国税徴収法(受験シリーズ) Flashcards
【テーマ1】財産調査
質問・検査、捜索の範囲
必要なとき、必要な範囲で、質問・検査、捜索ができる
<捜索の方法>
・徴収職員が滞納者・甲の自宅兼店舗に臨場したが、甲は留守。
・甲の妻・乙を立会人として捜索を行い、金庫を発見。乙に対し金庫を開けるよう指示をしたが、開錠を拒否。
・徴収職員がとりうる措置は何か。
・徴収職員は、滞納者等に対し、金庫その他の容器の類を開かせ、または自ら開くために必要な処分をすることができる。
・徴収職員からの指示にもかかわらず、滞納者等が拒否した場合、徴収職員自らが開くことができる。なおその際、不要な損害を与えることのないよう必要最小限度に留める必要。
<質問不答弁等の罪>
・罪の概要と罰則は何か。
・徴収職員の「質問」に対し答弁をせず、または偽りの陳述をした者。
・徴収職員の「検査」を拒み、妨げ、もしくは忌避し、または偽りの記載・記録した帳簿書類を提示した者。
・懲役1年以下、50万円以下の罰金。
<両罰規定>
・国税徴収法における、両罰規定とは
・法人の代表者、若しくは使用人その他の従業者が、その法の業務または財産に関して、国税徴収法に定める罰則に係る違反行為をしたとき、その行為者を罰するほか、その法人に対し各本条の罰金刑を科する(徴190)
【テーマ2】差押え関係
督促を要しない差押え(3つ)
・繰上げ保全差押え
・保全差押え
・繰上げ差請求された国税による差押え
差押財産の選択に当っての第三者の権利の尊重
徴収職員は、滞納者の財産を差し押えるに当っては、「滞納処分の執行に支障がない限り」、第三者が有する権利を害さないように努めなければならない(徴49。一般原則、努力義務)
<差押え換えの請求>
・差押え換えの請求の手続き(5つ)
<差押え換えの請求>
①次のすべてに該当する場合、差押え財産上に権利(抵当権など)を持つ第三者は、公売公告の日までに、差押え換えを請求できる。
・滞納財産が第三者の権利の目的となっている。
・滞納者が、他に換価の容易な財産で他の第三者の権利の目的となっていないものを有し、かつ、その財産により滞納国税の全額を徴収できる。
<税務署長の通知>
②請求があった場合、税務署長は、請求が相当と認めるとき、差押え換えをしなければならない。相当と認めないとき、その旨、「通知」する。
<換価の申立て>
③相当でない旨の通知を受けた第三者は、通知を受けた日から起算し7日を経過した日までに、差押え換えを請求した財産の「換価をすべき旨を申立てる」ことができる。
<換価の制限>
④換価の申立てがあった場合、差押え換えを請求した財産が換価の著しく困難なものであり、または第三の権利の目的となっているものであるときを除き、その財産を換価をした後でなければ、当初差押えた財産を換価することができない。
<差押えの解除>
⑤換価の申立てがあった日から2か月以内にその申立てに係る財産を差押え、換価に付さないときは、当初差押えた財産の差押えを解除しなければならない。
差押え調書・謄本を滞納者に交付を要する財産(3つ)
・動産・有価証券
・債権
・第三債務者等がある無体財産等
(解説)差押えを行った際、差押え調書は必ず作成。滞納者に差押え書を送達しない場合、「差押え調書・謄本」の交付が必要となる
債権の差押えの手続き・留意点(5つ)
・差押え手続き:第三債務者に対し「債権差押え通知書」を送達 ・債権証書:証書を取り上げることができる ・取立て等の禁止:債権者(滞納者)、債務者にそれぞれ、取立て等を禁ずる ・差押え調書:作成し、謄本を滞納者に送達 ・差押えの範囲:原則、全額を差押える
納付委託とは
納付委託とは、納税者が国税を納付するために、国税の納付に使用することができる証券以外の有価証券(約束手形、先日付小切手など)を提供し、その証券の取立てとその取立てによる金銭による国税納付を徴収職員に委託すること。
差押えを解除しなければならない場合(6つ)
・差押え国税の消滅・無益な差押え ・第三者の権利の目的となっている財産の差押え換え ・相続があった場合の財産の差押え換え ・滞納処分の禁止 ・保全差押え・繰り上げ保全差押え ・不服申立て(国税不服審判所長からの差押え解除の求め)
<相続があった場合の差押え>
・被相続人の国税に関する差押えに関する原則は
・相続財産(国税に劣後する抵当権付き)と相続人の固有財産がある場合、どの財産から差押えを執行すべきか
・被相続人の国税につき、その相続人の財産を差し押える場合、「滞納処分の執行に支障がない限り、」まず相続財産を差押えるように努めなければならない(徴51①)
・相続人の固有財産から差押える。
<差押え財産の選択①>
(1)財産Dは、差押えすべきではない。相続人の権利の尊重の観点から、相続財産から差押さえるべき。
