学習 Flashcards

1
Q

行動主義

A

学習:(遺伝的な素養を基礎にして)経験を通して獲得された行動の永続的な変容
行動の変容:ある状況の下で、活動したり、観察したり、聞いたりして、その結果、同 じ状況またはそれと似た状況の下で生じる、永続的な変容
比較的単純な行動(生理反応、動作、単純な行為)の学習に焦点を当てる

非連合学習 (non-associative learning)
①馴化 (habituation)
重要でない同一の刺激が繰り返し与えられたときに、その刺激に対する反応性が低下していく現象
無害で中性的な刺激に対して毎回反応するエネルギーの浪費を抑えることが可能になる

②鋭敏化・感作 (sensitisation)
刺激を反復して提示すると、最初のうち弱かった反射の強度が徐々に増加していく現象
環境の中で重要な刺激に対してより反応しやすくなる
⇒馴化が起こるか、鋭敏化が起こるかは、刺激の呈示頻度や呈示場所で異なってくる

連合学習 (associative learning)
①古典的・レスポンデント条件づけ (classical/respondent conditioning)
生得的な反射を基礎にする刺激と反応の新たな連合の習得 :無条件刺激→無条件反応⇒無条件刺激+条件刺激→無条件反応⇒条件刺激→条件反応
 

②オペラント条件づけ (operant conditioning)
ある刺激の下で出現する多様な能動的行動の中の特定の反応に対してのみ報酬を与えることを繰り返すことで、刺激と特定の反応との新たな連合が作られること:無条件刺激→無条件反応⇒条件刺激→条件反応、を導入(賞罰);無条件刺激→無条件反応、を強化⇒条件刺激→条件反応→無条件刺激→無条件反応

教育実践:学習の最終目標に至る過程を細かな段階に分けるスモールステップの課題の配列として組み上げる

観察学習・モデリング (observational learning)
観察により、モデルの行動は学習者に習得される
しかし、学習者が実際にその行動を遂行するかどうかはモデルに与えられた強化による

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
2
Q

行動主義→教授主義

A

知識は世界に関する事実と問題を解決するための手順からなっている。学校教育の目的は、これらの事実と手続きを生徒たちの頭の中に注入することであり、教師はこれらの事実と手続きを知っており、それを生徒に伝えることが教師の仕事である。比較的単純な事実と手続きから始め、次第により複雑なものを学んでいく(スモールステップの原理)。単純さと複雑さの基準や定義は教師や教科書の著者、専門家によって決定される。学校教育の成功とは、生徒たちが多くの事実と手続きを身につけていることであり、それはテストによって測定される。

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
3
Q

認知主義①:二重貯蔵モデル

A

学習:知識構造の構築⇒学習主体の行為や知識に焦点を当てる
学習のメカニズム:記憶の情報処理モデル

①Atkinson & Shiffrinの二重貯蔵モデル (dual storage model)
感覚登録器 (sensory registers)
入力情報を感覚記憶としてごく短時間保持
感覚モダリティにより保持様式が異なる

短期貯蔵庫 (short-term store)
感覚登録器内で注意が向けられた情報のみ入る;音声的符号化;容量限界あり(7±2チャンク)
チャンク (chunk):情報のまとまり
保持時間短い(リハーサルをやめると15~30秒程度)
リハーサル (rehearsal):情報を声に出して・心の中で復唱すること

長期貯蔵庫 (long-term store)
短期貯蔵庫から転送される;容量限界なし;永続的

系列位置効果 (serial-position effect)
①初頭効果 (primary effect):系列位置が前の方が成績がよい;直後再生でも遅延再生でも見られる;短期貯蔵庫でリハーサルを多く受け、長期貯蔵庫に入る確率が高くなるため生じる
②親近効果 (recency effect):系列位置が後の方が成績がよい;直後再生のみで見られる;短期貯蔵庫から直接読みだせるため生じる

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
4
Q

認知主義②:処理水準アプローチ

A

②Craik & Lockhartの処理水準アプローチ (levels of processing approach)
記銘の際に水準の異なる様々な処理が行われる
処理水準:形態的処理→音韻的処理→意味的処理
e.g. 単語の文字の構成→文字列の読み→単語の意味
深い処理がされるほど忘却されにくくなる
  
