学習 Flashcards
行動主義
学習:(遺伝的な素養を基礎にして)経験を通して獲得された行動の永続的な変容
行動の変容:ある状況の下で、活動したり、観察したり、聞いたりして、その結果、同 じ状況またはそれと似た状況の下で生じる、永続的な変容
比較的単純な行動(生理反応、動作、単純な行為)の学習に焦点を当てる
非連合学習 (non-associative learning)
①馴化 (habituation)
重要でない同一の刺激が繰り返し与えられたときに、その刺激に対する反応性が低下していく現象
無害で中性的な刺激に対して毎回反応するエネルギーの浪費を抑えることが可能になる
②鋭敏化・感作 (sensitisation)
刺激を反復して提示すると、最初のうち弱かった反射の強度が徐々に増加していく現象
環境の中で重要な刺激に対してより反応しやすくなる
⇒馴化が起こるか、鋭敏化が起こるかは、刺激の呈示頻度や呈示場所で異なってくる
連合学習 (associative learning)
①古典的・レスポンデント条件づけ (classical/respondent conditioning)
生得的な反射を基礎にする刺激と反応の新たな連合の習得 :無条件刺激→無条件反応⇒無条件刺激+条件刺激→無条件反応⇒条件刺激→条件反応
②オペラント条件づけ (operant conditioning)
ある刺激の下で出現する多様な能動的行動の中の特定の反応に対してのみ報酬を与えることを繰り返すことで、刺激と特定の反応との新たな連合が作られること:無条件刺激→無条件反応⇒条件刺激→条件反応、を導入(賞罰);無条件刺激→無条件反応、を強化⇒条件刺激→条件反応→無条件刺激→無条件反応
教育実践:学習の最終目標に至る過程を細かな段階に分けるスモールステップの課題の配列として組み上げる
観察学習・モデリング (observational learning)
観察により、モデルの行動は学習者に習得される
しかし、学習者が実際にその行動を遂行するかどうかはモデルに与えられた強化による
行動主義→教授主義
知識は世界に関する事実と問題を解決するための手順からなっている。学校教育の目的は、これらの事実と手続きを生徒たちの頭の中に注入することであり、教師はこれらの事実と手続きを知っており、それを生徒に伝えることが教師の仕事である。比較的単純な事実と手続きから始め、次第により複雑なものを学んでいく(スモールステップの原理)。単純さと複雑さの基準や定義は教師や教科書の著者、専門家によって決定される。学校教育の成功とは、生徒たちが多くの事実と手続きを身につけていることであり、それはテストによって測定される。
認知主義①:二重貯蔵モデル
学習:知識構造の構築⇒学習主体の行為や知識に焦点を当てる
学習のメカニズム:記憶の情報処理モデル
①Atkinson & Shiffrinの二重貯蔵モデル (dual storage model)
感覚登録器 (sensory registers)
入力情報を感覚記憶としてごく短時間保持
感覚モダリティにより保持様式が異なる
短期貯蔵庫 (short-term store)
感覚登録器内で注意が向けられた情報のみ入る;音声的符号化;容量限界あり(7±2チャンク)
チャンク (chunk):情報のまとまり
保持時間短い(リハーサルをやめると15~30秒程度)
リハーサル (rehearsal):情報を声に出して・心の中で復唱すること
長期貯蔵庫 (long-term store)
短期貯蔵庫から転送される;容量限界なし;永続的
系列位置効果 (serial-position effect)
①初頭効果 (primary effect):系列位置が前の方が成績がよい;直後再生でも遅延再生でも見られる;短期貯蔵庫でリハーサルを多く受け、長期貯蔵庫に入る確率が高くなるため生じる
②親近効果 (recency effect):系列位置が後の方が成績がよい;直後再生のみで見られる;短期貯蔵庫から直接読みだせるため生じる
認知主義②:処理水準アプローチ
②Craik & Lockhartの処理水準アプローチ (levels of processing approach)
記銘の際に水準の異なる様々な処理が行われる
処理水準:形態的処理→音韻的処理→意味的処理
e.g. 単語の文字の構成→文字列の読み→単語の意味
深い処理がされるほど忘却されにくくなる
処理水準アプローチの根拠