(2)財産Aおよび財産Bを同時には、差押えすべきではない。超過差押えになるため。
(3)財産Cは、差押えすべきではない。無益な差押えになるため。
(4)財産Aおよび財産Bについては、①換価の容易性、②滞納者の生活の維持または事業の継続にあたる支障の有無・程度、③保管または引揚げの容易性などを考慮し、いずれかを差し押さえるべき。
<差押え財産の選択②>
まず建物Aを差押え、次に建物Cを選択すべき。
<第三者が占有する動産等の差押え>
・第三者が占有する動産等につき、その第三者が引渡しを拒否する場合
・第三者が占有する動産等を差押さえるための手続き
・滞納者の動産等で、その親族その他の特殊関係者以外の第三者が占有しているものは、その第三者が引渡を拒むときは、差押えることができない(徴58①)
・第三者がその引渡を拒むとき、滞納者が他に換価が容易であり、かつ、その滞納に係る国税の全額を徴収することができる財産を有しないと認められるときに限り、税務署長は、期限を指定して、当該動産等を「引き渡すべきことを書面により命ずる」ことができる。
期限までに徴収職員にその引渡をしないとき、その動産等を差し押えることができる(徴58②③)
<滞納者の動産を占有する第三者の権利保護>
・滞納者との契約による賃借権、使用賃借権その他の権利基づき動産を占有している場合、どのような第三者に対する権利保護があるか
・「契約解除」と「使用収益を請求」を選択できる。
・①契約解除の場合、税務署長への契約解除の通知、滞納者への損害賠償請求、前払借賃の請求ができる。
・②使用収益を請求する場合、使用できる期間は、契約期間または3カ月のいずれか短い期間。
<交付要求の解除>
・次のいずれにも該当する場合、税務署長に対し交付要求の解除ができる。
①その交付要求により自己の債権の全部または一部が弁済を受けれなくなる。
②滞納者が谷換価容易な財産で、第三者の権利の目的となっていないものを有しており、その財産により滞納国税の全額を徴収することができる。
滞納者以外の財産が強制換価手続きが行われた場合において、交付要求ができる場合(3つ)
・担保権付き財産が譲渡された場合(徴22)
・担保仮登記付き財産が譲渡された場合(徴23)
・譲渡担保権者の物的納税責任の追及(徴24)
譲渡担保とは
・債権者が債務者の所有権や財産を一時的に担保として設定。弁済された場合、所有権や財産を債務者に戻す。債務不履行の場合、所有権や財産が債権者に譲渡される、といった内容の約定担保物権。
・民法に規定はないものの、判例や実務で幅広く用いられている。
抵当権の被担保債権を差押えた場合の対応
・抵当権によって担保される債権を差押えたとき、税務署長は、その債権の差押えにつき登記を関係機関に嘱託することができる。
・また、抵当権の対象となる財産の権利者に、差押えた旨通知を行う。
(解説1)抵当権の被担保債権の例として、銀行が持つ住宅ローン債権(銀行が滞納者)。土地・建物に係る不動産登記につき、税務署長が抵当権を差押えた旨登記。
(解説2)抵当権の被担保債権を差押えた場合、その効力は抵当権にも及ぶ。ただし抵当権が処分(譲渡、放棄など)されたときに、第三者に対抗するためには登記が必要。
【テーマ3】換価および配当
<換価と用益物権>
(1)法定果実である地代請求権には、差押えの効力は及ばない。
(2)差押え前に登記された賃借権は、原則、換価によっても消滅しない。
(参考)換価財産上の質権、抵当権、先取特権、留置権、担保のための仮登記に基づく本登記で、その財産の差押え後にされたものに係る権利は、その買受人が買受代金を納付した時に消滅する。(徴124、担保権の消滅又は引受け)
→差押え前に登記された用益物権等については、換価により消滅しない。
抵当権が設定されている不動産を換価した場合
・①原則、換価財産上の抵当権は、買受け人が買受け代金を納付した時に消滅する。 ・②次のすべての条件に該当するときは、抵当権に関する負担を買受け人に引き受けさせることができる。 ・不動産を換価 ・差押えに係る国税が、抵当権に劣後 ・抵当権により担保される債権の弁済期限が、売却決定日から6か月以内に到来しない ・抵当権を有する者から申し出
一括して換価できる場合(4つ)
・次のいずれにも該当するとき、一括換価できる ・客観的かつ経済的にみて、有機的に結合された一体をなすと認められる ・一括換価することにより高価有利に売却できる ・滞納者を異にする場合は、それぞれの滞納者の国税について配当がある ・一括換価することを不当とする事由(担保権者に対する配当に支障をきたすなど)がない ・売却決定が同一の日である
6月15日に不動産を公売に付する場合、公売公告および見積価格の公告はいつまでに行わなければならないか
・民法に定める初日不参入の原則。