処理水準アプローチの根拠
リハーサルの質的分析→浅い水準のリハーサルを繰り返しても記憶痕跡は強固にならない
偶発学習課題への影響→処理が深いほど記憶成績がよくなる

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
5
Q

認知主義②:作業記憶モデル

A

③Baddeleyの作業記憶モデル (working memory model)
二重貯蔵モデルを継承しつつ発展:・短期記憶→作業記憶

作業記憶 (working memory):短期貯蔵庫における問題解決に用いられる記憶
短期記憶:課題で示されている情報のみが入る
作業記憶:課題で示されている情報が入るだけではなく、長期記憶の中から課題解決にかかわる知識が呼び出される e.g. 意味記憶+手続き的知識
⇒短期記憶(保持機能)+認知的な情報処理(処理機能)
  
作業記憶のモデル
音韻ループ (phonological loop):言語などの音声的な情報を保持するシステム
視空間的スケッチパッド (visuo-spatial sketchpad):視覚的・空間的な情報を保持・操作するシステム
中央実行系 (central executive):2つの下位システムの働きを制御し、さらに理解・問題解決などの認知的な情報処理の実行と、そのために必要な情報の保持・長期記憶とのやりとりに関与する

作業記憶と処理資源
処理資源 (processing resources):様々な情報処理を実行するために必要な心的エネルギーのようなもの
複数の処理を同時に行う場合に、処理資源はそれぞれの処理に応じて分配される
処理に必要とされる処理資源が個人の持つ処理資源を上回ると、処理に支障をきたす
e.g. 知らない単語ばかりの文章を読む場合、その単語の理解に処理資源が多く必要とされ、結果として文章全体の理解が困難になる
個人の持つ処理資源は発達にともない増大する→作業記憶容量の増大

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
6
Q

認知主義→情報処理アプローチと深い学習

A

学校教育の目的は、能動的に環境に関与し自ら表象を構成していく、学習可能性を潜在的に持つ有能な学習者を育成することである。生徒が既有知識や方略を用いながら、心の中に表象を構成していき、またその学習過程や 理解を生徒自身がモニタリングし、修正したりする。その学習過程を支えることが教師の仕事である。

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
7
Q

状況主義①:正統的周辺参加

A

状況主義
学習:システムと学習主体との協調関係の構築過程
システム:学習主体を取り巻く事物(学習の文脈)
学習のメカニズムを論じる理論ではなく、学習を広く意味付けようとする理論
学習は個人の中で起こるものではなく、共同体における社会的かかわりや、そこにある 
様々なものとの相互作用の中で生じる過程

正統的周辺参加 (legitimate peripheral participation):
学習者が共同体の新参者として重要な業務の周辺的な重要性の低い業務を担当するところから始め、技能の熟達につれ中心的でより重要な業務を担当する十全的参加者へと変化していく
実践の場で獲得される技術や知識は、抽象的で断片的な知識ではなく、実際の業務の遂行に深くかかわる
学習するということは、最終的に社会の中で何らかの役割を果たすことができるようになること
⇒学習:社会的参加の過程、個人がその社会の中で自己を形成していく過程

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
8
Q

認知主義②:認知的徒弟制

A

認知的徒弟制 (cognitive apprenticeship):
習得される知識や方略を多様な状況で用い練習できるように学習課題が選ばれ配列され、またそれにより多様な場で使える一般化された知識の伝達がはかられる
目に見えない内的な思考過程の明示が求められる
学習過程:
①モデリング:教師など教室の熟達者はその熟達した技能を生徒に観察させ、真似させる 
②コーチング:教師は生徒にやらせ、必要に応じ足場としてのヒントやフィードバックを与える
③フェーディング:教師は生徒に手がかりや補助などの足場を与え、上達につれ足場を徐々に取り除き、1人でやれるようにする
④明瞭な表現:内的な過程である思考を外からも分かるように、理由や知識、問題解決過程を明瞭に表現させる
⑤反省:生徒の問題解解決過程を熟達者や他の生徒のそれと比較させる
⑥探求:生徒が自立した学習者として自分自身で問題を設定し、解決していく