リハーサルの質的分析→浅い水準のリハーサルを繰り返しても記憶痕跡は強固にならない
偶発学習課題への影響→処理が深いほど記憶成績がよくなる
認知主義②:作業記憶モデル
③Baddeleyの作業記憶モデル (working memory model)
二重貯蔵モデルを継承しつつ発展:・短期記憶→作業記憶
作業記憶 (working memory):短期貯蔵庫における問題解決に用いられる記憶
短期記憶:課題で示されている情報のみが入る
作業記憶:課題で示されている情報が入るだけではなく、長期記憶の中から課題解決にかかわる知識が呼び出される e.g. 意味記憶+手続き的知識
⇒短期記憶(保持機能)+認知的な情報処理(処理機能)
作業記憶のモデル
音韻ループ (phonological loop):言語などの音声的な情報を保持するシステム
視空間的スケッチパッド (visuo-spatial sketchpad):視覚的・空間的な情報を保持・操作するシステム
中央実行系 (central executive):2つの下位システムの働きを制御し、さらに理解・問題解決などの認知的な情報処理の実行と、そのために必要な情報の保持・長期記憶とのやりとりに関与する
作業記憶と処理資源
処理資源 (processing resources):様々な情報処理を実行するために必要な心的エネルギーのようなもの
複数の処理を同時に行う場合に、処理資源はそれぞれの処理に応じて分配される
処理に必要とされる処理資源が個人の持つ処理資源を上回ると、処理に支障をきたす
e.g. 知らない単語ばかりの文章を読む場合、その単語の理解に処理資源が多く必要とされ、結果として文章全体の理解が困難になる
個人の持つ処理資源は発達にともない増大する→作業記憶容量の増大
認知主義→情報処理アプローチと深い学習
学校教育の目的は、能動的に環境に関与し自ら表象を構成していく、学習可能性を潜在的に持つ有能な学習者を育成することである。生徒が既有知識や方略を用いながら、心の中に表象を構成していき、またその学習過程や 理解を生徒自身がモニタリングし、修正したりする。その学習過程を支えることが教師の仕事である。
状況主義①:正統的周辺参加
状況主義
学習:システムと学習主体との協調関係の構築過程
システム:学習主体を取り巻く事物(学習の文脈)
学習のメカニズムを論じる理論ではなく、学習を広く意味付けようとする理論
学習は個人の中で起こるものではなく、共同体における社会的かかわりや、そこにある
様々なものとの相互作用の中で生じる過程
正統的周辺参加 (legitimate peripheral participation):
学習者が共同体の新参者として重要な業務の周辺的な重要性の低い業務を担当するところから始め、技能の熟達につれ中心的でより重要な業務を担当する十全的参加者へと変化していく
実践の場で獲得される技術や知識は、抽象的で断片的な知識ではなく、実際の業務の遂行に深くかかわる
学習するということは、最終的に社会の中で何らかの役割を果たすことができるようになること
⇒学習:社会的参加の過程、個人がその社会の中で自己を形成していく過程
認知主義②:認知的徒弟制
認知的徒弟制 (cognitive apprenticeship):
習得される知識や方略を多様な状況で用い練習できるように学習課題が選ばれ配列され、またそれにより多様な場で使える一般化された知識の伝達がはかられる
目に見えない内的な思考過程の明示が求められる
学習過程:
①モデリング:教師など教室の熟達者はその熟達した技能を生徒に観察させ、真似させる
②コーチング:教師は生徒にやらせ、必要に応じ足場としてのヒントやフィードバックを与える
③フェーディング:教師は生徒に手がかりや補助などの足場を与え、上達につれ足場を徐々に取り除き、1人でやれるようにする
④明瞭な表現:内的な過程である思考を外からも分かるように、理由や知識、問題解決過程を明瞭に表現させる
⑤反省:生徒の問題解解決過程を熟達者や他の生徒のそれと比較させる
⑥探求:生徒が自立した学習者として自分自身で問題を設定し、解決していく
動機づけ
動機づけ (motivation):個体・個人の行動を始発させ、方向づけ、推進し、持続させる過程⇒学習を始めようとする力・何をどんなふうに学習するかを決める力・学習を進め、続けていく力=意欲、やる気
外発動機づけ (external motivation):その動機が引き起こす活動以外の賞に依存する;その活動=手段