・公売公告は、10日前まで。よって6月4日。
・見積価格の公告は、3日前まで。よって6月11日。
公売公告を行う場合、通知先(3つ)
・滞納者
・公売財産上に権利(質権、抵当権、地上権など)を有する者
・公売財産につき交付要求をした者
【テーマ4】国税と他の債権との調整
2つ以上の国税及び地方税がある場合の優先関係は(5つ)
・差押え先着手の優先 ・交付要求先着手の優先 ・担保を徴した国税の優先 ・強制換価の場合の消費税等の優先 ・譲渡担保財産から徴収する国税・地方税の調整の特例
納税保証人からの徴収手続きは
・第二次納税義務者からの徴収と同じ
・「納税通知書」の告知(納期限は、納税通知書の発する日の翌日から起算し1月を経過する日)
・「納税催告書」による督促(納税催告書を発した日から起算し10日を経過した日の翌日以降、差押え可)
被担保債権が国税に優先する場合
(抵当権、不動産売買の先取特権、留置権、不動産保存の先取特権、(動産)質権)
①抵当権、 ・法定納期限等以前に設定された抵当権の優先 ・譲受け前に設定された抵当権の優先(譲受けや設定時期に制限はない) ②不動産売買の先取特権 ・不動産売買の先取特権は法定納期限等以前にあった場合 ③留置権 ・(権利発生時期等に制限はない。留置権の存在を、売却決定日までに税務署長に提出) ④不動産保存の先取特権 ・(権利発生時期等に制限はない。登記が必要) ⑤(動産)質権 ・法定納期限等以前に設定された質権の優先(公正証書、内容証明等により事実の証明が必要)
担保を徴した国税の優先(徴14)とは
ある滞納国税と他の担保を徴した滞納国税との優先関係については、法定納期限等に関わらず、担保を徴した国税が優先する
<担保を徴した国税>
1位:A抵当権の被担保債権(600万円)
2位:乙の滞納国税(520万円)
3位:甲の滞納国税(200万円)
4位:B抵当権の被担保債権(320万円)
<給与の差押え禁止>
【テーマ5】徴収緩和制度
徴収緩和制度(3つ)
・納税の猶予
・換価の猶予
・滞納処分の停止
納税の猶予(通46)(3つ)
・災害等による納税の猶予(通46①)
・通常の納税の猶予(通46②)
・課税遅延に基づく納税の猶予(通46③)
【テーマ6】保全処分
国税の納税義務が確定する前において、当該国税債権を確保するため認められている差押えとその要件は何か
①保全差押え(徴159)
・不正に国税を免れまたは国税の還付を受けたことの嫌疑に基づき、国通法による差押え・領置、または刑訴法による押収・領置・逮捕を受けたとき
・国税の納付すべき額の確定後においては、徴収を確保できないと認められるとき
②繰上げ保全差押え(通38③)
・次のいずれかに該当:強制換価手続きの開始、納税者の死亡・相続人の限定承認、法人である納税者が解散、納税者が国内に住所・居所を有しなくなる、偽りその他不正の行為により国税を免れ、もしくは国税の還付を受け、または滞納処分の執行を免れたと認められるとき(しようとしたときも含む)
・国税の納付すべき額の確定後においては、徴収を確保できないと認められるとき
【テーマ9】不服審査
不服申立ての特例とは
・滞納処分に係る不服申立てについては、国税通則法等の規定にかかわらず、それぞれの期限までに行わなければならない。 ・督促(通知を受けた日から、3カ月を経過した日) ・不動産等に係る差押え(公売期日) ・不動産等については公売広告から売却決定までの処分(買受代金の納付の期限) ・換価代金等の配当(換価代金等の交付期日)
(参考)通77(不服申立期間)
①不服申立ては、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して、3カ月を経過したときは、することができない。ただし正当な理由があるときを除く。
②審査請求は、再調査決定書の謄本の送達があつた日の翌日から起算して1カ月を経過したときは、することができない。ただし正当な理由があるときを除く。
③不服申立ては、処分があつた日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし正当な理由があるときを除く。
<担保を徴した国税>
課徴金とは
・課徴金とは、国家が徴収する租税以外の金銭。財政法3条より、法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。
・具体的には、行政権に基づくものとして、独占禁止法、景品表示法、金融商品取引法、公認会計士法などに違反した場合に納付を命じられる課徴金、使用料、特許料など。司法権に基づくものとして、罰金、科料、裁判費用など。
・なお独禁法の課徴金に関して、課徴金と罰金の双方が併せて課されるときは、罰金額の2分の1に相当する金額が課徴金から控除。