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
9
Q

動機づけ

A

動機づけ (motivation):個体・個人の行動を始発させ、方向づけ、推進し、持続させる過程⇒学習を始めようとする力・何をどんなふうに学習するかを決める力・学習を進め、続けていく力=意欲、やる気
外発動機づけ (external motivation):その動機が引き起こす活動以外の賞に依存する;その活動=手段
外発的動機づけの問題:次から次へと賞(正の強化子)を見つからないと動機づけが高まらない+動機づけと無関係に賞(正の強化子)の期待ばかり膨れてしまう

内発的動機づけ (internal motivation):その動機が引き起こす活動以外の賞に依存しない;内側から湧いてくる興味、関心、好奇心、面白いという気持ち;その活動=目的・楽しみ

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
10
Q

内発的動機づけの特徴

A

内発的動機づけの特徴
アンダーマイニング効果 (undermining effect):外的な報酬を与えると、その外的報酬がなくなった時に、内発的動機づけが低下してしまうという現象である。
Deciの実験:前のセッションで金銭的報酬を与えられた実験参加者は、そうでない実験参加者より、全体としてパズルに自発的に取り組む時間が短かった

自己決定理論 (self-determination theory):人間は有能さ、関係性と自律性という3つの欲求を持っており、これらの欲求が満たされることで内発的動機づけや心理的な適応が促進される
外的な報酬が与えられると、自律性の欲求(自分自身の意思で自律的に自分の行動を選択したい)が阻害され、内発的動機づけが低下する
報酬の与え方に工夫が必要

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
11
Q

内発的動機づけの源泉

A

内発的動機づけの源泉
①知的好奇心 (intellectual curiosity):新奇な刺激を求める傾向
②有能感・自己決定感 (competence):有能さを認知したい、自分で決めたいという感情
 
知的好奇心の種類
①拡散的好奇心 (diverse curiosity):自分が知らないことや珍しいことに興味を持つ
②特殊的好奇心 (specific curiosity):興味を持ったものを深く探求し、認識しようとする

知的好奇心の生得性
Heronの感覚遮断断実験→感覚を遮断された状態には耐えられない
Fantzの乳児の選好注視実験→乳児は単純な図形よりも複雑な図形をより注視する

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
12
Q

動機づけを高める方法

A

自己決定理論・自己決定感から
有能さ
自分は「できる」という信念を高める支援をする
学習者のできるところから始めて、次第に高度な知識や技能の必要な課題を与え、それがうまくできればきちんと認め、ほめる+学習者の能力がまだまだ伸びることを強調する
関係性
学習を促すような仲間関係を支援する(グループ活動など)
学習を促すような環境を作り上げる(クラスの雰囲気など)
自律性
選択の自由を与える(課題の選択、課題を学習する方法の選択、学習する場所の選択、学習する時間の選択など)
学習者に対して適切なアドバイスやフィードバックを与える*特に自力で課題を解決できるような形で
報酬の与え方で工夫する

知的好奇心から
知的好奇心を利用した指導をする
e.g. 概念的葛藤に基づく知的好奇心の刺激
①子どもの持つ素朴概念を利用し、驚きを引き起こす
②子どもがあらかじめ期待や考えを持っていない場合には、足がかりとなる知識を与え、利用する
③子どもが持っている情報相互のずれに気づかせる

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
13
Q

原因帰属

A

原因帰属 (causal attribution):過去の失敗や成功の経験の原因を考えること
統制の位置:その原因が個人内の要因か、個人外の要因か
安定性:その原因が時間の経過に対して安定しているか、変化しやすいものか
内的安定:能力;内的不安定:努力
外的安定:課題の困難度;外的不安定:運

能力帰属と努力帰属
失敗を努力に帰属⇒学習性無力感に陥りにくい
失敗を能力・外的要因に帰属⇒努力が抑制される

努力帰属の難しさ→努力をすることで確かに課題に成功する可能性も高まるが、努力をしたうえで再び失敗してしまうと、自分の無能さを逆に実感してしまう
⇒努力帰属から方略帰属へ;方略:内的で不安定で、統制可能

