクリプト (script):ある出来事の一連の流れに関するスキーマ
表象間の相互作用
環境情報は、アナログ表象として取り込まれ、命題表象へと変換され、解釈される。その解釈をもとに、関連するスキーマが発動する。そして、スキーマに方向づけられた探索が行われる。この探索により、新たな環境情報が、アナログ表象として入手され、命題へと変化されることでスキーマを修正していく。このような表象間の相互作用によってわれわれの認知活動が行われる。
概念
概念 (concept):知識の単位
各概念は、記憶内で階層的なネットワーク構造になっている
概念どうしの結びつきによって命題が形成され、それが宣言的知識になる
概念理解
概念理解:概念の命題表現
命題=情報の基本的な単位
命題のネットワーク
人間の持つ表象としての実在性
イメージの命題表象
未処理な絵がまるごと保存されるのではない
構造化され意味を付与された表象
命題として表現できる
概念を理解するとは、情報を、解釈し、構造化・関連づけた命題ネットワークとして保存すること
理解しやすい概念:日常経験と結びつきやすい;推論が容易にできる
理解しにくい概念:日常経験と結びつきにくい;推論が容易にはできない
外在的世界と言語的世界
外在的世界:自分で直接経験できる世界
→エピソード記憶として蓄積される
言語的世界:他人の報告から得られた世界
→意味記憶として蓄積される
外在的世界の経験は意味記憶の内容に従って解釈される
エピソード記憶の内容が意味記憶内の一般論的命題の実例として、その一般論を信ずる度合いを強調する
同パターンのエピソード記憶が蓄積されると、一般化が行われ、知識体系が自然にできあがる
素朴概念と素朴理論
素朴概念 (naive concept):経験により構成される概念
素朴理論 (naive theory):体系化された知識
素朴概念は部分的には正しいが、一貫した正しい予測をすることには失敗する
→誤概念:専門分野の知識に照らして正しくない素朴概念
多くの人が誤概念を持っている
誤概念を解消するのは難しい
誤概念の特徴:①ある妥当な適用範囲を持つ、②他の誤概念と連動したシステムをなす、③保持者に自覚がない、④正しい知識を示すだけでは修正されない
認知カウンセリング:誤概念に抵触するような事例を学習者に示して誤概念に気づかせ、その後でたくさんの事例を示して正しい概念を形成し直す
概念理解の促進
・概念変化の5つのステップ
①現在の理論では説明できない、矛盾する現象が存在する
②矛盾する現象の数が多くなり、現在の理論が危機的状況に陥る
③新しい仮説が形成される
④新しい仮説を検証するための実験がデザインされ、実験の結果に基づいて新しい理論が 形成される
⑤新しい理論が受け入れられ、古い理論が捨てられる
・概念理解の2側面
①豊富化
②最構造化
・生徒たちは事前にどのような知識を持っているのか?
→生活の中で生物と関わる経験
→社会文化的環境
・メディアを通した情報
・言語や宗教的価値観
・教師(熟達者)はどのように理解しているのか?
→メンタルモデル
→思考プロセス
→関連する知識
概念理解を促進するための介入
①観察を通した発見・ルールを用いた活動の実施
観察の具体的な着眼点の提示
観察内容を表現し、記録する機会の保証
②準備する事例やその提示順序への配慮
典型事例→例外事例:ルールの確認
例外事例→典型事例→熟知の内容にゆさぶりをかける
③教師によるルールの意味の説明
④学習者の説明や理由を適切に位置付ける配慮
学習者なりの説明を理解した上で、適切な知識を位置付ける必要あり
⑤協同による学習
問題解決
問題解決 (problem-solving):目標が達成されていない状態(初期状態)から、何らかの認知手段(操作子)を用いて、その目標が達成された状態(目標状態)に移行すること
良定義の問題 (well-defined):初期状態、操作子、目標状態が明確な問題
不良定義の問題 (ill-defined):初期状態、操作子、目標状態が不明確な問題
問題解決における表象と再構造化
①問題を内的にどのように表現しているか
②この内的表象をどのように再構造化するか
問題表象 (problem representation):与えられた問題中の情報を有機的に組織化し、それがどのような状況について述べているかを心の中に表したもの
問題表象が出来上がった後に、探索やプランなどを用いた問題解決が行われる
再構造化 (restructuring):問題の表象を変化させる過程
洞察 (insight):問題の解法が突然明らかになること
ひらめき (aha experience):ある時点までは答えがわからず行き詰っていたのに、次の瞬間に「ああ、そうか!」とひらめいて問題が解ける体験
機能的固着 (functional fixedness):既存の知識などによって対象の機能を習慣的なものに限定してしまう現象
心的構え (mental set):人が過去の経験に基づいた特定のやり方で反応する傾向
問題表象の転換:行き詰まりが生じた場合、情報の精緻化、新しい情報の追加、妨害となっていた制約の緩和などによって起きる
問題解決における探索①:ヒューリスティック
問題解決過程:問題空間の中で初期状態から目標状態への道筋を模索する過程
下位目標を設定→下位目標を解決→問題解決
ヒューリスティック (heuristic):必ずしも解決を保証するわけではないが、効果的に問題を解決する可能性のある方法
手段ー目標分析 (means-end analysis):初期状態と目標状態の差異を小さくすることを目指し、目標状態に到達できるように複数の下位目標を設定する
下位目標に向かって進む前向き探索だけではなく、下位目標の目の状態を考える後ろ向き探索もする