外発的動機づけの問題:次から次へと賞(正の強化子)を見つからないと動機づけが高まらない+動機づけと無関係に賞(正の強化子)の期待ばかり膨れてしまう
内発的動機づけ (internal motivation):その動機が引き起こす活動以外の賞に依存しない;内側から湧いてくる興味、関心、好奇心、面白いという気持ち;その活動=目的・楽しみ
内発的動機づけの特徴
内発的動機づけの特徴
アンダーマイニング効果 (undermining effect):外的な報酬を与えると、その外的報酬がなくなった時に、内発的動機づけが低下してしまうという現象である。
Deciの実験:前のセッションで金銭的報酬を与えられた実験参加者は、そうでない実験参加者より、全体としてパズルに自発的に取り組む時間が短かった
自己決定理論 (self-determination theory):人間は有能さ、関係性と自律性という3つの欲求を持っており、これらの欲求が満たされることで内発的動機づけや心理的な適応が促進される
外的な報酬が与えられると、自律性の欲求(自分自身の意思で自律的に自分の行動を選択したい)が阻害され、内発的動機づけが低下する
報酬の与え方に工夫が必要
内発的動機づけの源泉
内発的動機づけの源泉
①知的好奇心 (intellectual curiosity):新奇な刺激を求める傾向
②有能感・自己決定感 (competence):有能さを認知したい、自分で決めたいという感情
知的好奇心の種類
①拡散的好奇心 (diverse curiosity):自分が知らないことや珍しいことに興味を持つ
②特殊的好奇心 (specific curiosity):興味を持ったものを深く探求し、認識しようとする
知的好奇心の生得性
Heronの感覚遮断断実験→感覚を遮断された状態には耐えられない
Fantzの乳児の選好注視実験→乳児は単純な図形よりも複雑な図形をより注視する
動機づけを高める方法
自己決定理論・自己決定感から
有能さ
自分は「できる」という信念を高める支援をする
学習者のできるところから始めて、次第に高度な知識や技能の必要な課題を与え、それがうまくできればきちんと認め、ほめる+学習者の能力がまだまだ伸びることを強調する
関係性
学習を促すような仲間関係を支援する(グループ活動など)
学習を促すような環境を作り上げる(クラスの雰囲気など)
自律性
選択の自由を与える(課題の選択、課題を学習する方法の選択、学習する場所の選択、学習する時間の選択など)
学習者に対して適切なアドバイスやフィードバックを与える*特に自力で課題を解決できるような形で
報酬の与え方で工夫する
知的好奇心から
知的好奇心を利用した指導をする
e.g. 概念的葛藤に基づく知的好奇心の刺激
①子どもの持つ素朴概念を利用し、驚きを引き起こす
②子どもがあらかじめ期待や考えを持っていない場合には、足がかりとなる知識を与え、利用する
③子どもが持っている情報相互のずれに気づかせる
原因帰属
原因帰属 (causal attribution):過去の失敗や成功の経験の原因を考えること
統制の位置:その原因が個人内の要因か、個人外の要因か
安定性:その原因が時間の経過に対して安定しているか、変化しやすいものか
内的安定:能力;内的不安定:努力
外的安定:課題の困難度;外的不安定:運
能力帰属と努力帰属
失敗を努力に帰属⇒学習性無力感に陥りにくい
失敗を能力・外的要因に帰属⇒努力が抑制される
努力帰属の難しさ→努力をすることで確かに課題に成功する可能性も高まるが、努力をしたうえで再び失敗してしまうと、自分の無能さを逆に実感してしまう
⇒努力帰属から方略帰属へ;方略:内的で不安定で、統制可能
学習性無力感
学習性無力感 (learned helplessness):いくら行動をしても結果が伴わないことを繰り返し経験すると、もうやっても無駄だと感じて無力状態になること
自己高揚動機
自己高揚動機 (self-enhancement motive):失敗をした時、自分が原因だと頭でわかっていても、それを認めたくない;肯定的な評価を得たい、もしくは否定的な評価から自分を守ろうとする動機
セルフサービングバイアス (self-serving bias):自分の成功を能力や努力といった内的な要因に、失敗を運や課題の困難度といった外的な要因に帰属する傾向
セルフ・ハンディキャッピング (self-handicapping):自分の遂行を阻害するような要因を、積極的に主張したり自分で作り上げたりする行為