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
14
Q

学習性無力感

A

学習性無力感 (learned helplessness):いくら行動をしても結果が伴わないことを繰り返し経験すると、もうやっても無駄だと感じて無力状態になること

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
15
Q

自己高揚動機

A

自己高揚動機 (self-enhancement motive):失敗をした時、自分が原因だと頭でわかっていても、それを認めたくない;肯定的な評価を得たい、もしくは否定的な評価から自分を守ろうとする動機
セルフサービングバイアス (self-serving bias):自分の成功を能力や努力といった内的な要因に、失敗を運や課題の困難度といった外的な要因に帰属する傾向
セルフ・ハンディキャッピング (self-handicapping):自分の遂行を阻害するような要因を、積極的に主張したり自分で作り上げたりする行為

How well did you know this?
1
Not at all
2
3
4
5
Perfectly
16
Q

自己効力理論

A

自己効力理論
「やればできるけれど、今はやらない」こともある
⇒統制可能性は認識していてもやろうとしない
⇒統制可能性は動機づけにとって必要な条件ではあっても、十分な条件ではない

結果期待 (outcome expectation):行動と結果との随伴性の期待
効力期待 (efficacy expectation):行動自体を起こせる自信
自己効力感 (self-efficacy):効力期待に基づいた行動に関する自信

自己効力感の3次元
①大きさ:困難さのレベルの順に並べられている行動について、どのレベルまで遂行できると感じるかの程度
②強さ:「遂行できる」と感じたレベルのそれぞれに対し、どの程度の確からさをもって遂行できると感じているか、という確信の程度;その人のその時の状況に変わる
③一般化:場面間における自己効力感の共変同関係の程度

自己効力感の情報源(自己効力感を高める方法と関係する)
①実際にやってみる
②他者が行動を観察する
③他者から説得されたり、励まされたりする
④生理的な反応を体験する

17
Q

知能観

A

知能観
暗黙の知能観 (implicit theories of intelligence)
実体的知能観 (fixed mindset):能力は生まれつきで変わらない
拡大的知能観 (growth mindset):能力は努力によって伸びる

知能観と学習目標
遂行目標 (performance goal):良い成績をとること、否定的に評価されることを避けることなどを目指す
他人と比較して動機づけを上げたり下げたりする
遂行目標を持っている人ほど、学習性無力感になりやすい
学習目標・習得目標 (learning goal・mastery goal):能力を高めることを目指す
他人のことを気にせず、自分のペースで自分で納得できるまでやる
学習目標を持っている人ほど、課題への動機づけや粘り強さが高く、認知的学習方略をよく使用する

18
Q

学習観

A

学習観
学習成立に関する基本的な信念・価値観
広義:学習のしくみやはたらきに対する考え方
狭義:どのような勉強の仕方が効果的かについての個人レベルの信念

学習観の分類
非認知主義的学習観:環境重視(学習環境さえよこれば自分の成績は伸びる)、勉強量重視(勉強量さえ多ければよい)、丸暗記(丸暗記さえすればよい)、結果重視(答えさえ合えばよい)
⇒不適切な学習方法をとりやすい傾向→学習成果が上がりにくい 
認知主義的学習観:失敗活用(失敗は自分の弱点を知るための重要な機会)、方略活用(勉強量だけではなくやり方も工夫)、意味理解(意味を考えながら覚える)、思考過程重視(答えだけではなく途中過程も重視)
⇒量をこなすだけではなく,質も重視するという学習方法に価値をおく考え方
⇒効果的な学習方法を利用しやすい傾向→学習成果が高くなる

19
Q

学習方略

A

学習方略 (learning strategy):学習の効果を高めることを目指して意図的に行う心的操作あるいは活動

学習方略の発達段階(幼児の記名方略の発達段階から)
媒介欠如 (mediation deficiency):方略自体を知らない→方略を明示的に教示する
産出欠如 (production deficiency):方略を知っているにもかかわらず、自発的に利用しない・できない→方略の価値を認識させる i.e. 方略に対する有効性の認知+方略に対するコスト感の低減
利用欠如 (utilisation deficiency):方略を使おうとする意思はあるものの、うまく使いこなせず、問題解決に結びついていない→方略がどのような場面で有効かといったメタ認知的知識+方略を正しく使いこなすだけの手続き的知識を指導する

学習方略の種類 
①認知的方略:学習内容とその覚え方に注意を向ける
浅い処理方略:単純な反復を中心とした方略
深い処理方略:単純な反復だけではなく、意味の理解といった付加的処理を加えることによって、記憶の定着を良くしようとする方略
精緻化方略:既有知識と学習内容を関連づけることで,情報を豊かにし定着を促す ・体制化方略:学習内容が相互に関連を持つように分類・整理する

②メタ認知的方略:自分の知的な状態に注意を向ける
理解モニタリング方略:自分がどのくらい理解しているのかを確認する
自己評価方略自分で学習の進行状況や質を評価する
教訓帰納:ある問題を解いたことによって、何がわかったのかを教訓として引き出す⇒学習の転移

③外的リソース方略:外的資源に注意を向ける
図や表を積極的に活用する
他者に質問する
依存的な援助要請:答えを教えてもらい、自分では考えようとしない
自立的な援助要請:わからないことを教えてもらい、やりとりのなかで、問題解決のスキルを他者から学ぶ
*内的リソース方略→情緒的・動機づけ方略:学習に対する不安や動機を制御する

学習方略を事前にレパートリーとして十分にみにつけ、必要に応じて活用していく

20
Q

自立的学習者

A

自立的学習者:自らの現状を正しく分析し、適切な信念に基づいて効果的な学習方略を選択できる+つまずきを自分自身で明確化し、必要ならば他者に支援を求める
自立的な学習者の学習プロセス:①現在の自らの問題点や状況を分析する、②どのように行動を変化されるのかについての方針を立てる、③計画に沿って行動を実行に移す
*学習観→学習方略→学習成績→学習意欲

21
Q

メタ認知

A

メタ認知 (metacognition):自分の認知活動に関する認知⇒現在進行中の自己の認知活動を客体化し、それらの活動を評価して制御すること

①メタ認知的知識 (metacognitive knowledge):メタ認知的活動を行うために必要とされる、認知活動についての知識
人変数に関する知識:人の認知的な特性(個人内、個人間、人一般)
課題変数に関する知識:課題の性質
方略変数に関する知識:課題遂行に効果的な方略
*知能観・学習観はメタ認知的知識に含まれている

②メタ認知的活動 (metacognitive activity):認知活動のモニタリング・コントロール
モニタリング (monitoring)
知的状態をみずから診断する i.e. 認知活動の気づき、感覚、予想、点検、評価
メタレベルが対象レベルから情報を得ること
コントロール (control)
モニタリングの結果をふまえて行動を調整する i.e. 認知活動の目標設定、計画、修正
メタレベルが対象レベルを修正すること

メタ認知に着目する理由:認知活動の促進効果が期待される+自立的学習者となるために必要

22
Q

メタ認知の発達

A

メタ認知に関する基本的能力
①自己の能力の限界を予測する
②自分にとって今何が問題かを明確にできる 
③問題の適切な解決法を予測し、具体的な解決策の計画を立てる
④点検とモニタリング
⑤結果と目標を照らし合わせ、実行中の方略を続けるかどうかを判断する

メタ認知の発達
①能力の自己評価(Flavell)
対象:保育園児、幼稚園児、小学2年生、小学4年生
課題:自己の記憶に関する予測;10枚の絵を呈示し、何枚思い出せるか質問;その後実際に再生させる
指標:誤差枚数(予測枚数ー実際の再生枚数)
結果:学年が上がるにつれ予測と実際のずれが小さくなる「10枚再生できる」と答える子どもの割合が低下
人間の記憶範囲は7±2なので、10枚再生できるという回答は非現実的;非現実的な回答は、学年が上がると減少
 
②有効方略の予測と実行(Brown)
対象:健常児(4歳、小学1年生、小学3年生)・教育可能な遅滞児(6歳、8歳)
課題:ビデオ視聴;12歳児が12枚の絵を覚えようとして、4種類の記憶方略(分類する、リハーサルをする、名前をつける、じっと集中して見る)を試している内容;どの方略がよい成績につながると思うか回答;実際に12枚の絵を渡して記憶させる
結果:有効な方略(分類法・リハーサル法)の予測:遅滞児:100%、小学3年生:81%;4歳児・小学1年生:どの方略も規則性なく選択;方略の実行(その方略を選んだ人のうちの割合):遅滞児:28%、4歳児:22%、小学1年生:36%、小学3年生:77%
遅滞児は、有効な方略の予測において小学3年生に劣らず優秀な成績を示しているしかし、その実行に問題がある(*産出欠如)

③行動の点検(Brown)
対象:保育園児、小学2年生、小学4年生
課題:ストーリー(6つの出来事から構成)とそれに合った4枚の絵を呈示(ストーリーは5種類);8枚の絵の中から、話を聞いた時に見た絵を選ぶように言う
結果:保育園生の中には、6枚絵を選んでしまう子がいたしかし、見た絵の枚数を忘れたわけではなかった(聞けば、「4枚見た」と回答できる);2年生以上ではそのような反応はなし
行動の点検は保育園生では不十分

メタ認知の発達:学齢期に達しない時期では、基本的なメタ認知能力が未発達である
小学校2年生くらいになると、自己の能力を正確に評価し(能力の自己評価)、有効な方略を予測し(有効な方略の予測)、それにしたがって行動する(有効な方略の実行+行動の点検)ということができるようになる

23
Q

メタ認知が働きにくい場合

A

メタ認知が働きにくい場合
①問題に対する構えが形成されてしまう場合(*心的構え)
一度獲得した習慣的な構えは、状況が変わってもそれが通用する限りは、なかなか壊すことができない
②目標が不明確な場合
達成しようとする目標が不明確である場合は、起こるべき事態の予測がつきにくい。そのために行動を組織化することができず、結果として、個々の状況に左右された思考や行動に陥りやすい e.g. 文章作成

24
Q

メタ認知を促進する方法

A

メタ認知を促進する方法
他者とのコミュニケーションによる気づき・調整を、自己調整に移行させるような環境の提供(ヴィゴツキーの社会文化的理論から)

実践例
①相互教授 (reciprocal teaching)
生徒同士で教師役と生徒役を交代しながら、お互いに質問したり、教えあうことにより、課題理解を深めていく方法
読解:熟達者が読解活動中に行っている心的活動(「質問」「要約」「明確化」「予想」)を役割として分担し、教師の援助を受けながら、グループでやりとりする中で学習する

②相互説明
課題遂行役、モニター役と評価役を設定し、互に説明を行い、それに関するフィードバ ックを得るという活動  
読解:
課題遂行役:文章中に表された内容の表象を形成する
その内容に関して評価を受けるために、モニター役にその内容を伝達・説明する
モニター役からなされた質問に対して答えることによって、一旦形成した表象を作り変えていく
モニター役:課題遂行役によってまとめられた内容について、おかしな部分や不明確な部分がないかという点から評価を行い、内容に関する表象がより精緻化さ     れるよう質問を行う
評価役:課題遂行役とモニター役の間のやりとりが適切に行われているかについて評価し、やりとり終了後にそれぞれに対してフィードバ ックを与える
個人内で行われる処理を個人間の役割として外化して明確化する+方略知識を教授するのではなく、いかに方略を使用するかを学習させる

25
Q

学習の転移

A

学習の転移 (transfer)
以前に学習したことが、その後の学習や問題解決に影響を及ぼすこと
正の転移 (positive transfer):前学習が後学習に促進的な影響を及ぼす
負の転移 (negative transfer)::前学習が後学習に妨害的な影響を及ぼす

転移を生じさせる要因
①先行する学習の習得レベル(理解の深さ)
新しい概念を単純に丸暗記するのではなく、既存の概念と結びつけ整理したり、意味を理解しながら学習することで転移が生じやすくなる
「考える時間」を学習者に与えることが必要

②先行する学習で獲得した知識内容の抽象度
特定の文脈に限定した(抽象度の低い)知識では転移学習生じにくくなる
学習の際に様々な文脈を与えたり、考えさせたりすることが必要

26
Q

学習の目的と必要条件

A

学習の目的
①生きる力:基礎的・基本的な知識、技能を習得して活用する力や、新たな問題を解決する力を身につける ②目的達成:主体的な取組姿勢を身につけたり、日常必要な言語力をつけたり、さらに自分の個性を見つけて伸ばす

学習の必要条件
①深化学習:新出事項に接したとき、概念の意味を理解したり、そこに展開されている知識体系を把握したり、既有知識との関係を理解したりする
群化:同じ本質のものをまとめて覚える
対比:似た概念の差異を確認する
階層性の把握:知識の前提を確認する
資源の活用:教科書や解説参考書などの資源を活用
②発見学習:与えられた知識のみに満足せず、その知識が活用できる場面を考えたり、別の分野の知識との関係を考えたり、新たに出てきた疑問を解決する
概念の形成:新しい事実が見えてくる
法則化:法則を発見する
③定着作業:各教科内で習得することが求められている知識や技能を抜き出し、身につけようと意図しながら練習する
④学習方略:深化学習、発展学習、定着作業を効果的に行うための方略

27
Q

有意味受容学習

A

発見学習 (discovery learning):教科で習得すべき原理原則を学習者が自分から発見していく
教師は個別事例のみを提示し、一般法則は学習者が発見する
vs
受容学習 (reception learning):教師によって提示された知識内容を、学習者が受動的に習得していく
教師は一般法則と個別事例を提示して説明する

発見学習の長所
①問題解決に役立つ知識や態度が身につく
②外発的動機づけから内発的動機づけに移行させられる
③発見のための一般的方略(ヒューリスティックス)が習得できる
④発見内容の保持と、転移が促進される

教育現場での発見学習
発見学習を導入する困難
①授業時間が限られている→学習者の発見を待たねばならないので予定通りに授業が進行する保証がない
②大量の教材準備が必要→一般法則が導き出せるための個別事例をたくさん用意すると同時に、誤りの法則が導き出された場合に誤りが認識できるような事例までも用意しておく必要がある
成果主義の教育環境では受容学習をさせてしまう(暗記確認試験では学習直後の成績は受容学習の方が良くなる)
 
有意味学習 (reception learning):意味を理解しながら学習する
記銘、再生や再認は機械的学習より容易+保持期間も機械的学習より長い
①学習内容の有意味性:外在的意味(単語、用語の指示対象)+内在的意味(抽象的概念から想起される内容、連想される内容すべて)
②学習内容に対する学習者の反応の仕方の有意味性
vs
機械的学習 (rote learning):意味を考えずに丸暗記する
記名、再生や再認は困難

有意味受容学習 (meaningful reception learning)
意味を理解しながら行われる受容学習
先行オーガナイザー:学習前にあらかじめ呈示する、新たに学習する内容に関連する抽象的・概念的な枠組み

28
Q

自己調整学習

A

自己調整学習 (self-regulated learning)
学習者が、まず自分の目標を決め、その目標を達成するために自らの計画を立て、実行段階で思考、感情、行為をコントロールし、実行後にふりかえって自らの学習行動を評価するプロセス
⇒習得や動機付けの好循環を生む
①学習計画の段階
成功体験によって自己効力感が高まる
しかし、これは、成功した方法が必要目標達成の見通しの中に自己成長の1ステップとして位置づけられたときに限る
⇒計画には、学習内容の計画も学習方法の計画も重要
②学習実行の段階
メタ認知が重要
モニタリング:注意の集中状況、記憶の確実性、意味は理解できているか、学習方法は適切か、予定通り学習が進んでいるか
コントロール:もう少し反復回数を増やしてみよう、忘れそうなので記録しておこう、この問題は逆から考えてみよう、別の学習方略を工夫してみよう、眠気と闘って学習を続けよう  
③ふりかえりの段階
目標はどこまで達成されたか、習得に失敗した部分はどこで、成功した部分はどこか、成功や失敗の原因は何か、学習方法は適切であったか、今後の学習方針はどのようにたてたらよいかなどを考える